日本鳥学会誌
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56 巻 , 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
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巻頭言
総説
  • 中村 浩志
    56 巻 (2007) 2 号 p. 93-114
    公開日: 2007/11/17
    ジャーナル フリー
    このモノグラフは,日本に生息するライチョウLagopus mutus japonicusに関するこれまでの研究からわかっていることを整理し,今後の課題について検討を加えることを目的としたものである.日本に生息するライチョウの数は,20年以上前に実施された調査から3,000羽ほどであることを示し,分布の中心から外れた孤立山塊から絶滅が起きていることを示唆した.日本の高山帯には,ハイマツが広く存在するのが特徴であり,ライチョウの生息に重要であることを示唆した.ライチョウの食性に関する知見を整理し,今後は各山岳による餌内容の違い,また食性の量的な把握が必要たされることを指摘した.高山における年間を通しての生活の実態について,これまでの知見を整理し,まためた.春先の4月から秋の終わりの11月にかけてのライチョウの体重変化を示し,ライチョウの高山での生活との関連について論じた.ミトコンドリアDNAを用いた多型解析から,近隣の亜種との関係および大陸から日本に移り棲んで以降の日本における山岳による集団の隔離と分化に関する知見をまとめた.ライチョウを取り巻くさまざまな問題点について,最近の個体数の減少,ニホンジカ,ニホンザルといった低山の野生動物の高山帯への侵入と植生の破壊,オコジョや大形猛禽類といった古くからの捕食者の他に,最近では低山から高山に侵入したキツネ,テン,カラス類,チョウゲンボウといった捕食者の増加がライチョウを脅かしている可能性,地球温暖化問題等があることを指摘した.20年以上前のライチョウのなわばりの垂直分布から,温暖化の影響を検討し,年平均気温が3°C上昇した場合には,日本のライチョウが絶滅する可能性が高いことを指摘した.これまでの低地飼育の試みを評価し,野生個体群がまだある程度存在する今の段階から,人工飼育による増殖技術を確立し,増えた個体を山に放鳥する技術を確立しておくことの必要性を指摘した.
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原著論文
  • 溝田 智俊, 佐々木 みなみ, 山中 寿朗
    56 巻 (2007) 2 号 p. 115-130
    公開日: 2007/11/17
    ジャーナル フリー
    カワウ,アオサギおよびゴイサギの営巣地下にある2地域の土壌(福島県本宮および福岡県久留米)について,窒素動態を無機態窒素含量と安定同位体比の時系列変動を指標として解析した.顕著に高い無機態窒素含量(8 g/kg乾土)が孵化と雛の成長期に見出された.巣立ちと営巣地から見られなくなった後,無機態窒素含量は急速に低下した.土壌の硝化活性は,やや冷涼な本宮営巣区にくらべて温暖な久留米営巣区で高かった.硝化と連動した脱窒過程が繁殖期後期に顕著であることが特異的に高い硝酸態窒素の同位体比から推察された.カワウは繁殖およびねぐらとして1年を通じて森林を利用するために,土壌に連続的に糞窒素が搬入される.その結果,一時的に利用するサギ類に比較してカワウ営巣区ではアンモニア生成速度が高く維持されると推定された.
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  • 内田 博, 高柳 茂, 鈴木 伸, 渡辺 孝雄, 石松 康幸, 田中 功, 青山 信, 中村 博文, 納見 正明, 中嶋 英明, 桜井 正純
    56 巻 (2007) 2 号 p. 131-140
    公開日: 2007/11/17
    ジャーナル フリー
    1994年から2003年にかけて埼玉県中央部の丘陵地帯で,20×20 km,400 km2の調査区を設定して,オオタカの生息密度,営巣環境,繁殖成績,繁殖特性などを調査した.調査地での生息密度は1996年から2003年にかけて100 km2あたり平均12.8から14.0ペアであった.調査地内の隣接最短巣間距離は平均で1.74±0.59 km(±SD,範囲0.79−3.05 km, N=37)であった.営巣樹木は214例のうち,スギが54%,アカマツ30%,モミ13%と常緑針葉樹が97%を占めた.巣の高さは平均14 m,営巣木の69%の高さにあり,胸高直径は平均41 cmであった.巣は林縁から平均68 m,人家から155 m,道路から100 mの距離にあり,人の生活圏に接近していた.繁殖成功率は平均72%で,年により53~87%まで変動があった.巣立った雛は,産卵以降の全巣を対象にした場合平均1.49羽で,繁殖に成功した巣だけの場合,平均2.06羽であった.巣は前年繁殖に使用して,翌年も再使用したものが61%であった.また,9年間も同じ巣を使っているペアもいた.巣場所の再使用率は繁殖に成功した場合65%で,失敗すると50%だった.繁殖に失敗した67例の理由のほとんどは不明(61%)であったが,判明した原因は,密猟3例,人為的妨害4例,巣の落下4例,カラスなどの捕食5例,卵が孵化しなかったもの4例,枝が折れて巣を覆った1例,片親が死亡4例,近くで工事が行われたもの1例などであった.また,繁殖失敗理由が人為的か,自然由来のものであるかで,翌年の巣が移動した距離には有意差があり,人為的であればより遠くへ巣場所は移動した.
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  • 飯田 知彦, 飯田 繁, 毛利 孝之, 井上 晋
    56 巻 (2007) 2 号 p. 141-156
    公開日: 2007/11/17
    ジャーナル フリー
    西中国山地に生息するクマタカの繁殖成功率は,国内他地域と同様に,近年急激に低下している.本地域の1981~2005年の長期の調査データを用い,選出した3つがいで繁殖成功率と推定行動圏内の植生構成との関係を分析した.代表的な餌動物の生息状況,巣への直接的な人為的影響,繁殖個体群の高齢化,気象条件,営巣環境の悪化が繁殖成功率に及ぼす影響も同時に分析した.行動圏内の10種類の植生のうち,面積から繁殖に影響を与える植生は5年生以下・10年生以下の幼令植林地,10年生以上の成長した植林地,アカマツ,広葉樹林の5種類と考えられた.1つがい(A)の行動圏では,クマタカの採餌に適した利用可能な植生の5年生以下・10年生以下の幼令植林地の面積は1980~1990年に21.8%減少し,逆に利用困難な植生の10年生以上の成長した植林地の面積は25.0%増加した.そして1990年代に利用可能な植生面積が利用困難な植生面積を下回ると繁殖に成功しなくなった.以上のことから,近年のクマタカの繁殖成功率の顕著な低下は,利用可能な植生構成である森林の減少と利用困難な植生構成である森林の増加が主要な原因と考えられる.餌動物の調査結果と繁殖成功率から,利用困難な植生である成長した植林地も,適切に間伐や枝打ち等が行われれば,ある程度クマタカが利用可能なことが示唆された.繁殖成功率の向上のためには,餌動物が多く生息する広葉樹林の面積を多く確保することと,適切な林業が行われることを含め,利用可能な植生面積が行動圏内の植生面積の50%以上,少なくとも400 haを下回らないことを目標に採餌適地の維持造成あるいは森林管理が必要と思われる.
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短報
  • 青山 真人, 祝 暁波, 塚原 直樹, 渡邊 潤, 杉田 昭栄
    56 巻 (2007) 2 号 p. 157-162
    公開日: 2007/11/17
    ジャーナル フリー
    2003年10月から2004年9月の期間,関東地方におけるハシブトガラスC. macrorhynchosの生殖腺(精巣と卵巣)の形態の季節変動を検討した.ワナで捕獲したハシブトガラスについて,成鳥(雄50羽,雌32羽)と幼鳥(雄66羽,雌34羽)に分けて解析を行った.成鳥では,4~5月には精巣重量,卵巣重量,最大卵胞直径ともに他の時期に比較して増加しており,時期により有意に異なっていた.一方,幼鳥は,成鳥のように発達した卵胞を持つ個体はみられなかったので,繁殖を行うには至っていないと考えられた.しかし,幼鳥においても4~5月には精巣重量,卵巣重量,最大卵胞直径ともに増加しており,例えば日長変化などの,繁殖期の到来を伝える外部刺激に反応はしているものと考えられた.
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  • 塚原 直樹, 小池 雄一郎, 青山 真人, 杉田 昭栄
    56 巻 (2007) 2 号 p. 163-169
    公開日: 2007/11/17
    ジャーナル フリー
    鳥類において,発声器官の形態の違いは,鳴き声に含まれる周波数成分の違いを生む.ハシボソガラスCorvus coroneとハシブトガラスC. macrorhynchosの鳴き声は異なるため,発声器官の形態も異なっていると考えられる.そこで本研究では,ハシボソガラスとハシブトガラスにおける鳴き声の音響的性質と発声器官の形態を比較した.その結果,ハシボソガラスの鳴き声の最大振幅点における最大音圧周波数,最高周波数が,ハシブトガラスに比べ有意に高い値を示した.また,ハシボソガラスの露出嘴峰長と鳴管はハシブトガラスに比べ,顕著に小さかった.発声器官が小さければ,周波数成分より高周波数域に現れるため,露出嘴峰長と鳴管の大きさの違いが両種の出現周波数域の違いを生んだと考えられる.
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  • 松本 経, 風間 健太郎, 佐藤 克文, 岡 奈理子
    56 巻 (2007) 2 号 p. 170-175
    公開日: 2007/11/17
    ジャーナル フリー
    集団繁殖する海鳥の営巣数および繁殖個体数はこれまで2 次元面積を用いて推定されることが一般的であった.起伏に富む繁殖地に営巣する海鳥種や個体群では,この方法では巣の分布面積が過少評価され,推定数が実態より少なく見積もられることが懸念される.本報告は岩手県三貫島で実地調査したオオミズナギドリの植生タイプ別の巣数と繁殖個体数を,地理情報システム(GIS) を用いて標高を反映した3 次元面積で求め,2 次元面積で算出した結果と比較した.その結果,3 次元で求めた植生帯面積は2 次元で求めた面積の1.3倍になり,三貫島の地形,植生,地質条件下において,3 次元面積法による総推定巣数は,2 次元面積法の1.2 倍となった.3 次元面積法で得られた三貫島のオオミズナギドリ繁殖個体群の規模は,巣穴数約101,000 巣,巣立ち雛(巣数)約41,000羽(巣),および孵化時の繁殖個体数は約109,000羽と推定された.三陸沿岸の島嶼では,同所繁殖する小型ウミツバメ類がオオミズナギドリの営巣活動で減少する事例が指摘されており,三陸沿岸でオオミズナギドリが最も多く繁殖する三貫島でもウミツバメ類(特に絶滅危惧種ヒメクロウミツバメ)に対する競争排除が憂慮された.
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観察記録
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