1959年の夏,巣箱を利用する鳥のヒナに与える食物を記録する自動写真装置を試作した。実験は1番のシジュウカラ(
Parus major)について,東京大学富士演習林(山梨県)内のカラマツ林中で行った。本報告は装置の記載および数枚の写真記録をかかげるにとどめ,全記録(数千枚)の分析結果は,別文(準備中)で述べる予定である。
装置のメカニズム(回路図を含む)を第一図に示す。巣箱の後側に1コマ撮影のできる16ミリ•シネカメラを置き,巣箱の後壁に設けられたガラス窓をとおして巣穴に首を差し入れた鳥を正面から撮影する。カメラの後にとりつけられたストロボは,シャッターが全開した瞬間に光を発し,その光は白紙で内張りされた巣箱の屋根裏に反射して鳥を照す。シャッターは電磁石(E
1)によって切られる。巣箱の入口には2組の接点付トマリ木がとりつけられており,鳥が外側のトマリ木にとまると電磁石(E
2)が鉄のうで(A)をひきつけ,銀板(Sp)に接続する。次に鳥が中に入り内側のトマリ木にとまると,ソレノイド(St)の鉄芯が接点(C
1)を押し,(C
2)に接触させる。そこでE
1の回路(100V A. C.を使用)が閉じ,シャッターが切られる。一方,同時に,内側トマリ木の接点は電磁石(E
3)に接続しているので,E
3はAをひきつけ,Stの回路はただちに切断される。このようにすれば鳥が外から中に入る時,ただ1回だけ,露出が行われることになり,鳥が外へ出る時やまた内側トマリ木の上でとびはねるたびに露出が行われるのを防ぐ。従って鳥が一度外に出て外側トマリ木を押し再びAをSpと接触させない限り次の撮影は行われない。これによってフィルムの無駄とシャッター装置の過荷重を防ぐことができる。
Plate9に示した参考写真は16ミリ反転フィルムからの複製である。これだけでも食物の判定は,蛾の幼虫,成虫,クモ,カタツムリの殻程度の分類で行うことが出来るが,直接観察を併行すれば,更に細かい判定が可能である。量的な測定もまた可能である。
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