日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
2 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
総説
  • 平田 純生, 門脇 大介, 成田 勇樹
    2013 年 2 巻 3 号 p. 3-12
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/04/02
    ジャーナル フリー

     薬剤性で腎前性の急性腎障害(AKI: acute kidney injury)は薬剤投与によって引き起こされる腎血流の低下あるいは糸球体内圧の低下により糸球体濾過率が低下し、乏尿となる状態である。薬剤性AKI の原因薬物数は薬剤性腎性AKI 原因薬物と比し少ないものの、出血、脱水、ショック、心不全、動脈硬化、高齢者などは腎虚血を助長するリスクファクターであるため、薬剤性腎前性AKI の発症頻度は高いことに注意する必要がある。 また前述のリスク因子のある患者に腎毒性薬剤が投与された場合、腎性AKI か腎前性AKI を見極めることが重要と思われる。血清Cr 値の上昇、尿量の減少はすべてのタイプのAKI の診断基準であるが、腎前性AKI はNa 排泄分画(FENa: fractional excretion of sodium)が1%未満になる、あるいは尿中Na 濃度の低下、尿浸透圧の上昇などで鑑別できるが、これらの検査は実臨床では実施されないことが多いため、腎前性AKI が腎性AKI と混同されやすいことに留意する必要がある。 本論文では腎前性薬剤性のAKI の原因薬物として主にNSAIDs(non-steroidal anti-inflammatory drugs)、カルシニューリン阻害薬、レニン- アンジオテンシン系阻害薬、利尿薬について記載する。

原著
  • 済川 聡美, 田中  守, 井門 敬子, 田中 亮裕, 末丸 克矢, 荒木 博陽
    2013 年 2 巻 3 号 p. 13-17
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/04/02
    ジャーナル フリー

    慢性腎臓病(CKD)患者は年々増え続けており、腎排泄型薬剤の投与量調節や腎機能を低下させる可能性のある薬剤の適正使用が益々重要となっている。そこで、愛媛大学医学部附属病院では、入院患者に対し持参薬の確認を薬剤師が実施しており、CKD 患者への腎排泄型薬剤の過量投与を防止する体制を整えている。しかしながら、外来受診患者では当院薬剤師の関わりは十分とは言い難く、外来CKD 患者への腎排泄型薬剤の過量投与の可能性が懸念されている。そこで、本研究では外来患者を対象に腎排泄型薬剤の使用実態を調査したので報告する。 今回の調査はレトロスペクティブに行われた。2012 年7 月に当院外来を受診した患者で、腎排泄型薬剤が処方されたのは2969 名であり、そのうち、腎機能が測定されていた患者は792 名であった。患者の腎機能別にステージを分類すると、CKD ステージ3 - 5 の患者は295 名であり、全体の37.2%であることが分かった。その際、推算糸球体濾過量はeGFR=194 × Cr-1.094 × age-0.287 ×(female:0.739)として算出された。過量投与の割合が高い可能性が示唆される腎排泄型薬剤は、ニザチジン44%(4/9)、シロドシン40%(6/15)、アマンタジン33%(4/12)の順であった。また、処方数が多かった薬剤としてはアロプリノール9%(7/80)、レボフロキサシン8%(5/59)、ファモチジン7%(17/237)があげられた。本研究で、我々は外来患者における腎排泄型薬剤の過量投与の可能性を明らかにした。院外保険薬局との連携を取り合い、外来CKD 患者に対する腎排泄型薬剤の過量投与を防止する体制を整える必要があると考えられる。

  • 髙橋 誠, 猪俣 雅之, 福井 美規子, 渡辺 祐子, 佐々木 佳子, 鈴木 直哉, 徳村 麻衣子, 川原 昇平, 吉嶋 抄苗, 地主 隆文 ...
    2013 年 2 巻 3 号 p. 19-26
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/04/02
    ジャーナル フリー

     血清シスタチンC 濃度(CysC)は血清クレアチニン(Cre)と比較して優れた腎機能の指標である。近年、Cre 値から換算される推定クレアチニンクリアランス(CCr)や推定糸球体濾過量(eGFRcreat)に代わってCysC から換算される推定糸球体濾過量(eGFRcys)が用いられることが多くなってきている。しかしながら、多くの患者におけるこれらのパラメータの比較を行った報告は少ない。そこで本研究では、北海道消化器科病院の入院患者1163 名を対象に、eGFRcys に対してeGFRcreat ならびにCCr の比較を行うとともに、それぞれの指標間の差異の原因を明らかにし、腎機能評価に影響を及ぼす要因を特定することを目的とした。 まず、各患者の腎機能評価指標の平均値について比較したところ、CCr とeGFRcreat はほぼ同じ値であったが、eGFRcys はこれらの値よりも大きく、eGFRcys とeGFRcreat ならびにeGFRcys とCCr の差の平均は、それぞれ27.6、21.4 であった。また、eGFRcys とeGFRcreat またはCCr の差が平均値(27.6、21.4)を上回るあるいは下回る患者に分け、患者の腎機能評価に影響を及ぼす因子を多変量ロジスティック回帰分析により解析した。その結果、[eGFRcys ‐ CCr] と血清アルブミン値の間には有意な相関性が認められた。さらに、[eGFRcys ‐ eGFRcreat] では性別、肥満度ならびに血清アルブミン値に有意な関連性が認められた。以上の結果より、eGFRcreat やCCr は eGFRcys に比べて低値を示し、その程度は腎機能の評価に影響を与えるものであった。また、その差に影響を与える因子は、筋肉量ではなく、栄養状態であると考えられる。

  • 本郷 文教, 小島 雅和, 新沼 芳文, 早川 達
    2013 年 2 巻 3 号 p. 27-33
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/04/02
    ジャーナル フリー

    【目的】 フェブキソスタットは、腎機能障害患者においても投与量の調整が不要とされている。その一方で添付文書には重度の腎機能障害患者には使用経験が少ないことから慎重投与と記載されている。そこで我々は、フェブキソスタットを投与された重度腎機能障害患者の臨床効果と副作用について検討した。【方法】 2011 年6 月から2012 年6 月まで当院にてフェブキソスタットが処方された患者(抗癌剤・テラプレビル併用患者を除く)70 名のカルテを後ろ向きに調査した。フェブキソスタット開始時のeGFR からCKD stage1-3 までの軽度~中等度腎機能低下群(軽中等度群)32 名とstage4、5 の重度腎機能低下群( 重度群)38 名に分け、両群における処方開始と24 週後のフェブキソスタット投与量、血清尿酸値、AST・ALT・CPK 等の臨床検査値、投与前の治療薬および併用薬、有害事象の内容等を調査、検討した。【結果】 軽中等度群と重度群における24 週目のフェブキソスタット投与量(mg/day) は16.9 及び13.7 であった。血清尿酸値(mg/dL) は投与開始前と投与24 週後で軽中等度群は8.7 から6.6、重度群では9.4 から6.8 であり、それぞれ有意な低下が見られた。また血清尿酸値7.0mg/dL 未満達成率は、軽中等度群で73.3%、重度群で56.5% であった。 重度群の有害事象は11 例でCPK 上昇等の検査値異常が見られたが、多くは軽微で一過性であった。【考察】 検討した70 例のうち重度群38 例においても軽中等度群32 例と同用量で十分な血清尿酸値の低下が認められた。また治療の継続に影響するような重篤な副作用は見られなかった。本研究の結果は、重度腎機能障害患者においても尿酸値に応じたフェブキソスタットの投与の有用性が示されたと考えられる。

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