日本線虫学会誌
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34 巻, 1 号
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  • Roland N. Perry, Richard N. Rolfe, Jacqueline P. Sheridan, Anthony J. ...
    2004 年 34 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ジャガイモシストセンチュウ2期幼虫の感覚応答と口針伸出筋活性、およびセンチュウ侵入時の植物側で発生する電気信号の研究に電気生理学的手法が用いられた。
    2期幼虫の感覚応答において、アセチルコリンの濃度依存性を調べ、応答時間の遅延効果を計測した。ジャガイモ根浸出物 (PRD) を用いて2期幼虫を刺激すると、スパイク信号の有意な活性増加を引き起こした。一方、非寄主植物根浸出物あるいは雌の性フェロモンでは、この反応は起きなかった。2期幼虫を、双器特異的抗体やDiTera (生物的殺センチュウ剤) 中で培養した後は、PRDへの応答が阻害された。
    種々の濃度のセロトニンへの応答において、口針伸出筋活性のEPG (咽頭電図) を解析し、ビデオ解析を用いた口針の運動と関連づけられた。セロトニンに拮抗化合物gramineを混合すると、口針の伸出運動がほぼ完全に阻害され、Diteraで2期幼虫を前もって処理すると、続く口針の活性が有意に低下した。
    感受性及び非感受性のジャガイモ品種に2期幼虫を接種すると、根からの電気的活性の異なる信号図形が記録された。さらに、より価値のある応答信号が、抵抗性品種よりも感受性品種の根から得られた。機械的及び細菌の細胞外酵素の刺激への応答は、感受性品種の根から記録された応答信号とは異なり、その原因を説明できなかった。
  • 神崎 菜摘, 二井 一禎
    2004 年 34 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    Cylindrocorpus属の未記載種をC. anoplophoraen.sp.として記載した。本種の耐久型幼虫は、ゴマダラカミキリ、Anoplophora malasianaの雄成虫の生殖器から検出された。記載にはアスパラギンーマンニトール培地上で2週間生育したカルチャーから得られた雌雄成虫を用いた。本種雄成虫は、体長約830-1070μm、a値約19-26、b値約5-6、c値約8-10であり、長さ約28-35μmのやや湾曲した交接刺、長さ約17-20μmの爪状の副刺、長さ約43-62μmの尾端突起、9対の尾乳頭、非常に幅の狭い尾翼を有していた。雌成虫は、体長約980-1260μm、尾長約114-161μm、a値約17-23、b値約6-7、c値約7-9、V値約50-56であった。本種は、雌雄成虫の形態計測値、尾部の形状、雄成虫の尾翼の形態、尾乳頭の配列により、本属既知種と識別可能であった。
  • 田場 聡, 諸見里 善一, 高江洲 和子, 大城 篤
    2004 年 34 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    沖縄本島から分離された線虫捕捉菌17種を用いてサツマイモネコブセンチュウに対する捕捉性を比較した結果、特にM.ellipsosporumは捕捉性が高いだけでなく、単位面積 (1mm2) 当たりに形成する捕捉器官数が多く、他種に比較して迅速に線虫を捕捉した。本菌の最適培地は、1%グルコース・酵母エキス・麦芽エキス (GYM) 液体培地であった。本菌は振とう培養 (200rpm/min、25℃100ml) において5.2×1010個の短菌糸を形成した。各量に調整したバーミキュライトに本菌の短菌糸を添加して作製した培養物 (10、20、30および50g) を土壌に混和した場合、3ヵ月後のトマトの根こぶ指数は、対照区が50、ホスチアゼート区が0、培養物10、20、30および509区がそれぞれ40、10、15および10であった。またM.ellipsosporumの菌糸伸長に及ぼすカズサホス、オキサミルおよびチオファネートメチルの影響はほとんど認められなかった。
  • 山田 英一, 佐久間 太, 橋爪 健, 高橋 穣
    2004 年 34 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    春まき試験においてダイズシストセンチュウ密度低減効果を認めたクリムソンクローバとウーリーポッドベッチを、秋まきコムギ収穫後のダイズシストセンチュウ生息圃場 (約100卵/乾土1g) に夏まき栽培 (8月12日から70日間) した。その結果、クリムソンクローバ栽培区では播種1か月後に2期幼虫のピークを認め、卵密度は播種時の28%に低下した。翌年に栽培したダイズ「晩生光黒」のシスト着生指数は低く、収量も高かった。ウーリーポッドベッチの密度低減効果は認められず、後作ダイズの収量も低かった。
  • F. M. Centurión, 清水 啓, 百田 洋二
    2004 年 34 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    2002年12月カグアス県レパトリアシオン地区の1農家のダイズ出芽異常株の根付着土壌から本線虫の幼虫を初めて確認した。その後の現地発生圃場におけるダイズ根抜き取り調査の結果、播種1ヶ月後のダイズ根部に白色雌成虫が寄生し、そのシスト尾端から卵嚢が抽出しているのを確認した。
    シストの形状はレモン形で陰門錐は両窓型であり、下橋及び珠胞は良く発達していた。幼虫の口針節球の形状、背部食道腺開口部と節球底部間の距離 (DGO)、口針長、体長、透明尾端長等を測定し日本及び米国で発生している同種と比較検討した結果、パラグアイ産個体群はアメリカ合衆国および日本産の個体群より小型であったものの、種の特徴である大きく密な珠胞、発達した下橋、約24μmの2期幼虫口針長などの特徴により、ダイズシストセンチュウ、Heterodera glycines Ichinoheと同定した。各ステージの体長が日本およびアメリカ合衆国の参考個体群より小さかった原因は亜熱帯における成長の早さ、あるいは生育不適温に起因していると考えられた。
    本報告はパラグアイにおけるダイズシストセンチュウの発生の初記録である。
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