日本鳥学会誌
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56 巻 , 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
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総説
  • 由井 正敏
    56 巻 (2007) 1 号 p. 1-8
    公開日: 2007/07/12
    ジャーナル フリー
    岩手県内の北上高地には約30つがいのイヌワシが生息しているが,近年の繁殖成功率は急激に低下している.この原因として,イヌワシの好適な餌狩り場の減少が関与していることが明らかにされている.イヌワシの繁殖成功率を改善し個体群を安定させるためには,繁殖成功率が0.282以上になることが必要であると推定された.そのために必要な餌狩り場の暫定行動圏内(半径6.4 km)における面積を由井ら(2005)の重回帰式によって計算した.10年生までの幼令人工林のみでは560 ha(440~790 ha),放牧採草地や5年生までの伐採放棄地のみでは1,020 ha(670~2,120 ha),101年生以上の落葉広葉樹のみでは770 ha(560~1,240 ha)が必要であった.幼令人工林を必要量供給するためには,行動圏内の人工林を平均して67 haずつ76年に1回伐採して造林することで充足される.また,イヌワシの餌資源確保及び餌狩り場確保の点で列状間伐が有効と考えられた.人工林の伐採利用や間伐によって森林が明るくなることで,生物多様性が向上する可能性を指摘した.
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原著論文
  • 山浦 悠一, 加藤 和弘
    56 巻 (2007) 1 号 p. 9-21
    公開日: 2007/07/12
    ジャーナル フリー
    長野県中部の筑摩山地で,カラマツ人工林による広葉樹林の消失が鳥類に及ぼす影響を調査した.周囲の広葉樹林の割合が異なる広葉樹林と人工林で,越冬期と繁殖期にプロットセンサス法を用いて鳥類を調査した.Redundancy Analysisは,広葉樹林の消失に伴った広葉樹林内の鳥類群集の変動は小さいことを示した.広葉樹林内の繁殖期の常緑針葉樹選好者は,広葉樹林の消失に伴って出現頻度が減少していたが,樹冠探索者の出現頻度は広葉樹林の消失に伴って増加していた.Hierarchical partitioningは,広葉樹林の消失に伴う常緑針葉樹選好者の減少は,広葉樹林の消失自体よりもむしろ広葉樹林の消失に伴う広葉樹林内のウラジロモミ・コメツガの減少によって引き起こされていることを示した.また,人工林に出現しにくい種ほど,広葉樹林の消失に伴って減少する傾向が強いことが明らかになった.本研究の結果から,カラマツ人工林による広葉樹林の消失は強度に進行しない限りは鳥類に及ぼす影響は大きくはないことが明らかになった.また,生息地の消失によって減少しやすい種は,生息地の改変と生息地の置き換えによって失われる資源に依存している種である可能性が示唆された.したがって,生息地の消失に伴った種の減少を抑制・回復させるための手段として,生息地の改変によって減少してしまった残存生息地内の資源の回復,マトリックスへの資源の導入が挙げられた.
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  • 堀江 玲子, 遠藤 孝一, 野中 純, 尾崎 研一
    56 巻 (2007) 1 号 p. 22-32
    公開日: 2007/07/12
    ジャーナル フリー
    栃木県において,ラジオテレメトリー法を用いてオオタカAccipiter gentilisの雄成鳥の繁殖期(6~8月)と非繁殖期(10~12月)の行動圏を調べた.14個体の繁殖期の平均行動圏面積は最外郭法100%多角形による推定で1,052 ha,95%固定カーネル法で899 haであった.行動圏面積は解析期間前半に比べて後半に有意に増加した.14個体中4個体で,観察点から巣までの距離と調査日の間に有意な正の相関があった.これらの個体では,解析期間後半に幼鳥への給餌頻度が減少し,巣から離れた場所でも採餌を行うようになった結果,行動圏面積が増加したと考えられる.6個体の非繁殖期の平均行動圏面積は最外郭法100%多角形による推定で2,609 ha,95%固定カーネル法で1,678 haであった.非繁殖期にも主に繁殖期の行動圏を継続して利用したが,その一方で巣から離れた地点も利用したため,平均行動圏面積は繁殖期の1.9倍となった.本調査地の行動圏は繁殖期,非繁殖期ともにヨーロッパや北米での報告よりも小さかったが,繁殖期と比べて非繁殖期の行動圏が特に小さかった.雄成鳥は繁殖期の行動圏を通年利用するため,繁殖期の行動圏はオオタカの保全上,重要な地域と考えられる.しかし,非繁殖期の行動圏内に冬期の重要な餌動物や採餌環境が存在するなら,非繁殖期の行動圏の保全も考慮するべきであろう.
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  • 坪井 潤一, 桐生 透
    56 巻 (2007) 1 号 p. 33-39
    公開日: 2007/07/12
    ジャーナル フリー
    魚類への食害など人間との軋轢が顕在化しているカワウPhalacrocorax carboの被害防除を目的とし,3年間にわたり山梨県下曽根コロニーにおいて擬卵置き換えによる繁殖抑制を行った.擬卵には鶏卵および石膏製のものを用いたが,置き換えを行ったすべての巣で親鳥が擬卵を抱卵した.置き換えを行った巣での一巣あたりの巣立ち雛数は,置き換えを行っていない巣よりもはるかに少なく,繁殖抑制効果が認められた.特に2006年はコロニー内のほとんどすべての巣で産み足し卵についても置き換えを行った結果,194巣からわずか12羽の雛しか巣立たなかった.営巣数が年々増加したものの,コロニー全体の巣立ち雛数は2004年をピークに減少したため,擬卵置き換えは雛数抑制に有効であることが示された.しかし,雛の加入が制限されているにもかかわらず,個体数の減少傾向はみられなかった.そのため,擬卵置き換えは,個体数抑制ではなく,雛数抑制による食害防除を短期的な目標として実施されるべきである.
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  • 溝田 智俊, 嶋田 哲郎
    56 巻 (2007) 1 号 p. 40-50
    公開日: 2007/07/12
    ジャーナル フリー
    日本列島には秋の終わりから早春にかけて,2種の長距離移動性のガン類が越冬と中継のために飛来する.南北に長い日本列島内で,代表的な越冬地および中継地8地点について,主要な餌資源植物の同定および窒素含量を時系列で解析した.日本におけるガン類の餌資源は,人為起源の農作物の収穫落ちこぼれ(稲落ちモミ,大豆種子,トウモロコシ),イネのヒコバエおよび畦の草本類に加えて,渡去直前には地域によっては麦類の若葉,水田の雑草類であった.これらの越冬地および中継地における餌資源植物の窒素含量は,とくに越冬後期と中継地において顕著に増大する傾向が見いだされた.餌植物に含まれる窒素の含量は,既往に北極圏ツンドラ繁殖地で報告されている値に比較しうるほど高く,ガン類の長距離移動中の適地選択条件の一つである可能性が示唆された.長距離移動に伴った高窒素栄養摂取の生態学的な意義付けを,卵に転換する体たんぱく質の解析例および飼育実験と野外摂食によるエネルギー効率の二つの視点からの既往の資料に基づいて行なった.
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短報
  • 笠原 里恵, 加藤 和弘
    56 巻 (2007) 1 号 p. 51-57
    公開日: 2007/07/12
    ジャーナル フリー
    ヤマセミCeryle lugubrisの巣内育雛期間中の雛への給餌に対して釣り人の存在が与える影響を,2006年に千曲川中流域の2巣で調査した.うち1巣ではアユ釣りの解禁後に,もう1巣では解禁前に雛が巣立った.それぞれの巣の近くにビデオカメラを設置し,育雛の後半から巣立ち日までの親個体の給餌行動を記録した.アユ釣りの解禁後には巣の周辺の釣り人の位置と数も記録した.2つの巣での記録の比較から,アユ釣りの解禁後,釣り人の活動が盛んになると雛への給餌回数が減少する傾向が認められた.また,アユ釣りの解禁後は解禁前よりも巣に搬入された魚が小型化する傾向が見られた.以上の結果は,巣の近くの釣り人の存在がヤマセミの給餌行動を阻害することを示唆するものである.
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観察記録
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