1)1990年に帯広市とその周辺地域でカラス類の巣の分布,営巣環境,繁殖の経過を調査し,1989,1990両年に池田町において有害鳥獣駆除で捕獲したカラス類の生殖器と栄養状態を調べ,十勝地方の住宅地と農耕地におけるカラス類の生息状況と繁殖活動を明らかにした.
2)ハシボソガラス37巣,ハシブトガラス8巣について調べた.ハシボソガラスは農耕地においてはおもにカラマツの防風林に営巣しており,住宅地においては公園林のほかに街路樹にも営巣していた.ハシブトガラスは農耕地内の林や住宅地では公園林に営巣していた.
3)営巣密度は両種ともに大きな緑地のある住宅地で高く,農耕地で低かった.巣間距離も大きな緑地のある住宅地で短く,農耕地で長かった.
4)造巣から巣立ちまでに要する期間はハシボソガラスでは94日間,ハシブトガラスでは101日間で,ほぼ同じであったが,造巣の開始時期や平均巣立日からみるとハシボソガラスの繁殖はハシブトガラスに比べて17~24日間早く始まり,2種の生息器の発達の違いにも同様な差が見られた.
5)栄養状態は,両種ともに年間の変化はあまりなく,栄養状態と生殖器の発達に相関は認あられなかった.また体重についても生殖器の発達との相関は認められなかった.
6)ハシボソガラスとハシブトガラスの繁殖開始時期の違いについて日長条件への適応の違いから考察した.
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