日本鳥学会誌
検索
OR
閲覧
検索
61 巻 , 2 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
    • |<
    • <
    • 1
    • >
    • >|
特集:鳥の種分化と種分類
総説
  • 西海 功
    61 巻 (2012) 2 号 p. 223-237
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
     日本鳥類目録第6版は種分類に関して併合主義的傾向が強く世界的な傾向との不一致が目立つようになり,国際的な活動やデータベースの利用において支障が生じている.第7版への改訂に際して,DNAバーコーディングの現状をまとめ,そこから最近分かってきた日本と東アジアの鳥の特徴について述べ,鳥類における種概念と種ランクの割り当て方についての世界的動向をまとめることで,今後の日本の鳥の種分類研究の重要性について述べた.DNAバーコーディングはDNAの一領域(動物ではミトコンドリアDNA COI領域)の塩基配列から種を同定するプロジェクトであり,配列データや証拠標本データなどを登録してデータベースの作成が進んでいる.世界の約40%の鳥類種,日本の繁殖種の約96%が登録された.新大陸での研究では遺伝的に極めて近い近縁種もいくらかいることがわかったが,2~2.5%の分岐が種を分ける目安になることが示唆されている.2~2.5%の分岐の目安は韓国やスカンジナビアなどでも多くの種が当てはまることがわかった.ロシア・モンゴル周辺地域の研究では8.3%もの種で2%を越える大きな分岐が種内に見つかった.日本の繁殖種のうち230種について旧北区東部のデータも含めて分析したところ,種内変異が2%よりも大きい例が32種(14%),種間が2%よりも近い例が33種にものぼることがわかった.氷河期に氷河の発達が弱く,集団の絶滅が少なかったことと日本列島での急速な周縁的種分化の影響が考えられる.種分類は単にDNAバーコード配列を基礎にしてはできないが,バーコードでの概略的調査はさらに生物学的調査が必要な種を見つけ出す良い方法となる.現代の種概念は統合性(不可逆性)を重視する種概念と識別可能性(または単系統性)を重視する種概念に大別される.両者は非和解的と考えられてきたが和解的に統合させる試みがなされている.一般的メタ個体群系譜概念や包括的生物学的種概念がそれであり,本質的な種の認識に近づいていると評価できる.それでも目録の作成などの際に実際に種ランクを割り当てるにはガイドラインが必要であり,イギリス鳥学会のガイドラインは鳥の種分類に現実的な提案をおこなっている.生物の種分類をおこなうには,DNAだけではなく,形態,生態,行動,生理など様々な生物の側面からみた生物学諸分野の具体的成果として総合的になされる必要があると私も考える.日本の鳥の分類について責任をもつ唯一の団体として日本鳥学会の真価が今後ますます問われていくことになるだろう.
    抄録全体を表示
  • 長谷川 理
    61 巻 (2012) 2 号 p. 238-255
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
     種間交雑や遺伝子浸透という事象は,進化研究においてこれまであまり重視されてこなかった.新しい系統群が生じるのは,祖先集団が二つに分岐する過程が主であり,一旦分化を始めた二集団が再び融合するような現象は例外的に扱われてきたためである.しかし近年の分子生物学的手法の発展,とりわけミトコンドリアDNAに限らず様々な核DNAの遺伝子領域が分析対象となってきたことにより,生物集団間に生じる交雑や遺伝子浸透の重要性が再評価されている.本稿は,鳥類を対象にした最近の研究事例について,集団間に種間交雑や遺伝子浸透が生じた際に,(1)二系統の分化の程度が拡大する場合,(2)二系統が一つに融合する場合,(3)交雑により新たな系統が形成される場合,(4)系統が維持されつつ遺伝子浸透が生じる場合に分けて紹介し,鳥類の進化や保全における種間交雑や遺伝子浸透の重要性を概説する.
    抄録全体を表示
  • 山崎 剛史
    61 巻 (2012) 2 号 p. 256-262
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
     鳥類の種分化を加速する要因,減速する要因が概観され,議論が行われた.最近行われた実証的研究によると,鳥類の系統間に見られる種数の変異が単純に偶然によるという説は支持されない.鳥類の一部の科や小目では種数がとても多くなっているが,それには大きな脳,行動の柔軟性,採餌行動におけるジェネラリスト的傾向,強い性選択,高い突然変異率などの内的な生物学的要因が有意に影響している.鳥類学者の多くは遺伝子流動が種分化を厳しく制限する要因だと考えているが,最近の理論的,実証的研究の中には,遺伝子流動下の種分化が以前に思われていたよりも起こりやすいイベントであること,そしてそれが鳥類において実際に起きたことを示唆するものがある.
    抄録全体を表示
  • 江田 真毅, 樋口 広芳
    61 巻 (2012) 2 号 p. 263-272
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
     アホウドリPhoebastria albatrusは北太平洋西部の2つの島嶼域で繁殖する危急種の海鳥である.2006~2007年度の繁殖期の個体数は約2,360羽で,約80%の個体が伊豆諸島の鳥島で,残りの約20%が尖閣諸島の南小島と北小島で繁殖する.本種は暗黙のうちに1つの保全・管理ユニットとみなされており,国際的な保護管理プロジェクトでもその集団構造には関心が払われてこなかった.しかし,これまでの研究から,約1,000年前のアホウドリに遺伝的に大きく離れた2つの集団があったことが明らかになった.19世紀後半以降の繁殖地での乱獲によって個体数と繁殖地数が大きく減少した一方,2つの集団の子孫はそれぞれ主に鳥島と尖閣諸島で繁殖していることが示唆された.現在鳥島では両集団に由来する個体が同所的に繁殖しているものの,鳥島で両集団が交雑しているのかはよくわかっていない.鳥島と尖閣諸島に生息する個体群はミトコンドリアDNAのハプロタイプ頻度が明らかに異なっていることから,それぞれの個体群は異なる管理の単位(MU)とみなしうる.尖閣諸島から鳥島への分散傾向は繁殖地での過狩猟によって強まった可能性も考えられるため,それぞれのMUの独自性の保持を念頭に置いた保護・管理が望まれる.アホウドリの2つのクレード間の遺伝的距離はアホウドリ科の姉妹種間より大きく,また断片的ながら鳥島と尖閣諸島に由来する個体では形態上・生態上の違いが指摘されている.今後,尖閣諸島と鳥島で繁殖する個体の生態や行動の詳細な比較観察と遺伝的解析から,この種の分類を再検討する必要がある.
    抄録全体を表示
原著論文
  • 出口 智広, 吉安 京子, 尾崎 清明
    61 巻 (2012) 2 号 p. 273-282
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
     地球規模の気候変動が鳥類の渡り・繁殖に及ぼす影響の有無は,ヨーロッパや北米に生息する種について数多く報告されているが,アジアにおける報告は著しく乏しい.本研究では,大規模な気候変動が生じたこの50年の間に,日本に訪れるツバメの渡り時期,繁殖時期,繁殖成績が変化したかどうかを検討するため,1961~1971年の11年間(以下,1960年代)と,2000~2010年の11年間(以下,2000年代)の標識調査データを比較解析した.日別放鳥数の頻度分布において,成鳥の急増時期は2000年代の方が半月ほど早まったが,急減時期は変わっていなかった.幼鳥については,2000年代と1960年代の頻度分布はほぼ一致した.巣内雛については,急増時期が2000年代の方が半月ほど早まっていた.成鳥に対する幼鳥の放鳥数の比率は2000年代の方がやや減少していた.これらの結果は,ツバメの飛来時期・繁殖開始時期は2000年代の方が早まったが,渡去時期は両期間で変わっておらず,また繁殖成績は2000年代の方が低下したことを示唆している.飛来時期と繁殖開始時期については,調査環境や調査時期の影響も考えられるが,多くの既有の知見と一致することから,比較結果にはある程度の妥当性が判断された.一方,渡去時期や繁殖成績については,国土スケールの長期変動解析に有効な情報が他に乏しく,標識調査情報が重要なデータになると言える.
    抄録全体を表示
短報
  • 渡辺 朝一
    61 巻 (2012) 2 号 p. 283-288
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
     茨城県菅生沼のマコモ群落で,1998年から2004年にかけ,越冬するコハクチョウ群によるマコモ地下茎への採食圧が,翌夏のマコモ群落地上部の成長に与える影響を調査した.調査開始以前まで,コハクチョウの採食圧が加わり,マコモ地上部が旺盛に成長していたマコモ群落の一部を実験区とし,コハクチョウの渡来期にネットを張り,コハクチョウの採食圧がマコモの地下茎に及ばないようにした.翌秋期に,実験区の内外に1 m×1 mの方形枠を複数設定し,マコモ群落地上部の刈り取りを行ない,マコモ地上部乾重量の推移を記録した.コハクチョウの採食を妨害後,2年目から,マコモが旺盛に成長していた実験区内の地上部現存量は少なくなり,実験区外のそれと比較して小さくなった.このことから,冬期のコハクチョウのマコモ地下茎への採食圧は,翌成長期のマコモ地上部の成長に正の影響を与えていることが示唆された.
    抄録全体を表示
  • 石川 正道, 浜口 寛, 小西 恭子, 藤田 一作, 大鹿 裕幸, 川上 和人
    61 巻 (2012) 2 号 p. 289-295
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
     愛知県西三河山地において,2009~2010年の繁殖期に26ヶ所のミゾゴイの巣を確認した.巣は全て広葉樹の生木で確認され,樹高は平均16.5 m,架巣高は平均10.6 mであった.巣の周辺環境としては,針広混交林および針葉樹林がほとんどであったことから,ミゾゴイは広葉樹を積極的に利用していると考えられた.また,営巣樹全体の4割以上がサクラ類での営巣であった.サクラ類の密度はそれほど高くないものの,太い横枝が張り出すことで営巣しやすい条件を持つと考えられた.営巣地形条件では谷底又は斜面下部でのみ巣が確認され,尾根部での営巣はなかった.ミゾゴイの営巣には,谷地形の内部に位置し,巣の支持に適した横枝が十分に発達した広葉樹が生育する森林が適していることが示唆された.
    抄録全体を表示
観察記録
    • |<
    • <
    • 1
    • >
    • >|
feedback
Top