日本線虫学会誌
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39 巻, 2 号
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本報 (英文)
  • 片瀬 雅彦, 久保 周子, 牛尾 進吾, 大塚 英一, 竹内 妙子, 水久保 隆之
    2009 年 39 巻 2 号 p. 53-62
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2011/03/12
    ジャーナル フリー
    小麦フスマの施用、一時的な湛水化およびマルチを組み合わせた土壌消毒法(土壌還元消毒、RSD)の作用機構を明らかにした。室内試験において、RSDにより土壌の酸化還元電位は-200mV以下に低下し、土壌溶液中に9.8 から10.8 mMの酢酸およびn-酪酸が48時間で検出された。この10mMの揮発性脂肪酸(VFAs)にサツマイモネコブセンチュウMeloidogyne incognitaを24時間接触させた結果、高い殺線虫活性が認められた。酢酸およびn-酪酸の殺線虫活性の程度はほぼ同じで、両者の混合溶液には相加効果が認められた。また、pHが低いほどVFAsの殺線虫活性は高くなったことから、殺線虫活性とVFAsのイオン化との関連性が示唆された。イオン化していない酢酸のLC50は5.6 ± 0.2 (SEM)mMと推定された。野外試験において5.7 mMの酢酸と1.5mMのn-酪酸が検出されたが、土壌pHは殺線虫効果が発揮される値よりも高かった。還元条件下で土壌微生物によって生成されたVFAsが、RSDの殺線虫効果における一要因と考えられる。
  • 岡田 浩明, 長谷川 浩, 橋本 知義, 関口 博之, 浦嶋 泰文
    2009 年 39 巻 2 号 p. 63-71
    発行日: 2009/12/25
    公開日: 2011/03/12
    ジャーナル フリー
    有機栽培と慣行栽培との現実的な違いが土壌の生物性や理化学性に及ぼす影響を検討するためには、有機物施用のみの有機農家圃場(有機)と、化学肥料と化学農薬の使用に加え有機物施用も行う慣行農家圃場(慣行)との比較が不可欠である。2005年と2006年に東北地方のトマト農家温室で線虫群集構造を分析した。土壌の粒径組成、調査地点及び栽培季節の違いを考慮しても、栽培管理(有機と慣行との違い)は両年とも“捕食者+雑食者”群の密度およびStructure Indexに有意に影響を及ぼし、有機で値が高かった。2005年の栽培管理は線虫群集構造全体をも有意に説明し、分類群ごとでは、Dorylaimidaが有機の、DiplogasteridaeとAnguinidaeが慣行の指標となった。一方、2006年には群集全体への栽培管理の影響は有意ではなかった。しかしこの年も分類群ごとに見ると、DorylaimidaとDiplogasteridaeが各栽培管理様式の良い指標となった。個々の環境要因を説明変数として検討すると、土壌の粒径組成や細菌密度がこれらの線虫の密度に有意な影響を与えていたが、その解釈は十分にはできなかった。化学農薬の測定なども含めたさらなる調査が必要である。
日本線虫学会17回大会講演要旨(特別講演・一般講演)
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