日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
3 巻, 3 号
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原著
  • 吉田 拓弥, 古久 保拓, 田中 千春, 三宅 瑞穂, 隅野 和美, 田中 梨惠, 和泉 智, 庄司 繁市, 山川 智之
    2014 年 3 巻 3 号 p. 15-20
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/02
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    慢性腎臓病患者は高尿酸血症の合併頻度が高く、血液透析(HD)患者に関しても同様である。本研究では、HD患者の高尿酸血症に対する、非プリン型キサンチンオキシダーゼ阻害薬フェブキソスタットの効果と、その個人差について調査した。1年以上維持HDを施行中で、フェブキソスタットを10 mg/日で開始した血清尿酸値(SUA) 7.0 mg/dL以上の27例を対象とした。フェブキソスタットのSUA低下効果は、投与直前及び1ヶ月後のSUAを比較することにより評価した。フェブキソスタット開始時に、高尿酸血症治療薬が未投与であった患者群を新規群(13例)、2ヶ月以上継続してアロプリノールの投与中であった患者群を切替群(14例)とした。新規群のSUAは、開始前9.7 mg/dL (7.4 〜 11.9)から開始後5.0 mg/dL (3.4 〜 7.1)へ有意に低下した。切替群のSUAは、切替前9.1 mg/dL (7.0 〜 10.0)から切替後6.1 mg/dL (5.1 〜 10.0)へ有意に低下した。フェブキソスタット開始後のSUA変動率は新規群と比較して切替群で有意に小さかった。新規群及び切替群におけるSUA変動率とベースラインの血清尿素窒素(BUN)の間に有意な負の相関性を認めた。切替群を切替前後のSUA変動率の中央値(-22.7 %)で分割した結果、SUA低下が小さかった7例でベースラインBUN及び標準化蛋白異化率(nPCR)が有意に低かった。HD患者へのフェブキソスタット投与は10 mg/日で効果を発揮することが示唆され、過度なSUA低下には注意が必要と思われた。アロプリノールから切り替えたHD患者ではフェブキソスタットの効果が相対的に小さく、HD患者での栄養状態不良を意味するBUN低値及びnPCR低値がフェブキソスタット効果不良と関連する可能性が示された。

  • 大東 真理子, 越野 勝博, 中川 智加, 小阪 直史, 牛込 秀隆, 吉村 了勇, 四方 敬介
    2014 年 3 巻 3 号 p. 21-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/02
    ジャーナル フリー

    【目的】腎移植後の拒絶反応を抑制するために、通常カルシニューリン阻害薬・代謝拮抗薬・ステロイドの併用免疫抑制療法が行われる。代謝拮抗薬に高用量のミゾリビン (MZ: 6 mg/ kg/ day) を使用した免疫抑制療法 (高用量MZ療法) では、MZの血中濃度の個人差が大きいことが問題となる。MZは腎排泄薬剤だが、吸収率の個体間変動が著しく、MZの吸収は腎機能に続いて血中濃度に影響を及ぼす因子と考えられている。今回、加齢がMZの吸収に及ぼす影響について検討した。【方法】2011年4月~2013年9月に高用量MZ療法を行った50症例を対象とし、低年齢群 (18~44歳: 25症例) と高年齢群 (45歳以上: 25症例) の2群において、MZの血中濃度・薬物動態学的パラメータの比較解析を行った。また、年齢と血中濃度時間曲線下面積を投与量とクレアチニンクリアランスで補正した値 (AUC・Ccr/ Dose)との相関を検討した。【結果】両年齢群間に移植腎機能の有意差はみられなかった。低年齢群のトラフ値、AUCは、高年齢群と比較して有意に高値であった。また、年齢とAUC・Ccr/ Doseの間には負の相関を認めた。【考察】加齢によるMZの吸収の低下が見受けられた。本結果より、高用量MZ療法を適正に行うために、血中濃度モニタリングの実施が望ましく、投与設計時は年齢の配慮も必要であることが示唆された。

短報
  • 宮村 重幸, 柴田 啓智, 下石 和樹, 浦田 由紀乃, 森 直樹, 門脇 大介, 丸山 徹
    2014 年 3 巻 3 号 p. 3-8
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/02
    ジャーナル フリー

    薬剤の適正使用を考える上で、腎機能に応じた適正な用量設定を行うことは重要である。そのため、薬剤師は血清クレアチニン値などの腎機能データを入手する必要があるが、保険薬局において、薬剤師が患者の腎機能データを入手する手段は確立していないのが現状である。今回我々は、保険薬局に勤務する薬剤師にアンケート調査を行い、患者の腎機能情報の必要性と入手手段を明らかにした。日常業務において腎機能を①考慮している(9.1%)、②どちらかといえば考慮している(54.5%)、③どちらかといえば考慮していない(27.2%)、④考慮していない(9.1%)という結果であった。腎機能に関する情報源としては、①患者・家族(77.2%)、②処方医(4.5%)、③情報を得る方法なし(9.1%)であった。この結果をふまえ、我々は患者の腎機能情報を病院と保険薬局で共有するために、お薬手帳内にeGFRを記載するシールとお薬手帳の表紙に患者の腎機能が低下していることを示すシールを考案した。そして、本ツールの有用性を検討するために、情報提供を受けた薬剤師を対象にアンケート調査を実施したところ、本ツールが①有用(50.0%)、②どちらかといえば有用(36.3%)であった。今回の調査から、保険薬局において、患者の腎機能に関する情報は必要とされているにもかかわらず、入手できていないことが明らかとなった。そのため、シールを用いて患者の腎機能情報を共有する試みは、保険薬局に勤務する薬剤師に対しても患者の腎機能を考慮した処方設計に対する注意喚起に大変有用であり、腎排泄型薬剤の過量投与を防ぎ、医薬品適正使用に大きく貢献できることが示唆された。

  • 三星 知, 山崎 修治, 山田 仁志, 長井 一彦
    2014 年 3 巻 3 号 p. 9-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/02
    ジャーナル フリー

    オザグレルナトリウムは脳梗塞急性期に投与される抗血小板薬で、腎排泄型の薬剤である。そのため、腎機能低下患者や高齢者では血小板凝集抑制作用が増強する可能性が考えられるが、腎機能低下患者におけるオザグレルナトリウム投与後の薬効を検討した報告はない。そこで我々は腎機能低下患者におけるオザグレルナトリウム投与後の血小板凝集能への影響を調査したので報告する。2008年3月から2013年4月までにオザグレルナトリウムを投与し、血小板凝集能を測定した23名の患者を対象として、後ろ向きに調査を行った。アスピリンを併用していない腎機能低下群では非低下群と比較してADPのPATIが1μM、コラーゲンのPATIが0.7μg/mLの上昇を認めた。一方、アスピリンを併用している腎機能低下群では非低下群と比較してADPのPATIが0.1μMの低下、コラーゲンのPATIが0.2μg/mL の上昇を認めた。オザグレルナトリウムによる血小板凝集抑制作用は腎機能低下患者において増強する可能性が考えられるため、投与を行う場合には消化管出血や脳出血などの副作用を慎重にモニタリングする対策が必要であると考えられる。

症例報告
  • 市川 裕平, 村上 穣, 田中 茂, 塚田 学, 荻原 宏美, 油井 信明, 池添 正哉, 石田 英樹, 田邉 一成
    2014 年 3 巻 3 号 p. 27-31
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/04/02
    ジャーナル フリー

    患者は40歳代、男性。二次生体腎移植術を施行された。術後経過は良好で、腎機能の著明な改善を認めた。タクロリムス(tacrolimus:TAC)の血中トラフ濃度は術後6日目(postoperative day 6: POD6)には5.5 ng/mLであった。百日咳罹患者と接触したためミノサイクリン(minocycline: MINO)の予防内服を開始したところPOD7より1日5行程度の水様性下痢が出現し、POD10には11.3 ng/mLまで血中トラフ濃度が上昇した。MINOの内服中止により下痢が改善すると血中トラフ濃度は速やかに低下し、以後、5.5~6.1 ng/mLで良好に維持された。TACの血中トラフ濃度上昇時に洞性頻脈による一過性の動悸および胸痛が出現したが、腎機能の悪化は認められなかった。TACは難吸収性であるが、下痢出現時にはその吸収が亢進し、血中濃度が上昇することが報告されている。腎移植レシピエントは免疫抑制剤の副作用や抗菌薬投与による腸内細菌叢の変化あるいは腸管感染症など複数の要因により下痢をきたしやすい。TACを内服中の腎移植患者に下痢を認めた際には、TACの血中濃度上昇およびその副作用の出現に十分留意する必要があると考えられた。

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