看護科学研究
Online ISSN : 2424-0052
ISSN-L : 2424-0052
最新号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
研究報告
  • 水野 もえ, 姫野 雄太
    2025 年 24 巻 p. 1-12
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、訪問看護師による過疎地域で生活する高齢者への在宅移行期の支援内容を明らかにすることである。過疎地域に所在する訪問看護ステーションに勤務する看護師3名を対象に半構造化面接を行い、在宅移行期の支援についてSCATにより分析した。訪問看護師による過疎地域高齢者への在宅移行期の支援は、【不安を抱える療養者と家族が在宅療養に対する覚悟を持てるためのケア】、【過疎地域で在宅療養を行うための環境整備とアドバイスの提供】、【訪問看護を受け入れてもらうための個別対応】、【地域の社会資源の状況に合わせた柔軟な看護の提供】、【円滑な在宅移行を実現するための多職種連携の実践】、【介護者が終末期の介護を完遂できるようにするための関わり】という6カテゴリが生成された。過疎地域に住む高齢者が在宅で療養生活を継続できるように、柔軟に看護を捉え、必要となるケアを行っていくことが重要であると考えられた。
Retraction
研究報告
  • 鈴木 里穂, 坂本 真優, 梅本 知子, 河村 奈美子
    2025 年 24 巻 p. 14-22
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル フリー
    本研究は、サージカルマスク着用時と非着用時の表情認知を比較し、看護学生の表情認知の正確性について明らかにすることを目的とした。看護学生の表情認知に対する傾向や特性を把握するため看護系大学に所属する1、2、4学年160名を対象に、コミュニケーションに対する苦手意識、サージカルマスク着用の表情、非着用の表情の項目による質問紙調査を実施し、6つの表情(怒り、嫌悪、恐怖、幸福、悲しみ、驚き)のサージカルマスク着用の有無について表情認知を比較した。結果、嫌悪、恐怖、怒りの3つの表情において、サージカルマスクの着用により表情認知に有意差が認められた。幸福、悲しみ、驚きの3つの表情にはサージカルマスクの着用による表情認知に有意差は認められなかった。さらに、学年による臨床経験の違いとコミュニケーションに対する苦手意識の有無と表情認知に有意差は認められなかった。今後の研究において看護学生の着眼点を把握し、サージカルマスク着用下においても正しく表情を捉える表情観察力の育成に関する取り組みに繋げる必要性が示唆された。
研究報告
  • 中道 淳子, 磯 光江, 北山 礼子, 今井 秀樹
    2025 年 24 巻 p. 23-31
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル フリー
    アルツハイマー病(AD)は、認知症の主な原因疾患となっている。笑いヨガは、疑似的笑いとヨガの呼吸法を組み合わせたものであり、実施した場合のストレス軽減効果などが報告されている。本研究では、AD患者に笑いヨガプログラムを実施し、唾液アミラーゼ活性(sAA)を指標としたストレス軽減効果および認知機能テストの得点を指標とした認知機能改善の効果について検討した。対象者はADと診断された患者9名(女性9名)とした。笑いヨガ7日間実施の介入をし、各日の実施前後に対象者から唾液を採取しsAA を測定した。また介入前後に改訂長谷川式簡易知能評価スケールおよび1分間語想起スクリーニングテストを行った。その結果、AD患者に笑いヨガを実施することにより、sAAは低下したが、その効果が有意であるのは笑いヨガを実施したその日限りであった。一方笑いヨガを日をまたいで7回繰り返すことは、sAA活性の低下および認知機能テストの得点に効果をもたらさなかった。
資料
  • 南波 真紀, 関根 正
    2025 年 24 巻 p. 32-39
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/25
    ジャーナル フリー
    【目的】病院に勤務する看護師の心理的安全性と主任看護師のコンピテンシーとの関連を明らかにする。【方法】研究者の所属施設である全国規模の医療法人における関東地方の20病院の病棟に勤務する主任看護師と看護師を対象とし、主任看護師は「コンピテンシー評価票副看護師長用」、看護師は「心理的安全性尺度」から構成したWeb調査を行った。【結果】11病院を分析対象とし、有効回答数は、主任看護師85名(回答率56%)、看護師339名(回答率17%)であった。看護師の心理的安全性と主任看護師のコンピテンシーのSpearmanの順位相関分析の結果、コンピテンシーの「領域3コンプライアンス」の項目に正の相関が認められた(rs:spearmanの順位相関係数=0.67; p = 0.025)。【考察・結論】病院に勤務する看護師の心理的安全性と主任看護師のコンプライアンスに関するコンピテンシーには相関関係がある可能性が示唆された。
総説
  • 糸川 紅子, 梅野 華乃子, 新田 純子, 青木 和惠, 山下 早苗
    2025 年 24 巻 p. 40-50
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/12
    ジャーナル フリー
    本研究は当事者の語りを用いた教育実践を概観し、教育方法の特徴を明らかにすることにより、教育実践への示唆を得ることを目的とした。看護基礎教育課程における当事者の語りを用いた教育の報告21篇を分析した結果、当事者参加型授業、2年次の配当がもっとも多かった。当事者は精神疾患、アディクション、がん、難病などの体験者であった。ほとんどの報告が当事者の疾患に関する学習、当事者の情報、当事者への質問の検討などの事前学習、レポートやアンケートなどの事後学習を課していた。当事者参加型授業は当事者の自律的・自立的に社会生活を営む姿や当事者の視点から医療や社会のあり方を学べる方法であり、看護職者としての態度形成につながり得る。一方で、授業のトピックによって学習者の個人的体験や情動を刺激する可能性があり、事前・事後課題、グループ・ワーク、教材選択をトピックに応じて設定することが安全な授業を実施するために有益であると考えられる。
資料
  • 須永 修子, 関根 正
    2025 年 24 巻 p. 51-57
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/12
    ジャーナル フリー
    【目的】地域生活を送る統合失調症者の自己有用感とパーソナルリカバリーとの関連について明らかにする。 【方法】17 施設に所属する統合失調症者を対象に自記式アンケート調査を実施し、個人属性、自己有用感、日本語版精神障害者の内面化したスティグマ尺度と、日本語版Recovery Assessment Scale(RAS)との関連を、カイ二乗検定とロジスティックス回帰分析にて解析した。【結果】カイ二乗検定の結果、「訪問看護利用」、「デイケア利用」、「精神科病院への入院回数」、「自己有用感」6項目、「セルフスティグマ」4項目に有意差が認められた。多変量解析の結果、「自己有用感6(信頼されていると思う)」、「訪問看護利用」に有意差が認められた。【考察】自己有用感はパーソナルリカバリーを高める要因であることが明らかになった。支援者が対人関係の中で、自己有用感を高める関わりを持つことは、地域生活を送る統合失調症者のパーソナルリカバリーの向上につながることが推察された。
研究報告
  • 木下 天翔, 八代 利香
    2025 年 24 巻 p. 58-65
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/12
    ジャーナル フリー
    本研究では、手術室看護師が臨床現場で経験している倫理的問題の特徴を明らかにすることを目的とした。研究方法は、手術室看護師95名を対象に無記名自記式質問紙調査を行い、自由記述を質的帰納的に分析した。その結果、手術室看護師が経験する倫理的問題の特徴は、【手術を受ける患者に対する不適切な行動】、【手術看護を実践する難しさ】、【医師や先輩看護師の看護師に対する不適切な対応】、【患者や家族との関わりに対する困難感】、【手術室看護師の労働環境】の5カテゴリーに整理された。手術室看護師は「患者の権利擁護者」として、継続した看護倫理の知識や技術の習得に努めるとともに、自身が経験した倫理的問題を表出していくことが求められる。看護管理者においては、倫理的問題を個人の問題として捉えるのではなく、手術室全体の問題として医師を含めた多職種との話し合いの場を設ける機会を調整し、検討を重ねていくことが重要である。
総説
  • Rie Kudoh, Taiga Shibayama
    2025 年 24 巻 p. 66-77
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/12
    ジャーナル フリー
    This review aims to compare dental hygienists' attitudes and practices toward oral management for patients with diabetes in Japan with findings in the United States. A literature review was conducted using Ichushi-Web and PubMed databases. Nine articles met the inclusion criteria. Dental hygienists in Japan acknowledged having insufficient knowledge about the practice of screening and the systemic condition of patients with diabetes, and about 60% were careful in their approach to oral management of patients with diabetes. At the same time, most dental hygienists in the United States were aware of the link between periodontal disease and diabetes and felt that it was important to practice chairside screening for diabetes. Moreover, they spent more time educating patients with diabetes about oral health than other patients. In both countries, dental hygienists acknowledged the need for medical-dental collaboration regarding the oral management of patients with diabetes. The present results may be helpful in considering the actual situation of dental hygienists in Japan. However, it is necessary to consider the scope of practice of dental hygienists in Japan and the United States when interpreting these results.
総説
  • 高島 真美, 新屋 智子
    2025 年 24 巻 p. 78-88
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/12
    ジャーナル フリー
    【目的】看護基礎教育におけるDXの活用に資するVR教材作成への示唆を得る。【方法】医中誌Webを用いて抽出した23件の文献を対象に、看護基礎教育のVR教材の概要を整理・分析した。【結果】VR教材の開発・活用は新型コロナウイルス感染症への対応を契機とし、視覚と聴覚のみでVR空間を体感するものが多かった。教材の目的は、対象者の共感的理解、観察・アセスメント、看護技術を学ぶことなどであり、教育手法はシミュレーション教育が多かった。【考察】看護基礎教育におけるVR教材は、新型コロナウイルス感染症のため緊急的に導入されたが、教材の目的自体は看護教育全般に通ずる重要な要素であった。そのため、VRは一時的な活用にとどまらず、シミュレーション教育と組み合わせることで、より発展的に活用できる可能性が示唆された。一方で、VRの三要素(没入感・インタラクション・自己投射性)を十分に備えた教材開発には課題が残る。【結論】看護基礎教育では、シミュレーション教育で活用できるもの及びVRの特徴を活かした教材作成が求められる。
feedback
Top