日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
6 巻, 3 号
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原著
  • 梅原 健吾, 渡邉 愛, 武田 香陽子, 髙山 慎太郎, 藤田 昭久, 関根 球一郎, 下山 哲哉, 伊藤 邦彦, 小林 道也, 佐藤 秀紀
    2017 年 6 巻 3 号 p. 163-170
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    目的:抗がん剤であるイリノテカン塩酸塩水和物(CPT-11)の主な消失経路は肝代謝とされており、これまでに患者の腎機能の違いによるCPT-11の効果や毒性について検討した報告は少ない。近年、腎機能低下モデル動物において、CPT-11の活性代謝物であるSN-38の排泄は正常ラットに比べ遅く、また重度の腎障害のあるがん患者においてもSN-38の消失遅延が報告されている。本研究では、腎機能とCPT-11の副作用発現の関連性を明らかにする目的で、カルボプラチン(CBDCA)+CPT-11併用療法を施行した患者の血液毒性と腎機能との関連性を検討した。結果:CPT-11投与後の白血球数数と好中球数、ならびに男性のヘモグロビン量値は腎機能パラメータと正の相関が見られた。また、クレアチニンクリアランス(CLcr)の重症度と白血球数減少、好中球減少の重症度との間に相関が見られた。しかし、年齢と腎機能パラメータの間に相関性認められていない70歳以上の患者群において、白血球数や好中球数の減少は年齢の増加に依存した。そのため、腎障害の程度が血液毒性に直接関係するのではなく、年齢の増加が交絡因子であることが推測された。考察:腎機能の低下した患者では血液毒性が強まる傾向が見られたが、その原因は加齢による、腎および他の臓器の機能低下によるものと考えられた。しかし、今回の患者はCLcr>30であり、より重度の腎障害のある患者については、今後さらに詳細な検討が必要である。

  • 大塚 尚, 渡邊 亜貴
    2017 年 6 巻 3 号 p. 171-179
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    慢性腎臓病(CKD)は幅広い疾患と密接な関係がある病態であるがゆえに必然的にCKD患者と接する機会が多い。また、CKD患者では腎排泄型薬剤を投与する場合には投与量の調節が必要となる。そのため腎排泄型薬剤はクリアランスが腎機能に依存するため、適切な薬物投与設計には腎機能の正確な把握が必要となる。ながらく腎機能の評価にはcreatinine clearance(CCr)が用いられてきたが、現在の腎機能の評価には推算腎糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate: eGFR)が用いられる。日本腎臓病学会が提唱したeGFR式より推算されたeGFRは簡便に結果を得られ、実臨床でも汎用されているが、未だCCrを用いている施設も多いのが現状である。そこで愛媛県の薬剤師の腎機能評価の理解度を把握し、今後の愛媛腎と薬剤研究会の活動に役立て、愛媛県全体で腎機能評価スキルの底上げを目指し、愛媛県の病院薬剤師会に登録している129病院、愛媛県薬剤師会に登録している558薬局、またその施設に在籍するすべての薬剤師に対しアンケート調査を行った。その結果、特にeGFRの理解に関して、体表面積補正値であるml/min/1.73m2と体表面積未補正値であるml/minの理解度が低く、腎機能を過剰に見積もってしまっている可能性が示唆された。愛媛県の薬剤師はまだまだ腎機能の評価に関して理解度が十分でなく、今後より安全な処方設計、投薬のために、愛媛腎と薬剤研究会でもさらなる啓蒙活動が必要であることが明らかとなった。

  • 鈴木 大介, 市江 敏和, 林 秀樹, 畔柳 敏弥, 杉山 正
    2017 年 6 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    ロスバスタチンは、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムとの併用による薬物間相互作用が報告されているが、その詳細は明らかではない。炭酸ランタンは、多価金属であるランタンを含有するため同様に薬物間相互作用が懸念される。そのため、今回HMG-CoA還元酵素阻害薬を服用中に新規に炭酸ランタンの併用を開始した患者29名を対象に調査を行った。本研究は全患者29名を対象に行い、さらに薬物間相互作用の報告のあるロスバスタチン群6名と非ロスバスタチン群23名に分けて行った。結果は、炭酸ランタン併用開始前後の低密度リポ蛋白(LDL)コレステロール値は、全患者において併用前73.0±19.8 mg/dL、併用後72.8±22.6 mg/dL(p=0.498)と有意な変化は認められなかった。これはロスバスタチン群、非ロスバスタチン群でも同様であった。血清リン値は、全患者において併用前6.6±0.9 mg/dL、併用後5.4±1.2 mg/dL(p<0.01)と有意に低下していた。ロスバスタチン群において併用前6.2±0.8 mg/dL、併用後5.0±1.0 mg/dL(p=0.092)と統計学的に有意ではないが、低下傾向が認められた。非ロスバスタチン群において併用前6.7±0.9 mg/dL、併用後5.5±1.2 mg/dL(p<0.01)と有意に低下していた。LDLコレステロール値は検討した対象患者全例でほぼ変化がなく、血清リン値は全患者において低下を確認できた。そのためHMG-CoA還元酵素阻害薬服用中の患者に炭酸ランタンの併用を開始してもHMG-CoA還元酵素阻害薬の臨床効果、炭酸ランタンの臨床効果には影響を及ぼさないことが示唆された。

症例報告
  • 内田 裕之, 竹内 裕紀, 河野 誠, 矢尾 淳, 中村 真理, 宇田 晋, 菅谷 弘之, 川口 崇, 畝崎 栄, 石井 嘉之, 浅井 茂夫
    2017 年 6 巻 3 号 p. 189-192
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    【目的】プレガバリン(PGN)の添付文書には、透析後の「血液透析後の補充用量」が記載されている。しかし、この補充投与量は透析開始6時間前に投与した場合のシミュレーションに基づいており、透析性のある薬剤は透析後に投与することが一般的である実臨床と条件が異なっている。著者らは血漿PGN濃度の高値が持続し、有害事象発生と関連を否定できない症例を経験しており、透析後の補充投与について十分検討する必要があると考え、PGNを継続投与中の血液透析患者における体内薬物動態を解析し、補充投与の必要性について検討した。【方法】維持血液透析患者でPGN投与中の2例を対象とした。PGN投与量は50mg/日であった。ダイアライザー前後の採血を含め透析日、非透析日の全7点で採血を行い、血漿PGN濃度を測定し、体内動態パラメータを解析した。【結果】2例の透析による補正後(真)の透析除去率、および透析クリアランスはそれぞれ55.6%、37.8%、および109.5mL/min,74.6mL/minであった。2例の透析クリアランスの平均値を用いて、1週間当たりの正常腎機能に対する透析の薬物除去寄与率を算出するとそれぞれ9.6%、4.9%であった。非透析日のPGN半減期はそれぞれ35時間、89時間であった。非透析日の推定AUC(eAUC)に対する透析日のeAUCの割合は、それぞれ85.3%、85.7%であった。【考察】本検討は症例報告であるが、透析日と非透析日のeAUCの差は15%程度であること、非透析時の半減期は延長しているため次回透析まで十分な血中濃度が維持できること、透析の薬物除去寄与率は僅かであることなどから、PGNを透析患者に投与する場合は、Ccr<15mL/minの投与量を透析後に投与すれば、「血液透析後の補充用量」の追加は必ずしも必要ではない可能性が示唆された。

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