鳥類の肺•気嚢系の形態は種類により変異があるが,その実態は未知であり,特に生態との関係は未解明である.筆者はこれらを考察するための基礎的研究として,肺•気嚢系の形態について比較観察を行うものである.
本報では目本産アビ類のうち,アビ
Gavia stallata,オオハム
Gavia arctica virididgularis,シロエリオオハム
Gavia arctica pacifica についての知見を報告する.
GIER は
Gavia immer が頸気嚢を欠くことを最初に報告したが, KING は頸気嚢を欠くとの GIER の報告に疑念を示した.その後DUNCKERは
G. immer の他,
Gavia arctica,
Podiceps Cristatus,
Podiceps ruficollis も頸気嚢を欠くと報告し,アビ,カイ,ツブリ類は頸気嚢を欠くことが特徴であると述べている.筆者は
G. stellata に弱小な1対の頸気嚢が存在することを確認した.従って本種は他のアビ類と特異的である.
GIERは
G. immer の気嚢の形態が北米産鳥類中最も単純であると指摘した.筆者の知見では,アビ類は各気嚢間の交通路を欠くこと,鎖骨間気嚢以外の気嚢は憩室を全く欠くこと,含気骨を欠くこと,脊髄上気嚢を欠くことなどの諸点で他の鳥類より単純といえるが,肺•気嚢間の交通路め上では他の鳥類と大差ないことを確認した.
G.a.viridigularis は鎖骨間気嚢の回帰気管枝の交通路を有しているが,
G. a.pacificaはそれを全く欠いている.さらに腹気嚢,後胸気嚢,鎖骨問気嚢の容積の順位は両者では全く逆である.従って,両者は亜種の差異ではなく,明らかに別種であると考えられる.
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