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29 巻, 1 号
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  • III.亜高山帯
    古厩 昌幸
    1980 年 29 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1980/06/30
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    中央アルプス木曾駒ケ岳の亜高山帯の鳥相を,1978年6月から11月までの間に調査した.調査方法は,既報の高山帯,低山帯での調査(古厩,1978,1979)と同様に,ライントランセクト法を用いた.
    (1)観察された鳥類は,全部で4目14科25種であった.センサスの結果をTable1に示し,若干の種について観察状況を述べた.
    (2)数種は6月に最大値を示し,個体数は10月に最大値を示した.また種数,個体数ともに最小になるのは冬期と推測された.
    (3)さえずりが記録しやすい種について,雄のさえずりの記録数から繁殖つがい数の推定を試みた.
    (4)カラ類の混群は,8月以降のすべての調査で観察された.混群の構成種はキクイタダキが最も多く,全構成個体数の41.0%を占めた.
  • II.伊豆沼越冬ガンの採餌地の分布
    横田 義雄, 呉地 正行, 小杉 眞理子
    1980 年 29 巻 1 号 p. 7-33
    発行日: 1980/06/30
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    (1) 宮城県の伊豆沼を塒として越冬するマガンとヒシクイの採餌地の分布を,1971-78年の8年間にわたって調査した,マガンもヒシクイも水稲作付水田の刈田を採餌地としている.畑や牧場などで採餌することはきわめて稀であった.
    (2) 採餌水田は宮城県の北半にある仙北平野に限局されている.多雪の年にはガン群の南下が見られ,宮城県の南半部や福島県の北半部,さらに関東地方まで移動して採餌する.
    (3) 日本のガンの越冬地は,太平洋岸では現在伊豆沼だけである.この現状は日本のガンの減少過程の一相としてとらえることができる.明治維新以後の乱獲と環境の悪化によって,日本のガンは九州,関西,関東と南から北へ順次越冬地を失ない,伊豆沼と仙北平野は太平洋岸の最後の越冬地となっている.
    (4) 仙北平野のマガンとヒシクイの採餌水田は地理的に分かれている.マガンの採餌地は,迫川と鳴瀬川の中流より上流に近い地域で,仙北平野の西部,北部および伊豆沼周辺である.ヒシクイの採餌地は迫川と鳴瀬川の中流から下流に近い地域と吉田川流域で,仙北平野の東部,南東部および南部である.マガンとヒシクイがいりまじって採餌することは,一般に稀である.しかし,多雪時の南下の際には,両種が混合して採餌する場合が比較的しばしば見られる.
    (5) ヒシクイの採餌水田がある地域は,水田に造成される以前は沼の多い沼沢地で,マコモ(Zazania Linn.)とヒシ(Trapa Linn.)が繁茂し,特にヒシが多かったので,ヒシクイの好適な採餌地であったと思われる.そこが開田されたのちも,落穂や落籾を食物として利用でぎるので,昔の採餌地に対する伝承的固執または'traditional attachment'が現在に引ぎつがれ,マガンと異なった採餌地分布を示していると推定される.マガン採餌地分布についても同様に 'traditional attachment' が主要な要因と考えられ,伝承的食物の一つとしてマコモがあげられる.
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