日本鳥学会誌
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最新号
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総説(黒田賞)
  • 三上 修
    2019 年 68 巻 1 号 p. 1-18
    発行日: 2019/04/23
    公開日: 2019/05/14
    ジャーナル オープンアクセス

    スズメ,ツバメをはじめとして,さまざまな鳥類が人工構造物に営巣をしている.これまで,この現象は,何か奇異な現象として捉えられることが多かった.しかし,都市の拡大とともに人工構造物の数は増加しており,都市において,鳥類が人工構造物に営巣することは,すでに日常的な景色となっている.そこで本稿では,日本において,どの種がどのような人工構造物を使って営巣しているかをまとめ,その上で,鳥が人工構造物に営巣していることを,どのような視点でとらえることができるか検討をした.鳥が人工構造物に営巣することは,ヒトと鳥との相互作用として捉えることができ,特に,ヒトの文化がどのように鳥類に影響を与えているか,と考えることができる.また,現代の都市の鳥類多様性は,人工構造物にかなりの部分,依拠している可能性も考えられる.鳥類が人工構造物を営巣することで,停電などヒトとの軋轢も生む.鳥類が人工構造物に営巣することで,ヒト,鳥類,それぞれにとって生じる利点と不利点を明らかにしつつ,それに対して人々がどのような価値観をもつのか,どのように対応していくべきなのか,総合的に考えていく必要がある.

原著論文
  • 井上 遠, 松本 麻依, 吉田 丈人, 鷲谷 いづみ
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 68 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2019/04/23
    公開日: 2019/05/14
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,二次林を含めた森林面積が島の約80%を占める奄美大島において,準絶滅危惧種に指定されているリュウキュウコノハズクの巣立ちビナのルートセンサスを,繁殖期(2017年6月27日–7月25日)に行なった.奄美大島のほぼ全域の合計58地点において98羽の巣立ちビナが確認され,うち13地点では複数回巣立ちビナが確認された.巣立ちビナ確認地点(53地点)と,確認地点と同頻度になるように各センサスルート上に無作為に設定した未確認地点(54地点)について,森林植生タイプ別の面積(常緑広葉樹林,常緑広葉樹二次林,常緑針葉樹林,落葉広葉樹二次林),開放地面積,林縁長,市街地までの距離,標高を説明変数として,一般化線形混合モデルを作成した.その結果,巣立ちビナの確認/未確認に対して常緑広葉樹林面積が正の効果を及ぼしていることが示された.今では限られた面積でしか存在しない成熟した亜熱帯常緑広葉樹林は,樹洞を有する大径木が多く存在し,本種の重要な営巣場所や繁殖場所となっている可能性が示唆された.

  • 塚本 祥太, 西沢 文吾, 佐藤 文男, 富田 直樹, 綿貫 豊
    2019 年 68 巻 1 号 p. 29-41
    発行日: 2019/04/23
    公開日: 2019/05/14
    ジャーナル 認証あり

    バイオロギング手法は海上での外洋性の海鳥の行動を連続記録する唯一の方法である.ミズナギドリ目の海鳥の多くは海表面で採食するため,移動速度をつかってその着水・採食が判定されてきたが,精度の検証はおこなわれていない.本研究は,鳥島で育雛中のクロアシアホウドリ2個体,計213時間の採食トリップ中の移動速度をGPSロガーで,首の角度と卓越周期の振幅を加速度ロガーで測り,着水と採食の判定を行った.また,日中,カメラロガーで1–2分おきに得た静止画像を使って,これらの精度を検証した.着水と判定された画像(真の着水)のうち速度でも着水と判定された割合は69–87%だったが,首の加速度では100%に上がった.イカと思われる大型の餌生物を食べたと判定された画像を含む一連の着水(真の採食)が10回あった個体では,うち8回が首の加速度からも採食と判定された.もう一個体は真データが2回しかなく,加速度からの採食判定の信頼性は低かった.加速度から着水バウト(一連の着水行動)と採食を判定して分析したところ,採食を伴う着水バウト長(6.9–16.9分)は採食を伴わない場合(3.4–8.0分)より長く,採食を伴う着水バウトは昼によく見られたが(0.4/h),薄明薄暮では時々(0.2/h),夜にはまれに(0.1/h)観察された.本研究は,個体数が少なく日中の真データしかないという不確実性があることに注意しなければいけないが,首の加速度測定により,クロアシアホウドリの着水と採食行動が検出できる可能性を示した.この手法によって大型の表面採食性海鳥種の採食生態の理解を深めることができることが示唆された.

  • 荒 奏美, 三上 かつら, 三上 修
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 68 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 2019/04/23
    公開日: 2019/05/14
    ジャーナル 認証あり

    ハシボソガラスは,硬い殻に包まれたオニグルミの種子を食べるために,しばしば車に轢かせて割る.この行動は,車という人間の作り出した道具を利用する点で興味深い行動である.しかし,これに関する研究は1990年代に仙台市で研究されて以来行われていない.そこで本研究では,2016年の10–12月に函館市内において,この行動の観察を行い,仙台市で観察された行動と比較した.その結果,仙台市で観察されたクルミ割り行動とはいくつかの違いが見られた.特に大きな違いは設置方法についてであった.仙台では信号に止まった車の前にクルミを置く行動が観察されていた.これはクルミを割るには効率的な方法と思われる.しかし本研究の観察では,ハシボソガラスは電線などの高い所からクルミを落として設置していた.函館市におけるハシボソガラスのクルミ割り行動は仙台市の事例に比較するとまだ効率化が進んでいないと推測された.この違いをもたらす要因として,環境条件およびクルミの状態の違いなどが考えられた.

  • 柏木 敦士, 笠原 里恵, 高橋 雅雄, 東 信行
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 68 巻 1 号 p. 53-66
    発行日: 2019/04/23
    公開日: 2019/05/14
    ジャーナル 認証あり

    風力発電施設の建設が進められている青森県の十三湖で,この湖を春の渡りの中継地として利用するガン類とハクチョウ類の渡り状況を明らかにするために,渡り個体数,時期,飛去方向,飛去時の飛翔高度および飛翔軌跡について調査を行った.建設に係る整地実施前の2013年–2016年に行った調査から,ガン類では毎年35,000以上,多い年では115,000を超える個体が,ハクチョウ類では毎年3,000以上,多い年では6,500を超える個体が十三湖を経由して渡っていくことが分かった.ガン類では日の出前から,ハクチョウ類では日の出後から渡りが観察され,多くの群れが十三湖南東部の水田地帯を通って東側の河川沿いに北上するか,北東方面に渡っていた.その際,建設予定の風車の回転域の高さを飛翔する群れが多かった.塒と採食場所の移動では十三湖東部から南部にかけての水田一帯で飛翔頻度が高く,その飛翔高度は回転域の高さもしくはそれ以下の高さがほとんどであった.以上の結果から風力発電施設建設後にガン類やハクチョウ類が受けうる影響を検討した.十三湖を利用する渡り鳥の数の莫大さと,飛翔高度がタービンの回転域と類似していたことから,まず衝突の発生が懸念される.また風車が,渡り経路上の湖南東部および塒と採食場所の移動で飛翔頻度が高い河川沿いに建設されることは,これらの種の十三湖周辺の利用頻度の減少や迂回による飛翔コストの増大を生じさせる可能性があり,建設後の検証が不可欠であると考えられる.

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