和歌山県中部の河川において,コガモの採食行動を観察し,個体数および水位との関係を明らかにした.コガモの個体数の推移は,10-11月と3-4月にピークを示す二峰型であった.また,最も多く見られた採食行動は,4-17 cmの水深で嘴から首までを水面下にして採食する行動であった.しかし,個体数がピークとなる時期には,陸上や24 cm以深で採食を行う個体が見られた.採食行動の多様度指数
H’と個体数を比較すると,コガモの個体数が少ない時期は,多い時期より採食行動の
H’が低い傾向が見られた.このことから,コガモは個体数の増加によって,通常は採食を行わない場所や方法で採食するようになることが示唆された.一方,採食行動の
H’と水位のそれぞれの変動係数の間には有意な相関は認められなかった.これは,水位の上昇が降雨後の短い期間に限られるため,個体数に比べて変動が安定していたことに起因するものと考えられた.以上のことから,コガモの採食行動は,嘴から首を水に浸けて水深4-17 cmで採食する行動が主体であるものの,個体数の増加に伴い,逆立ちや潜水によるより深い場所での採食や陸上での採食を行うようになり,採食行動が多様化することが示された.
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