日本鳥学会誌
Online ISSN : 1881-9710
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69 巻, 2 号
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巻頭言
原著論文
  • 中村 友洋, 江口 和洋
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 69 巻 2 号 p. 197-207
    発行日: 2020/10/26
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

    2000–2001年のスダジイCastanopsis sieboldiiとアラカシQuercus glaucaの堅果成熟・落下期に,奄美大島(鹿児島県)において,ルリカケスGarrulus lidthiの堅果採食行動について調査を行った.調査ではルリカケスの堅果採食行動の観察・ルートセンサスによるスダジイ利用者の調査・成分分析(粗タンパク質,粗脂肪,タンニン)・発芽実験(緑色果,褐色果)の4点を行った.両樹種ともに樹上にある緑色果の利用頻度が高かった.成分分析の結果,未熟の緑色果は成熟した褐色果に比べて,栄養価としては同等,ないし,やや優れており,防衛物質とされるタンニン量に違いは見られず,緑色果はルリカケスの食糧資源としての価値が高いことが示唆された.ルリカケスは堅果を獲得直後に採食することはほとんどなく,大半は持ち去っており,貯食されるものと推察された.アラカシでは緑色果と褐色果の両方とも,大部分の種子が実生まで成長したが,スダジイの緑色果はほとんど発根しなかった.アラカシ利用の観察頻度は高く,スダジイの利用は少ない傾向が見られた.ルリカケスは,アラカシの種子散布者として機能しているが,スダジイにおいては低いことが示唆された.

  • 小林 さやか, 加藤 克
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 69 巻 2 号 p. 209-221
    発行日: 2020/10/26
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

    山階鳥研に所蔵される東京帝室博物館旧蔵鳥類標本群(帝室博物館コレクション)は,明治から大正期にかけて2つの国立博物館によって収集された重要な標本群であるが,採集情報の不明確な標本が多く,研究に利用しにくいという課題がある.本研究では帝室博物館コレクションの中に存在するオーストラリア博物館由来標本に注目し,各標本に担保された採集情報を付与することを最終目的に,標本の歴史的経緯について検討した.その結果,オーストラリア博物館由来標本は,1888年に東京教育博物館に送られた195点と,1893年に帝国博物館に送られた134点の計329点で構成されていた.うち326点(99.1%)が山階鳥研に所蔵され,19世紀にオーストラリア博物館から送られた標本のほとんどが現存していたことが判明した.また,本研究では標本の歴史的経緯の検討の過程で,各標本の採集情報を担保する資料が見出された.これにより,オーストラリア博物館に由来する各標本の採集情報の復元を可能とした.

  • 溝田 浩美, 布野 隆之, 大谷 剛
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 69 巻 2 号 p. 223-234
    発行日: 2020/10/26
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

    アオバズクNinox scutulata japonicaは,育雛期間を通じてコウチュウ目を主に給餌することに加え,育雛初期にはチョウ目を高頻度に給餌する.しかしながら,夜行性であるアオバズクの生態調査は困難であるため,育雛期中における給餌様式の変化をもたらす要因は解明されていない.そこで本研究は,アオバズクの餌の種類とその給餌頻度を調べると共に,営巣林内における餌昆虫類の生息数を調査し,餌条件がアオバズクの給餌様式に与える影響を検討した.また,アオバズクがヒナに与える昆虫類の体部位を明らかにし,それを踏まえて本種の給餌生態の特徴を考察した.育雛初期から中期において,アオバズクは優占種でなかったチョウ目を主に給餌した.その一方,育雛後期には,アオバズクは営巣環境中に優占したコウチュウ目を高頻度にヒナに与えていた.以上より,アオバズクは育雛初期から中期に,生息数の少なかったチョウ目を選択的に給餌するのに対し,育雛後期には,営巣環境中に優占するコウチュウ目を頻度依存的にヒナに与えることが示唆された.また,アオバズクは,育雛期間を通して,チョウ目の頭部,胸部,腹部,およびコウチュウ目の腹部を給餌しており,消化器官が未発達なヒナに柔軟な外骨格のみを選択的に与えていると推察された.今後は,アオバズクの消化器官の発達過程を詳細に調査し,ヒナの成長に応じたアオバズクの特異的な給餌生態を生理学的に理解する必要がある.

短報
  • 大山 ひかり, 斉藤 真衣, 三上 かつら, 三上 修
    原稿種別: 短報
    2020 年 69 巻 2 号 p. 235-239
    発行日: 2020/10/26
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

    積雪時に視認性を高めるために道路上に設置された固定式視線誘導柱に,鳥類が営巣することが知られている.しかし詳しい調査記録はない.そこで本研究では,2019年6月に北海道七飯町の湖沼「大沼」を囲む道路の固定式視線誘導柱において,営巣している種と巣の数を調査した.調査した218本中89本に穴が空いており,89本のうち14本で餌運びまたはヒナの鳴き声が聞こえ,10本で営巣していると推測される出入りがあった.確認された種は,スズメPasser montanus,ニュウナイスズメP. rutilans,コムクドリAgropsar philippensisの3種であった.

観察記録
その他
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