看護科学研究
Online ISSN : 2424-0052
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原著
  • 田中 久美子, 八代 利香
    原稿種別: 原著
    2023 年 21 巻 p. 1-9
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/22
    ジャーナル フリー
    【目的】大学病院における地域の看護職へのシミュレーション教育の実態と課題を明らかにする。【方法】国内の132の大学病院の教育担当副看護部長、または教育担当の看護職で上位職者を対象に質問紙調査を実施した。【結果】回答を得た62施設のうち、16施設が地域の看護職へのシミュレーション教育を実施していた。シミュレーション教育の実施に関して、経済的要因が阻害し、地域との連携体制の構築の必要性を認識していた。シミュレーション教育の実施の関連因子として、病床数とシミュレーション教育に対する自施設の理解不足が示された。課題は、【人的資源】【連携体制】【シミュレーション教育に対する考え】【ニーズの把握】【物的資源】【経済的資源】に整理された。【結論】シミュレーション教育は、地域の看護職への教育として十分に実施されているとは言えず、人的・物的・経済的資源の確保および、地域との連携体制の構築が求められる。
研究報告
  • 古野 貴臣, 藤野 成美, 藤本 裕二, 古野 望
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 21 巻 p. 10-17
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/22
    ジャーナル フリー
    本研究は、地域包括支援センターで勤務する看護職が、アルコール関連問題を抱える独居高齢者に対する支援と、支援における困難の内容を明らかにすることを目的とした。地域包括支援センターで勤務する看護職を対象に、自由記述の自記式質問紙調査票を用いた横断調査を実施した。209名の回答を分析対象とし、内容分析を行った。支援に関して【飲酒量低減に向けた方略】など10カテゴリ、支援における困難に関して【治療や支援の受け入れ拒否】など11カテゴリが生成された。飲酒による介護サービス利用中断、独居故に問題が潜在化しやすいなど、アルコール関連問題を抱える独居高齢者ならではの結果が示された。このような独居高齢者に対しては、ハームリダクションと呼ばれる概念にもとづくアプローチや、孤立への支援が重要であると考えられた。一方、精神疾患を抱える高齢者に対する支援者や、アルコールに関する専門機関が協働しやすい体制づくりが課題として示された。
原著
  • 磯野 みなみ, 立岡 弓子
    原稿種別: 原著
    2023 年 21 巻 p. 18-28
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、乳房うっ積を認める授乳婦が快適感を得るブラジャーの特性と乳房緊満への効果について、乳房の引き寄せ距離、引き上げ距離、着用感から明らかにすることである。乳房うっ積を認める産後3日目の女性を対象に、ワイヤー型のブラジャー1点(ブラジャーP orブラジャーQ)、ノンワイヤー型のブラジャー2点(ブラジャーR、ブラジャーS)を着用してもらい、着用感に関するアンケートを実施した。ブラジャーRは乳房の持ち上がり感があるほど、乳房の張り感が軽減したと感じていた(r=0.861 p<0.01)。ブラジャーRは、伸縮性・通気性がよく幅広肩紐で肩への負担が軽減されたノンワイヤーであり、乳体部を圧迫せず乳房を支えるため、乳房うっ積を認める授乳婦に好まれることが明らかとなった。助産師として、ブラジャーの特性と乳房状態を理解したケア用品であるブラジャーの選択について支援していく必要があることが示唆された。
総説
  • 山口 貴子
    原稿種別: 総説
    2023 年 21 巻 p. 29-40
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/24
    ジャーナル フリー
    本研究は日本において外国人住民が医療・保健情報の入手と利用の際に影響する要因について、文献レビューから明らかにした。医学中央雑誌web版、CINAHL、PubMedの検索可能な全期間の論文から得られた33件の論文を分析対象とした。外国人住民は、母国とは異なる文化の中で言語による障壁を感じており、十分な情報が得られていない状況にあった。ソーシャル・サポートは親族や母国語を中心としたコミュニティによって提供されており、情報源も限られていることが明らかになった。本研究の結果から、外国人住民が情報を入手し、自己でそれらの情報を判断し意思決定するためには、十分な母国語での情報提供と母国文化の尊重、母国と違う医療システムへの理解の促進、コミュニティを中心としたソーシャル・サポートが重要であることが示された。ただし、外国人住民はその国籍や生活環境などにより、情報入手や利用に影響する要因が異なると考えられた。
原著
  • 奥村 智志, 小久保 知由起
    原稿種別: 原著
    2023 年 21 巻 p. 41-49
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/24
    ジャーナル フリー
    本研究は、精神科看護師の研究成果活用に対する意識の影響要因を明らかにすることを目的とした。日本全国の精神科医療機関に勤務する看護師を対象に、無記名自記式質問紙調査を行い、協力が得られた82施設の精神科看護師4,774 名に質問紙を配布し、2,999名の分析対象者を確保した。重回帰分析(Stepwise法)の結果、職位や教育背景に関わらず、看護師が高頻度で文献を閲読し、精神科看護実践力が高く、論文投稿経験を有する場合に正の影響を与え、精神科経験年数が長い場合に負の影響を与える可能性が示唆された。また、組織風土として強制的な風潮がなく、看護師の自律性に基づく合理的な組織管理が整備されていることが、研究成果活用への意識を高める環境的条件であることが示唆された。組織として文献や研究に親しめる支援整備や自由闊達な雰囲気を醸成することで、看護師の実践力向上の意欲が引き出され、研究成果活用の意識が触発されると考える。
資料
  • 長岡 杏月, 小田嶋 裕輝
    原稿種別: 資料
    2023 年 21 巻 p. 50-57
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に関する闘病記より、患者の全人的苦痛を表現した内容を明らかにすることにより、医療上の示唆を得ることを目的とした。【方法】楽天ブックスの書籍検索機能を活用した。具体的には、「筋萎縮性側索硬化症」または「ALS」のキーワードを入力し、ハンドサーチで過去3年分の書籍を探索したところ、3件が抽出された。次に、3件について、全人的苦痛の内容を整理し、共通して見られた特徴を分析した。【結果】全人的苦痛の実相として、身体的苦痛6カテゴリー、精神的苦痛7カテゴリー、社会的苦痛2カテゴリー、霊的苦痛3カテゴリーが抽出された。【結論】本研究より、身体的苦痛の予防・緩和に向けた医療者の丁寧な関わりを積み重ねること、多職種連携による包括的な医療者の介入により精神的苦痛の緩和を図ること、患者が他者との社会的関係をできる限り維持できるような環境づくりを行うことの必要性が示唆された。
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