日本鳥学会誌
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38 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 古賀 公也, 白石 哲, 内田 照章
    1989 年 38 巻 2 号 p. 57-66
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    長崎半島の脇岬漁港に隣接する丘陵地において,1983-1986年の2月から7月にかけてトビMilvus migrans lineatusの繁殖生態を調べた.その結果は以下の通りである.
    1) 丘陵地の一部(面積0.4km2)で1985年と1986年に番い密度を調査し,それぞれの年に33番いを数えた.このような集団的営巣は,本調査地がトビにとって餌の得易い,かつ営巣可能な樹木の多い環境であることによるものと考えられた.
    2) 1983-86年に計32巣を対象に繁殖成功率を調べた.産卵は28巣で行われ,これらの巣における一巣卵数は平均2.2個であった.少なくとも1羽の雛が24巣で巣立った.巣立ち雛数は1巣当たり平均1.0羽であり,これは個体群を維持するの十分な雛生産率であると思われた.
    3) 抱卵期から家族期までの親の行動を調べた結果,雌親は家族期前期まで縄張り内に留まった.雌親は育雛期中期から巣の周辺で採餌を再開したが,ほとんどの餌は雄親によって集められた.このことから,餌の豊富な環境では雄親は単独で,雌親と雛に十分な餌を供給し得ると考えられた.
    4) 以上の観察から,餌と営巣樹種の豊富な環境では,トビは集団的/TV1...営巣し,かつ安定した個体群を維持するのに十分な雛を産すること,さらに雄親の十分な餌供給により雌親は抱卵期から家族期前期まで縄張り内に滞留すると思われた.
  • 鳥羽 悦男
    1989 年 38 巻 2 号 p. 67-77
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    1988年4月から7月まで長野県長野盆地の犀川の中洲でコアジサシのEPC(つがい外交尾)の行動を調査し,EPCを試みる雌雄の行動とつがいの繁殖活動について述べた.
    1)1987年に114羽,1988年に62羽を捕獲し,個体識別した.EPCの試みに関して492時間,つがいの繁殖活動についてのべ630時間観察した.
    2) 31巣について繁殖活動を観察した結果,すべて一夫一妻のつがいであった.
    3) つがい以外の雄から雌へめ114例の接近中,'EPCの完了'4例(3.5%),'マウントのみ'11例(9.6%),'EPCの失敗'15例(13.2%)で,接近のみに終わったものが67例(58.8%)であった.
    4) PC(つがいの交尾)では雄はほとんど餌の小魚をくわえずに雌に近づく.しかし,EPCは雄が小魚をくわえ,出巣中の雌に接近することから始まる.これに対して,雌は交尾要求行動をとる.マウント中に雄の餌を奪い取るために雌は動き,交尾まで到らないことが多い.
    5) 雌は餌をくわえた雄の接近に対して交尾姿勢やうずくまり姿勢をとり,雄のマウントの寸前に飛びつき餌を奪い取ることがあった.114例の接近中17例(14.9%)あり,4羽の雌が1例ずつ餌を奪い取った.
    6) 雌は,交尾よりもむしろ餌がほしいために,雄のEPCの試みに応じるふりをして餌奪い行動をとるものといえる.餌奪い行動は抱卵期育雛期に多い.この時期は雌の出巣時間が増え,つがい外雄と接触するチャンスが増える.また,雄のつがい雌への給餌量が減少する.これらが餌奪い行動と関係していると考えられる.
    7) 産卵期中はつがい雄の雌への給餌が多い.雄はこの時期に抱卵中のつがい雌の防衛をしないが,この給餌がその働きをしていると考えられる.
    8) 雄は雌の産卵時期が判断できないらしく,またEPCを試みても交尾に到ったものが少ない.このため雄のつがい以外雌への受精の可能性が低い.
  • 松岡 茂
    1989 年 38 巻 2 号 p. 79-92
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    キジバトの視覚刺激(マネキン人形)に対する反応の個体変異,ならびに1個体の場合と複数個体を同時に使った場合の刺激に対する反応の違いを,大型網室を使って実験的に調べた.実験には3羽のキジバトを用い,また2か所の餌場に,顔を露出したマネキンと全身を布で覆ったマネキンをランダムに配置し,それぞれの餌場でのキジバトの採食行動を観察した.
    1) 対照実験(餌だけを2か所の餌場に与えた実験)から,キジバトはどちらかの餌場を特に好むという傾向は認められなかった.
    2) マネキンに対する反応には顕著な個体変異がみられた.個体Aは,明らかに顔を露出したマネキンを忌避し,個体Bはマネキンそのものを忌避し実験期間中(11日間)1度も餌場に現れなかった.個体Cは,最初の6日間はマネキンを忌避していたが,その後餌場を訪れるようになった.しかし,この個体は両方の餌場で採食し,マネキンの顔が露出しているかどうかを区別しなかった.
    3) 個Bと個体Cを用いた実験では,前者が1度だけ餌場に現れたのを除いて,個体Cだけが餌場で採食していた.
    4) 3個体を同時に使った実験では,個体Aは両方の餌場で採食するようになり,個体Bも他の2個体に比べれば短かかったが,両方の餌場に現れるようになった.また,この実験では,餌場周辺での個体間の干渉がみられた.
    5) 複数個体を使った実験の結果には,見かけ上,刺激に対する反応の弱い個体の行動が反映されやすい.
    6) 個体ごとの実験と複数個体を使った実験における個体の採食行動の変化について,実験の経過に伴う慣れ,個体間の干渉,群れとしての行動の質的変化などの点から考察を行った.
  • 阿部 學, 小崎 京
    1989 年 38 巻 2 号 p. 93-100
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,飼育しているトラフズク Asio otus の摂食量•排出量を測定してそのエネルギー収支を明らかにした.飼育しているトラフズクにハタネズミMicrotus montebelliを与え,毎日の摂食重量を熱量に換算した.ペリット•糞はそれぞれ熱量を測定し,あわせて排出量とした:以下に結果を示す.
    1)ハタネズミ生体重量-熱量の関係において,ネズミの性や日齢にかかわらず,同じ直線Y=2.63X-9.69(X:g,Y:kcal)に回帰した.この式から,トラフズクの摂食量は1日平均125.1kcalと求められた.
    2)ペリットは,1日に1-3個,平均1.8個吐出し,1個あたり平均1.75gであった.その熱量は1日平均9.7kcalで,これは摂食量の7.8%に相当した.
    3)糞は1日平均11.5kcal排出し,これは摂食量の9.2%に相当した.
    4)摂食量から排出量を差し引いた同化量は,1日平均103.9kcalと求められた.同化効率は83.1%であった.
    5)同化量の変動に比べ,維持量の変動は小さく,かなり安定していた.維持量は同化量の93.6%を占め,成鳥では同化したエネルギーのほとんどが個体維持に費やされることを裏づけた.
  • 福本 幸夫
    1989 年 38 巻 2 号 p. 101-102
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    A specimen of the Mottlrd Petrel Pterodroma inexpectata was captured at Asaminami-ku, Hiroshima City, on 17 June 1986. This is the first record of the species in Japan
  • 平野 敏明
    1989 年 38 巻 2 号 p. 102-104
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    A bigamous trio of the Japanese Wagtail Motacilla grandis was observed in the breeding season of 1985 at Utsunomiya, central Honshu. The trio seemed to consist of a pair (A, B) and a female (C). In both of the first and renesting broods, the two females participated in building the nest, incubating the eggs, and feeding the young. It was not known whether or not the subordinate female (C) laid eggs. This trio differs from other bigamous case of this species in which the females occupied mutually exclusive area within the male territory.
  • 藤巻 裕蔵, 柳川 久, 谷口 明里
    1989 年 38 巻 2 号 p. 104-106
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    One to three Nutcrakers Nucifraga caryocatactes were observed in residential areas and wood islands of suburban areas in Obihiro City and its environs, central Hokkaido, from mid-October 1988 to late June 1989. Besides, Nutcrackers were recorded from Hakodate, Sapporo and Furano from October 1988 to mid-June 1989. Poor cone production of the Japanese Stone Pine Pinus pumila in 1988 was considered to be one of causes of their wintering at low altitudes.
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