超音波医学
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総説
  • 嶺 喜隆
    2026 年53 巻5 号 p. 287
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    [早期公開] 公開日: 2026/03/18
    ジャーナル 認証あり

    本総説は,超音波専門医および超音波検査士のための超音波工学の基礎を解説する.臨床で映像化された観察対象部位の超音波Bモード画像の輝度分布を理解するためには,超音波診断装置で利用されている音圧や周波数帯域の生体組織での超音波伝搬やその音響特性(音速,反射,屈折,減衰)を知る必要がある.アーチファクト発生機序の理解の助けとなる.方位方向およびスライス方向の超音波ビーム形成や空間分解能の知識は,観察対象に適したプローブや画質条件を選ぶために重要である.組織ハーモニック映像法はBモード画像で標準的に利用されており,発生機序や映像化技術,その効果の理解は必須である.血流を観察するドプラ法の各種検査モードの原理を解説する.折り返し現象を理解することにより最適な速度レンジを設定することができる.周囲組織からのクラッタ信号を除去するためのMTI(moving target indicator)フィルタを説明する.クラッタ信号除去の性能を向上させた微細血流イメージング(microvascular flow imaging:MVFI)が開発されている.超音波造影剤ソナゾイド®を利用した造影ハーモニック映像法の原理を解説する.位相変調法と振幅変調法の原理を理解することにより,観察目的に合わせて使い分けることができる.

原著
  • 西川 紗世, 西原 永潤, 大下 真紀, 山岡 博之, 宮内 昭, 赤水 尚史
    2026 年53 巻5 号 p. 303-308
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    [早期公開] 公開日: 2026/07/09
    ジャーナル 認証あり

    【目的】Canon Aplio i800に標準搭載されたVascularity Index(VI)を用い,甲状腺中毒症におけるバセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別に有用な血流値のカットオフ値を明らかにすることを目的とした.【対象と方法】2023年6月から2025年2月までに当院を初診し,未治療でRI検査および超音波検査にてVIを施行した甲状腺中毒症348例(バセドウ病319例,無痛性甲状腺炎29例)を対象とし,日本甲状腺学会が策定した甲状腺疾患診断ガイドライン2024(2024年改訂)に基づき鑑別診断した.VIを用いて甲状腺血流値(%)を算出し,ROC解析によりカットオフ値を求めた.【結果】バセドウ病と無痛性甲状腺炎の血流値中央値はそれぞれ13%,3.1%であり,バセドウ病で有意に高値であった(p<0.001).ROC解析により平均血流値のカットオフ値は8.3%(AUC 0.927,特異度100%)であり,約10%が鑑別の目安と考えられた.一方,血流値10%未満のバセドウ病症例も35%存在した.【結論】VIは甲状腺血流を定量的に評価でき10%以上あれば無痛性甲状腺炎は否定できる.一方で,軽症のバセドウ病に関しては血流値のみで判断せず,血液検査や他の検査所見と合わせた総合的評価が重要である.

症例報告
  • 小林 朋佳, 土井尻 遼介, 今野 未菜, 武田 貞徳, 伊藤 祐希, 渋谷 ゆう紀, 高橋 健, 宇沼 香奈, 山口 枝里子
    2026 年53 巻5 号 p. 309-314
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    [早期公開] 公開日: 2026/07/22
    ジャーナル 認証あり

    上肢深部静脈血栓症は深部静脈血栓症の中でも稀であり,本症例ではその一つであるPaget-Schroetter症候群を超音波検査で診断し得たので報告する.症例は37歳女性,超音波検査に従事する臨床検査技師である.X年5月に肩こりの左右差,5月下旬より左上肢の軽度しびれ,腫脹および前腕の色調変化を認めた.超音波検査にて左鎖骨下静脈血栓を指摘され受診.既往歴・家族歴に特記なく,D-dimer 0.53 μg/mLで血栓性素因を認めなかった.direct oral anticoagulant(DOAC)にて一時血栓は消失したが,その後同部位で再発を2回認めた.X+1年9月の再評価でRoosテスト陽性.超音波検査にて上肢挙上時,左肋間隙で左鎖骨下静脈が明らかに圧迫され血流停滞を呈し,血栓形成部位と一致していた.体位変換に伴う血流変化を動的に評価できたことから,胸郭出口症候群を背景としたPaget-Schroetter症候群と診断し得た.造影CTでも同所見を確認した.現在,外科的治療は行わずDOAC継続で経過観察中である.

  • 飯塚 大介, 坂口 大和, 牧野 仁人, 高橋 茉理瑛, 佐野 拓真, 田口 重文, 倉持 雄彦, 桃原 哲也, 大内 厚太郎
    2026 年53 巻5 号 p. 315-320
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    [早期公開] 公開日: 2026/07/15
    ジャーナル 認証あり

    自己拡張型TAVI(transcatheter aortic valve implantation)弁の一つであるNavitor留置後に生じる経弁逆流(transvalvular leakage:TVL)の報告は限られており,特に経食道心エコー図(transesophageal echocardiography:TEE)により人工弁内逆流を明瞭に描出した超音波学的報告は極めて少ない.今回,89歳女性の症候性重症大動脈弁狭窄症に対し,全身麻酔下・経大腿アプローチでTAVI(Navitor 25 mm)を施行したところ,留置直後に血行動態悪化を伴う重度大動脈弁逆流を認めた.術中TEEによる評価では,弁周囲逆流所見に乏しく,人工弁中央からの幅広い逆流ジェットを認め,TVLが主体であると判断した.後拡張後も逆流の改善は乏しかったが,SAPIEN 3によるTAV-in-TAVの追加治療後に逆流は消失し,血行動態は安定した.本症例では,術中TEEにより人工弁内からの逆流を明瞭に描出することで,逆流機序の理解に寄与し得た.TAVI後の急性TVL発生時において,TEEは逆流の起始や広がりを評価するための有用なモダリティとなり得る.

  • 田端 強志, 粕谷 秀輔, 木下 利雄
    2026 年53 巻5 号 p. 321-326
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    [早期公開] 公開日: 2026/07/08
    ジャーナル 認証あり

    腎生検は腎疾患の診断に有用であるが,腎動静脈瘻(renal arteriovenous fistula;RAVF)などの出血性合併症を生じることがある.症例は80代女性.急性腎障害の精査目的に腎生検を施行後,肉眼的血尿が出現した.超音波検査ではカラードプラ法で腎内に著明なエイリアシングを伴うモザイク状血流およびループ状血管構造を認め,パルスドプラ法では最高血流速度2.2 m/s,resistive Index 0.26の高速低抵抗な連続性動脈波形に加え,静脈側の拍動化を認めた.これら血流動態の異常からRAVFを強く疑い,造影CTで確定診断後,コイルを用いた経カテーテル動脈塞栓術を施行した.術後,超音波検査にてシャント血流は消失し,各血流指標および静脈波形の正常化を認めた.腎生検後RAVFの病態把握および治療効果判定において,ドプラ超音波検査による詳細な血流動態評価は極めて有用であった.

  • 宇都 俊紀, 岩川 幹弘, 金 徳男, 田端 強志, 佐々木 健, 高橋 憲子, 丹治 直映, 守永 幸大, 木下 利雄
    2026 年53 巻5 号 p. 327-334
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/15
    [早期公開] 公開日: 2026/06/15
    ジャーナル 認証あり

    症例は80代男性.前日に妻が亡くなり,その後胸痛が出現した.症状が次第に増悪し,改善がみられないため当院へ緊急搬送された.来院時の12誘導心電図検査では四肢誘導Ⅱ,Ⅲ,aVFで陰性T波,胸部誘導V2のST上昇およびV3-6で巨大陰性T波を認めた.血液生化学検査では,トロポニンⅠとCK/CK-MBの上昇を認め,急性冠症候群またはたこつぼ心筋症が疑われた.緊急冠動脈造影では,有意狭窄はなく,急性冠症候群は否定的であった.左心室造影では,左室心尖部の収縮低下および左室基部の過収縮,左室から右室へ流入する短絡血流を認めた.以上の所見から,たこつぼ心筋症に合併した心室中隔穿孔と診断された.集中治療室にて行った経胸壁心エコー図検査では,左室心尖部に壁運動軽度低下を認め,基部は過収縮であった.心尖部心室中隔に最大径10mmの穿孔があり,カラードプラ法にて左室から右室へ流入する短絡血流を認めた.経過中血圧が担保できず,鎮静による気管内挿管を行ったうえで補助循環装置や静脈―動脈体外膜型人工肺,外科的介入も検討された.年齢,全身状態,侵襲的治療に伴うリスクを患者家族に説明し,治療方針について協議した結果,侵襲的治療は行わずに緩和ケア主体の治療を行う方針となった.循環不全が進行し,入院5日目に逝去した.

今月の超音波像
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