日本鳥学会誌
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45 巻 , 2 号
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  • 中村 雅彦, 松崎 善幸, 大鷹 宏彰
    45 巻 (1996 - 1997) 2 号 p. 71-82,119
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    多くのスズメ目鳥類は,冬期は群れ(flock)で生活し,夏期には番いがなわばりの中で繁殖するといった非繁殖期と繁殖期で異なる2つの社会的な相(phase)をもつ(LACK1968)。エナガ Aegithalos caudatus やシジュウカラ Parus major などの留鳥では,これら2つの相は密接に関連しており,非繁殖期の群れは繁殖期の番い形成やなわばり形成を規定している。一方,渡り鳥は非繁殖期に単独なわばり,種間なわばり,一時的な集合,群れといった多様な社会行動を示すにも関わらず,これらの社会行動と繁殖期の社会構造の関係にはほとんど注意が向けられてこなかった。これは渡り鳥の社会構造に関する研究が主に繁殖期に集中しており,また繁殖期に標識した個体の越冬地を特定するのが難しく,同一個体を通年追跡することがほとんどできないためである。我々は,イワヒバリ Prunella collaris の社会構造を調べるため,乗鞍岳において1985-95年の繁殖期に680個体を標識した。しかし,これらの個体は,10月初旬に繁殖地から渡去し,その越冬地がわからないため,越冬生態はよくわかっていなかった。ところが,各地の野鳥観察者の情報から,乗鞍岳で標識した5個体の越冬地4ヶ所を知ることができた。
    繁殖期のイワヒバリの社会単位は,血縁関係のない約7個体からなるグループで,その構成員はグループなわばりを共有する(NAKAMUNA 1990a,1995b)。本種は,雌は同一グループの複数の雄と頻繁に交尾をし,雄は交尾した複数の雌の雛の養育を手伝うといった協同多夫多妻の繁殖システムを持つ。繁殖期のグループの構成は,シーズンを通して,また数年にわたって安定している。典型的な協同繁殖鳥は,通年安定した群れ生活をする鳥類に多い(BROWN 1987)。イワヒバリもまた繁殖期の社会単位を非繁殖期まで維持するのだろうか。本論文では,イワヒバリの越冬地における社会単位と越冬生態を報告する。
    乗鞍岳で繁殖期に標識した5個体の越冬情報は,次の4ヶ所から得られた(Fig.1);栃木県上都賀郡足尾町(1個体),愛知県北設楽郡豊根村古真立新豊根ダム(1個体),奈良県吉野郡川上村下多古(1個体),山梨県南都留郡河口湖町御坂峠(2個体)。標識個体の越冬地に対する土地執着と越冬生態を調べるため,足尾では1989-95年の冬期に18日間,吉野では1990-93年の冬期に8日間,御坂峠では1992-95年の冬期に10日間調査を行った(詳細な調査スケジュールは,Table 1参照)。新豊根ダムでは,乗鞍岳での標識時(1989年9月)に若鳥だった個体が1990年2月に死体で回収されたが,現地調査は行わなかった。
    各越冬地は,山や谷の急峻な斜面にあり,斜面には一本の道路が走っていた。調査地を道路沿いに設定し(足尾14ha,吉野8ha,御坂峠8ha),100×200mの方形区に分割した。道路を1日に5回歩き,標識個体の発見に努めた。個体を発見した場合,3時間以上追跡することで,利用した方形区と群れサイズを決定した。2羽以上の個体が同時に10m以内にいて,少なくとも10分間一緒に同一方向に移動した場合を群れと定義した。
    越冬地の長期調査に加え,1995年には足尾と御坂峠で未標識の越冬個体(足尾4個体,御坂峠8個体)をカラーリングで標識し,個体間の結びつきの程度を2日間追跡した(足尾1995年2月27,28日,御坂峠1995年3月23,24日)。捕獲と行動観察を容易にするため,各調査地の道路沿いに餌場を設定した。各個体を10分から60分連続追跡し,行動は,採食,休息,さえずり,羽づくろい,個体間関係に分け,それぞれの行動の所要時間と位置を地図上に記録した。個体間の結びつきの指標(coherence index)には,ある個体の総観察時間に対し,他個体がその個体と10m以内の範囲で行動をともにした時間の割合を用いた。捕獲時には体重と翼長を測定し,雌雄判別の資料とした(本文及び図表のMは雄,Fは雌,Yは乗鞍岳標識時の若鳥を示す)。
    足尾吉野,御坂峠で越冬した標識個体(それぞれF1とM1,Y1,M2)は,越冬地に対する土地執着を示し,数年連続して同じ越冬地の方形区で記録された(Table 1)。乗鞍岳標識個体のF1とM2は,それぞれ1988-95年と1993-95年の繁殖期に連続して乗鞍岳に帰還した。しかし,乗鞍岳標識時に若鳥だった吉野のY1や足尾で冬期に標識したM1は,繁殖期に乗鞍岳で確認されなかった。1994年に乗鞍岳で生まれたM3は,1995年の2月と3月に御坂峠で確認できたが,乗鞍岳には帰還しなかった。異なる調査年度の情報をこみにすると,F1は11月から3月,M1は11月から1月,Y1は12月から2月,M2は12月から3月の各月にそれぞれの越冬地で確認されたことになる(Table 1)。このことから,イワヒバリはいったんある越冬地に定着すれば,冬中その越冬地に定住することが示唆された。
    各越冬地で乗鞍岳標識個体は,単独あるいは2-10羽の未標識個体(Ub)との群れで発見された(Table 2)。乗鞍岳標識個体の繁殖グループや出身グループの構成員は,繁殖期の標識調査によりすべてわかっている。
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  • 長谷川 雅美, 浅田 正彦, 谷口 薫美, 黒野 博之
    45 巻 (1996 - 1997) 2 号 p. 83-89
    公開日: 2007/09/28
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    北部伊豆諸島においてサシバの生息状況を調査した結果,利島(4.2km2),新島(22.8km2)及び神津島(18.4km2)でそれぞれ1,3,7つの行動圏の存在が確認され,地形が単純で面積の狭い式根島では行動圏は確認されなかった.サシバの行動圏の数は島の面積と地形の複雑さが増すとともに増える傾向が認められ,行動圏の位置は谷地形の分布とよく一致するように思われた.
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  • 大野 義徳
    45 巻 (1996 - 1997) 2 号 p. 91-99,121
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    筆者は,水田の畦等の開けた地上に営巣するケリ Microsarcops cinereus と,その主な卵捕食者であるハシボソガラス Corvus corone が多く生息する鍋田干拓地(愛知県弥富町,面積約288ha)において,1990年から1991年にかけてケリの人工巣を設置し,その残存率などを調査することにより,ケリの防衛行動による卵捕食圧の減少の効果を調べた。
    繁殖ステージは,ケリの渡来期,縄張り形成期,抱卵期,育雛期の4つに分けた。また,ケリのいなくなる冬期(非繁殖期)においても調査を行った。人工巣には,ケリの卵に似せて着色された鶏卵を用い,一巣当りの卵重を実際のケリの巣の卵重とほぼ同じにした。この偽卵を地上に敷いた少量のわらの上に置いた(一巣当り2個)。この人工巣を,前年の調査でケリが多く観察された調査地の南部に約280m間隔で45箇所設置した。これらの人工巣の残存率を設置24時間後とその後はほぼ3日おきに調査した。なお,ひとつの人工巣のなかの2つの偽卵のうちひとつでも捕食されていれば,その人工巣は捕食されたものとした。続いて,鍋田干拓地全体を一辺100mのグリッドに区切り,ケリの巣が存在するグリッドをケリの防衛エリアと仮定して,そのエリア内にある人工巣の残存数ハシボソガラスの侵入数を求めた。ここでは,「侵入」とはハシボソガラスが防衛エリア内の地面に降りている場合と定義した。
    その結果,人工巣の残存率は,ケリの繁殖ステージを経るにつれて高くなり,24時間後の残存率ではステージ間で有意な差がみられた(P<0.001)。このことは,ケリが縄張りを形成し,営巣,繁殖することで捕食者を追い払う防衛行動が活発になり,その結果人工巣全体の残存率を上昇させたものと思われる。さらに,防衛エリア内の人工巣の残存数も同様に,繁殖ステージを経るにつれて増加し,上記の結果を支持した。また,防衛エリアへのハシボソガラスの侵入数は繁殖ステージを経るにつれて減少する傾向が認められた(P<0.05)。
    これらの結果から,ケリの営巣,繁殖,および縄張り防衛が,ハシボソガラスの捕食行動に何らかの影響を及ぼし,その捕食機会を減じていることが示唆された。
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  • 江口 和洋
    45 巻 (1996 - 1997) 2 号 p. 101-107,122
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    佐賀市北東部のカササギ生息地において,カササギの電柱営巣の実態と電柱に対する選好性について調査を行った.電柱営巣は最近増加傾向にあり,完成巣に占める電柱巣の割合は1991年の41%に対して,1994年は55%であった。この傾向はカササギの分布域の広い範囲でみられている。
    1991年と1993年にカササギの営巣場所選択の調査を行った.任意に巣を選び出し,巣を中心に100m以内にある高さ5m以上の樹木と電柱や鉄塔などの人工構造物のうち巣に近い方から10ヶ所の営巣可能場所を記録した.選び出した106巣について,記録した営巣可能場所を合計し,電柱(20%)と樹木(80%)の割合を求めた.これらの値を両年の全完成巣に乗じた値をランダム営巣を仮定した場合の期待値とした.電柱巣の割合は巣周辺の営巣可能場所に占める電柱の割合に応じてランダムに選ばれるという仮定から期待されるよりも有意に大きかった(電柱巣 : 樹木巣=47% : 53% ; X2=204.7, df=1, P<0.0001).また,各巣について,周辺の営巣可能場所のうち樹木と電柱の両営巣場所タイプのどちらか数の少ない方のタイプに営巣していた場合を,「選好された」と仮定して,各タイプの巣毎に「選好された」場合の比率を計算した.電柱の巣では30巣中19巣が「選好」にあたっていたが,樹木巣では76巣中7巣のみであった(X2=31.18, df=1, P<0.001).どちらの結果も,カササギがランダム営巣を仮定した場合よりも電柱に営巣する傾向が高いことを示していた.しかし,繁殖に失敗した場合のやり直し営巣では,電柱に営巣した番の79%が樹木に転換し,一方,樹木に営巣していた番では28%のみが電柱に換わった.その結果,やり直し営巣では電柱巣の割合はやり直し巣全体の(67巣)の25%に減少した(1992年~1994年のデータ).この値は利用可能な営巣場所に占める電柱の割合に近く,ランダムな営巣場所選択を示唆している.
    作りかけのまま放棄される巣は樹木巣(全樹木巣の34%;1992年~1994年のデータ)の方で多く,電柱巣(24%)では少なかった(X2=6.08, df=1, P<0,05).これは,樹木を選んだ番は最終的に一つの巣が完成するまでに,いくつかの樹木へ巣材を運ぶのに対して,電柱巣では造巣が開始されると他の場所へ巣材を運ぶことが少ないことを示唆している.
    少なくとも1個体のヒナを巣立たせ巣の割合は電柱巣(284巣中72巣;1992年~1994年のデータ)の方が樹木巣(288巣中38巣)よりも有意に大きかった(X2=12.84, df=1, P<0.001).このことから,電柱に営巣した方が繁殖成功が高いといえる.この地域の繁殖失敗の主原因は捕食で,繁殖失敗の80%以上を占める(EGUCHI 1995).電柱巣では樹木巣に比べて捕食が少ないことが繁殖成功の違いの理由であると思われる.また,電柱巣は樹木巣に比べて非常に目立つことから,巣の隠蔽度が営巣場所の選択や繁殖成功にそれほど影響していないことを示唆している,
    電柱営巣はカササギの分布域の広い範囲で増加傾向にあり,分布域自体も最近では拡大の傾向にある.電柱営巣は,樹木の少ない地域や宅地開発のため森林が開かれた地域へのカササギの進出を可能とし,分布域を拡大する原因の一つになったものと考えられる.
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  • 上田 恵介, 山岡 彩子
    45 巻 (1996 - 1997) 2 号 p. 109-113
    公開日: 2007/09/28
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    コヨシキリ Acrocephalus bistrigiceps のオスでは繁殖途中に頻繁になわばりを移動するという現象が知られている.このなわばりの移動の意味については,香川(1989)が近縁種オオヨシキリ A.arundinaceus との種間競争によって、身体の小さいコヨシキリがなわばりの放棄を余儀なくされるという仮説と,配偶がうまくいかなかった場合になわばりを移動するという仮説を提示している.著者らはコヨシキリのなわばりの移動が,どちらの要因によって起こっているかを解明するために,1992年に埼玉県浦和市大久保の荒川左岸の河川敷内にある水出地帯で,なわばり移動と配偶•繁殖成功についての調査を行った.この年は6羽のオスが渡来し,なわばりを持った.なわばりはアシ原,アシ原に隣接する草原,水田中にパッチ状に点在する小さな草原につくられることが多かった.アシ原はそのほぼすべてがオオヨシキリのなわばりによって占められているため,繁殖期後期にオオヨシキリが渡去するまではアシ原の中央部にはコヨシキリはなわばりをもてなかった.なわばりを持ったオスの半数,3羽が繁殖期間内に1回以上のなわばり移動を行なった.なわばり間の距離は109.0±29.2m(x±SD)であった.これら3羽のオスのうちの2羽は最初のなわばりで配偶者が得られなかったこと,また残りの1羽では明らかにつがい形成を行なった相手のメスが産卵前に消失したことがなわばり移動の理由であると思われた.また2回目,3回目のなわばり移動をおこなったオスの場合も,人為的撹乱(草刈り)があった1回をのぞけば,そのなわばりにおいて配偶者が得られなかったことが原因であると思われた.一方,なわばりを移動しなかった3羽のオスはすべて最初のなわばりにおいて配偶者を獲得し,繁殖ステージもかなりの段階まで進んだオスであった.これらのオスはすべて同じなわばりで2羽目のメスを獲得しで一夫二妻になった.コヨシキリにおける頻繁なわばり移動はオオヨシキリとの種間競争によって,身体の小さいコヨシキリがなわばりの放棄を余儀なくされるのではなく,そのなわばりにおいて配偶者が得られなかった場合,または初期に繁殖が失敗した場合に起こることが明らかになった.
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  • Navjot S. SODHI, Gordon F. BENNETT, 永田 尚志
    45 巻 (1996 - 1997) 2 号 p. 115-117
    公開日: 2007/09/28
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    現在まで4000種の鳥から約450種の血液内寄生虫が報告されている(Bishop&Bennet l992).血液内寄生虫は潜在的に鳥に影響を及ぼすと考えられるので,希少種の保全にとっては寄生虫の感染を調べることは重要である.1995年4月から9月にかけて,利根川河川敷(茨城県神栖町)と霞ケ浦浮島湿原(茨城県桜川村)において環境庁発行のレッドデータブックで希少種に分類されているコジュリンを捕獲し,翼下静脈から血液を採取した.採取した血液はスライドガラスに薄く広げ乾燥させてから100%エタノールで固定した後,ギムザ染色を行った.顕微鏡下でランダムに100箇所を調べて寄生虫の存在を調べた.両調査地で合計130個体から採血したが,いずれの個体からも血液内寄生虫は検出されなかった.寄生虫感染率は,中間宿主の昆虫の存在や鳥の寄生虫に対する抵抗性に依存しているので,種内の地理的変異も大きいのかもしれない.McClure et al.(1978)は,日本の Emberiza 属の血液内寄生虫感染率が低いことを報告しているが,コジュリンの保全のためには同所的に分布している他の Emberiza 属の寄生虫感染率を調べる必要がある.
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