日本看護倫理学会誌
Online ISSN : 2434-7361
13 巻, 1 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
原著論文
  • 片山 はるみ, 村松 妙子
    2021 年 13 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/05/29
    [早期公開] 公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー

    本研究は看護実践における倫理的ケアのコンピテンシーを明らかにし、評価尺度の原案を作成することを目的とした。看護実践における倫理的課題への取り組みに関するハイパフォーマーとして職場の長から推薦が得られた看護職者または高度実践看護師15名を対象に行動結果面接を行った。903分の録音データを質的記述的に分析したところ、498コードの看護師の体験が類似性と相違性の比較検討を経て抽象化され、22サブカテゴリ、4コアカテゴリが抽出された。コアカテゴリは【善いケアに関する感性・価値を表現する】【より善いケアとは何かを考えながら行為する】【より善いケアを提供するために間接効果をもたらす】【より善いケアの学習に向けて行動する】であった。22サブカテゴリをスペンサー・コンピテンシー・ディクショナリーと照合することによってコンピテンシーとして用いることの論理的妥当性を確認し、これを用いて評価票の原案を作成した。

  • 大西 香代子, 箕輪 千佳, 有江 文栄
    2021 年 13 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/05/29
    [早期公開] 公開日: 2020/09/10
    ジャーナル フリー

    医学研究とは異なる特徴をもつ看護学研究の倫理審査については、審査を受ける側にも審査を行う側にも課題がある。本研究では、審査を受けた経験のある看護学研究者が倫理審査委員会とその審査に対して抱いている思いを明らかにすることを目的とする。「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」施行後に審査を受けた看護学研究者10名を対象に、半構成的インタビューを行い、質的帰納的に分析した。その結果、審査の便益の理解、審査の必要性への疑問、倫理審査委員会のあり方への不満、審査結果への不満、改善に向けた提言の5コアカテゴリが抽出された。分析結果は、委員会の委員構成など組織が取り組むべき課題のほか、審議の進め方など委員会や委員の課題、さらには審査を受ける研究者側の倫理審査に対する理解不足等の課題を示していた。倫理審査に携わる委員に対しても、研究者に対しても、研究倫理に関する研修の必要性が示唆された。

  • 相原 ひろみ, 細田 泰子
    2021 年 13 巻 1 号 p. 22-31
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/05/29
    [早期公開] 公開日: 2021/02/22
    ジャーナル フリー

    看護大学生の看護実践における倫理的行動自己評価尺度の開発を目的に、4年次生1,361名を対象に自記式質問紙調査を行った。有効回答の302名(22.2%)のデータを分析対象とした。項目分析、探索的因子分析の結果、【個別性を捉えた尊厳あるケアの模索と提供】7項目、【患者の人権の尊重】5項目、【協働による責任ある遂行】4項目、【自律的学習姿勢】3項目の4因子19項目が抽出された。確認的因子分析の結果、適合度指標は、GFI=0.904、AGFI=0.874、CFI=0.946、RMSEA=0.061であった。下位尺度のCronbach’s α係数は0.825~0.886であった。外的基準の学生の臨地実習自己効力感尺度との相関係数は0.602を示した。再テスト法では下位尺度の信頼性係数は0.503~0.709であった。以上のことから、看護大学生の看護実践における倫理的行動自己評価尺度の信頼性と妥当性が検証された。

短報
  • 村松 妙子, 片山 はるみ
    2021 年 13 巻 1 号 p. 32-41
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/05/29
    [早期公開] 公開日: 2020/09/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、看護学生の倫理的感受性質問票(ESQ-NS)と道徳的感受性テスト(MST)の比較によって、ESQ-NSの有用性を検討することである。平成27年4月から平成30年11月までの4年間の縦断調査を行った。反復測定による一元配置分散分析の結果、ESQ-NSの合計得点および、3つの下位因子中2因子「患者の意思尊重」(p<0.001)、「患者情報保護への配慮」(p<0.001)で有意差を認め、1年生に比べ他のすべての学年で平均値が高くなっていた。また、相関分析の結果、ESQ-NSとMSTの一部の下位尺度は有意な相関を示したことから、2つの尺度は類似した概念を測定しつつも、異なるものであることが示唆された。ESQ-NSは学年と有意に関連があり、高学年の学生は1年生に比べ高い倫理的感受性を示していることから、看護基礎教育の中で育成され向上していくと考えられている、学生の倫理的感受性を測定するツールとしての有用性を示したと考える。

  • 髙木 香織, 太田 勝正, 真弓 尚也, 荒川 尚子
    2021 年 13 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/05/29
    [早期公開] 公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、看護学生の倫理的問題に対する認識の程度を明らかにすること、およびその程度に対する関連要因を明らかにすることである。先行研究より抽出した倫理的問題に関する32項目を用いて質問紙調査を行い、全国の看護系大学16大学の看護学生より266部の回答を得た。倫理的問題に関する32項目について共通性を探るため因子分析を行い、「医療者の患者への接し方」「看護師の知識と技術」「患者の自律の尊重」「病棟ルールや設備」を抽出した。倫理的問題に関する32項目の平均値は2.6~4.3点であり、看護学生が最も強く倫理的問題だと認識していた項目は「医療者の患者への接し方」に関連する問題であることが示された。認識の程度の関連要因を検討した結果、「病棟ルールや設備」に関して、学年、臨地実習での経験、倫理科目の受講の有無のすべてで有意差が示された。

  • 田中 真木, 小西 恵美子
    2021 年 13 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/05/29
    [早期公開] 公開日: 2020/10/30
    ジャーナル フリー

    「よい看護師国際共同研究プロジェクト」の一部として本稿の第一著者がインタビューした日本のがん患者14名の語りから、よい看護師が患者に向き合う姿勢を論考した。論考では、上記プロジェクトのデータ分析における抽象化の過程で沈んでいった患者の生の語りと、語る際に患者が見せた表情や口調、仕草に光をあてている。患者たちは、自分たちがおかれた立場がいかに弱いものかという心身両面での脆弱性を述べ、その脆弱性をポジティブな方向へ転換させてくれる看護師が、患者にとってのよい看護師であるとした。その語りは具体的かつさまざまな表現で、なぜその看護師をよい看護師と認識したのかを述べていた。看護ケアの受け手である患者の生の声は看護師が学ぶべきことを指し示しており、そこに光をあてる意義を論じた。

  • 小野 美喜, 望月 啓央, 甲斐 博美
    2021 年 13 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/05/29
    [早期公開] 公開日: 2021/01/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、特定行為を含む診療に関わる診療看護師が、職務上経験した倫理的問題を把握することである。日本NP教育大学院協議会が資格認定した診療看護師249名を対象とし、無記名自記式質問紙調査を行い54件の回答を得た。その結果、「患者の身体拘束・鎮静をすること、しないこと」看護の倫理原則である「患者の権利擁護」や「十分なケアを提供できない人員配置」の問題を高い頻度で経験していた。さらに、医師との信頼関係の構築や、看護師の上司や同僚との対人関係の問題に悩んでいた。

    診療看護師が抱える倫理的問題は、臨床看護師と同様の結果であり、看護師として倫理的感性が結果に反映されていると考えられる。加えて鎮静に関しては、診療看護師の経験として重要な問題となる。診療看護師は、医師や看護師との関係性に問題を抱え、教育の課程領域による問題の違いも示唆された。大学院修士課程での看護倫理教育をさらに発展させる必要がある。

  • 桐山 啓一郎, 松井 陽子, 矢吹 明子
    2021 年 13 巻 1 号 p. 63-71
    発行日: 2021/03/20
    公開日: 2021/05/29
    [早期公開] 公開日: 2021/02/22
    ジャーナル フリー

    看護学学士課程の精神看護学実習中、倫理カンファレンスに参加した学生の思考と学びを明らかにするため、半構造化面接調査を実施した。結果、71サブカテゴリと以下の9カテゴリを生成した。【倫理カンファレンスの難しさ】、【倫理原則の理解に伴う倫理的な観点からの思考の獲得】、【自分と対立する意見の承認による多面的思考の獲得】、【看護実践現場に存在する倫理的ジレンマの理解】、【倫理カンファレンスの実施を肯定】、【倫理カンファレンス後の倫理的な観点からの思考への変化】、【倫理カンファレンス後の精神看護学実習における倫理的な観点からの行動への変化】、【倫理カンファレンス後の他領域の実習や講義への応用】、【倫理カンファレンス後の実習に適用できない悩み】。学生は倫理カンファレンスで看護実践現場に存在する倫理的ジレンマを学んでいた。また、学生は多面的思考を獲得し、自らの看護実践を倫理的な観点に立って変化させていた。

レター
その他(速報)
日本看護倫理学会第13 回年次大会
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