日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
5 巻, 3 号
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原著
  • 大東 真理子, 越野 勝博, 小林 万起, 小阪 直史, 牛込 秀隆, 吉村 了勇, 四方 敬介
    2016 年 5 巻 3 号 p. 9-15
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/02
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    【目的】腎移植後の拒絶反応を抑制するために、通常カルシニューリン阻害薬・代謝拮抗薬・ステロイドの併用免疫抑制療法が行われる。代謝拮抗薬に高用量のミゾリビン (MZ:6 mg/kg/day)を使用した高用量ミゾリビン併用免疫抑制療法 (高用量MZ療法)では、MZの血中濃度の個人差が大きいことが問題となる。MZは腎排泄薬剤だが、吸収率の個体間変動が著しく、MZの吸収は腎機能に続いて血中濃度に影響を及ぼす因子と考えられている。しかし、個体内での長期にわたる吸収率の変化の報告はない。今回、個体内でのMZの吸収率の変化について検討した。【方法】2007年3月~2014年12月に生体腎移植後高用量MZ療法を行い、術後2週間後、4週間後、かつ1年後のすべて時点においてMZの血中濃度を測定した症例を対象とした。対象症例のMZの血中濃度時間曲線下面積を腎機能と投与量で補正した値 (AUC・eGFR/Dose)を「みかけの吸収率」とし、「みかけの吸収率」の変化を調査した。また、背景因子(年齢・性別・併用CNI・術前の透析の有無・術前透析期間・術前糖代謝能)が「みかけの吸収率」の変化に与える影響を調査した。【結果】「みかけの吸収率」は腎移植4週間後では2週間後より有意に上昇し(変化率平均130%)、腎移植1年後では4週間後より有意に低下した(変化率平均85%)。また、背景因子は「みかけの吸収率」の変化に影響を与えなかった。【考察】高用量MZ療法において、MZの投与期間が吸収の変動に影響をもたらすことが明らかとなった。本結果より、高用量MZ療法を適正に行うために、血中濃度モニタリングの実施が望ましく、投与設計時は投与期間の配慮も必要であることが示唆された。

  • 森 尚義, 林 雅彦, 大井 一弥, 八重 徹司, 谷口 晴記
    2016 年 5 巻 3 号 p. 17-24
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/02
    ジャーナル フリー

    緒言:Tenofovir disoproxil fumarate(TDF)は、腎機能に応じた投与方法の目安が添付文書に記載されているが、投与量の減量ではなく投与間隔の延長であり、服薬アドヒアランスを高く維持することが困難となっているのが現状である。実際に、体表面積未補正推算糸球体濾過値(未補正eGFR)の低下によるTDF配合剤の投与中止例が散見されたことから、TDF配合剤投与開始時の未補正eGFRに着目し、未補正eGFRの低下との関連について調査した。方法:2005年4月から2014年3月までに三重県立総合医療センターでTDF配合剤を含む多剤併用療法を開始したHIV感染症患者のうち、全ての経過を後方視的に確認できた21例を対象とした。患者をTDF配合剤開始時未補正eGFRが80 mL/min以上と80 mL/min未満の2群に分けて、患者背景、未補正eGFRの推移などを調査した。結果:TDF配合剤開始時未補正eGFRが80 mL/min以上の群は13例中12例が評価時に通常用量を維持できていたのに対し、TDF配合剤開始時未補正eGFRが80 mL/min未満の群で通常用量を維持できていたのは8例中2例のみであり、両群間で有意差が認められた。また、TDF配合剤減量基準該当群においては、TDF配合剤開始時未補正eGFRの低さとTDF配合剤減量基準該当までの期間の短さに有意な相関が認められた。考察:本検討においては、未補正eGFRが50~80 mL/min程度の患者にTDF配合剤を投与すると未補正eGFRの低下が発現し、早期に減量基準に該当する可能性が高いことが明らかとなった。今後は未補正eGFRが50~80 mL/minの範囲にある患者への薬剤管理指導と、未補正eGFRが50~80 mL/minの範囲の用法用量設定に関するさらなる育薬研究が重要であると考える。

ノート(短報)
  • 鈴木 大介, 市江 敏和, 林 秀樹, 杉浦 洋二, 杉山 正
    2016 年 5 巻 3 号 p. 3-8
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/02
    ジャーナル フリー

    本邦における抗菌剤の標準的な投与量は海外より低用量なものが多く、それは透析患者でも同様の傾向が認められる。今回われわれは、腹膜透析患者の出口部感染症においてセファレキシンが国際腹膜透析学会による推奨投与量である1回500 mgを1日2回連日投与された患者を後方視的に調査し、その安全性と有効性について検討した。対象は、2013年1月から2014年12月までに出口部感染症と診断された腹膜透析患者で、セファレキシンを国際腹膜透析学会の推奨投与量である1回500mg、1日2回経口投与された患者とし、患者13名投与機会20回を解析対象とした。調査期間中に複数回の治療が行われた患者についてはそれぞれをカウントした。対象患者の背景は、平均年齢は55.9±14.1歳、平均体重は65.4±18.6kg、平均腹膜透析歴は12.4±12.0ヶ月であった。対象患者の半数弱で起炎菌は同定されておらず、同定されたものではメチシリン感受性の黄色ブドウ球菌が最多で検出されていた。セファレキシンの平均投与期間は20.1±8.7日であった。対象患者での治療効果は有効率95.0%(19/20)と良好な結果が得られていた。治療失敗の内訳は、主治医により無効と判断され抗菌剤の変更となった患者が1名であった。安全性については、投与期間中に主治医がセファレキシンによる副作用であると診療録に明記されていたものとして軽度の下痢が1名あった。検査値異常を示した患者は認められなかった。本研究では、対象群が設定されておらず有効性の評価に関しての限界はあるが、腹膜透析の出口部感染症に対してセファレキシン500 mgを1日2回投与しても明らかな副作用は認められず、安全に投与可能である可能性が示唆された。

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