東日本においてクローバシストセンチュウの分布調査を行った。シロクローバ根圏土壌195 サンプルおよび施設栽培カーネーション根圏土壌8 サンプルからそれぞれベルマン法を用いて線虫を分離した結果、シロクローバ根圏土壌57 サンプルおよび施設栽培カーネーション根圏土壌5 サンプルからシストセンチュウの2 期幼虫が検出された。さらに、分離された線虫を3 種の制限酵素(AluI、MseI、RsaI)を用いたPCR-RFLP 法を用いて種同定した結果、シロクローバ根圏土壌56 サンプルおよび施設栽培カーネーション根圏土壌5 サンプルからクローバシストセンチュウが検出された。本調査の結果、クローバシストセンチュウが北海道から中部地方にかけての東日本に広く分布することが明らかとなった。
沖縄県のサトウキビ単収は過去20 年で約17%減少している。本研究では世界的にサトウキビ収量減の主要な要因として挙げられる植物寄生性線虫について、沖縄県のサトウキビ栽培への影響を明らかにする。沖縄県北大東島のサトウキビ圃場に殺線虫剤処理区(ホスチアゼート 3 kg/haと7.5 kg/ha)及び無処理区を各5 反復で設定した。苗植え付け3 か月後、5 か月後において、北大東島で優占的な植物寄生性線虫であるモロコシネグサレセンチュウが7.5 kg処理区で無処理区より有意に低密度となった。12 か月後の収量は3 kg と7.5 kg 処理区(55 t/ha)は無処理区(48 t/ha)を15%有意に上回り、モロコシネグサレセンチュウが苗の初期生育に与える影響を通じて、サトウキビ収量減を引き起こしていることが示唆された。
九州北西部の低地および丘陵地の非農地に生息するネコブセンチュウの好適宿主野生草本植物の根を抜き取り調査した結果、49 か所の調査地点のうち10 か所(20%)からネコブセンチュウが検出された。雌成虫の会陰紋の形態的特徴またはミトコンドリアDNA の部分増幅産物のサイズに基づく種同定の結果、9 か所はキタネコブセンチュウ、1か所はサツマイモネコブセンチュウと判断されたことから、キタネコブセンチュウが九州北西部の非農地の主要種であることが示唆された。
「スナイパー」は、「たちいぶき(後作サツマイモのネコブセンチュウ害を抑制する秋季飼料用品種)」から育成されたエンバク新品種である。本研究では、九州地域の畑地に分布する5 種植物寄生性線虫に対する「スナイパー」の感受性を調査した。ポット条件下の調査では、4 種ネコブセンチュウに対する「スナイパー」の寄主適合性はいずれも低かった。一方、ミナミネグサレセンチュウに対する「スナイパー」の寄主適合性には、供試した他のエンバク品種との差異は認められなかった。
簡易なSteinernema carpocapsae の無菌培養法を確立するとともに線虫が感染した昆虫死体の中で生産される線虫の発育や増殖に必要な栄養について理解するため、我々は無菌液体培地への幾つかの添加物を試した。S. carpocapsaeは、細菌食性線虫用に開発された無菌液体静置培地上で発育したが、あまり増殖しなかった。しかし、線虫が感染した昆虫死体をオートクレーブ処理したものを添加すると、線虫の発育や増殖が大きく改善された。これらの結果から、培地への死体の添加は無菌培養を改良するのに有用な方法であり、オートクレーブした線虫感染昆虫死体はS.carpocapsae の発育や増殖に重要な熱安定性のある栄養因子を含むことが示唆された。
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