1)1986-90年に埼玉県浦和市大久保の荒川河川敷内にある水田で,ヨシゴイの繁殖についての調査を行った.その結果ヨシゴイの繁殖形態には単独営巣から10巣以上の集団が見られるコロニー営巣までがあることがわかった.
2)巣はヨシ原内やヒメガマやフトイの茂った沼の中につくられ,すべての巣は水面上にあった.ヨシ原内では巣は単独でつくられていたが,ヒメガマの茂った沼では毎年3~13までの複数の巣が見られ,1990年に13巣の最高巣数を観察した.ここでは12巣が同時期的に存在して,各巣の平均距離は6.7mで最短距離は2.5mであった.またフトイの群落のある別の沼では3巣が近距離につくられていた.
3)産卵は6月初旬から8月中旬まで見られたが,6月中旬から7月中旬に多く,最盛期は6月中旬(37.2%)であった.一腹卵数は平均5.95卵(4~7卵)で,産卵は普通一日1個を産んだ.抱卵期間は平均18.7日(17~20日)で,雛は5~8日は巣内で給餌を受けているが,それ以後は観察者が近づくと巣を離れさった.しかし,しばらくすると巣に戻って給餌を受けていたが,20日位までには巣に戻ることはなくなった.
4)ヨシゴイの営巣場所に関しては,特に巣の下に水があることが重要な条件であると思われた.ヨシ原は沼地に比べ圧倒的に面積が多いが巣はあまりつくられていなかったのはこの理由によると思われた.ヒメガマの群落のある場所でも,沼ではコロニーになっていたが,休耕地の水面のない群落内には巣は一つもなかった.
5)ヨシゴイの集団営巣は,捕食者の近づきにくい好適な巣場所の不足によって起こっているものと思われた.
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