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29 巻, 2-3 号
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  • 森 信也
    1980 年 29 巻 2-3 号 p. 47-68_8
    発行日: 1980/10/30
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    北海道で繁殖するオジロワシの繁殖生態を調査した.知床地方では1963年から1978年まで16年間を通じて観察を行い,根室•宗谷地方は1971年から1978年の間,また釧路地方は1978年の繁殖期(4月~9月)に現地調査を実施した.得られた結果を要約すると次のとおりである.
    (1)オジロワシの営巣地は一般に海岸近くの地域に限られる.しかし,湖沼や河川があるなど環境条件さえ満たされれば,海岸から25km離れた沿岸でも繁殖することがある.また,人家から350m程度のところに営巣したことがあり,繁殖は必ずしも人里離れたところで行われるとは限らない.
    筆者が調査した巣はすべて樹上に作られていた.外国で報告されている岩棚の巣は,北海道ではまだ発見されていない.知床半島にはオジロワシの営巣可能と思われる岩棚がみられるが,ここでも岩棚でなく森林で繁殖している.
    (2)営巣地の環境条件は,海岸に近く,付近に河川や湖沼があり,また周囲の全域が見わたせる小高い場所の森林である.
    (3)営巣地の標高は,最も低いところで5m,最も高いところで380mである.
    (4)営巣木の樹種は,メズナラ,ダケカソバ,トドマツ,アカエゾマツである.営巣木の目通り直径は,最小径20cm,最大径は128cm,平均65cmである.
    (5)巣は,外径最大183cm,最小91cm,平均134×110cmの短だ円形である.巣の内径は最大120cm,最小65cm,平均89×83cm,厚さは最大202cm,最小40cm,平均86cmであった.
    (6)地上からの巣の高さは最高25m,最低16.5mであった.
    (7)巣作りは一年を通じて行われるが,産卵期にあたる3月になるととくに活発になる.巣の補強は雄雌とも行うが,枝の積上げは主に雌が行い,巣を放棄しない限り,抱卵•育すうに関係なく時折補強される.
    (8)いったん作られた巣には強い執着を示し,風や枝折れによって大きく傾いた場合であっても,その上に新たに枝を積み,産座をつくり直して継続使用するのが通例である.
    (9)巣材は,営巣場所によって材料の占める割合いが異なるが,もっともよく使用されるのはヤチダモ,メズナラ,ダケカンバ,カツラ,ハルニレ,トドマツ,アカエゾマツなどの枝で,つたではヤマブドウ,ゴトウヅルなどが使われている.
    (10)産座にはオオスズメノテッポウ,クマイザサ,キタヨシ,ススキ,タカススキ,サルオガセ,ムギ,ダケカソバの皮,ゴドウヅルの皮および海草であるアマモ,永ソダワラなどが用いられ,ほかにトドマツの皮,根のついた牧草やクマイザサなども使われていた.
    (11)正確な産卵期は不明である.抱卵期間を37-40日とし,5月初旬のふ化から逆算すると,産卵は3月中旬となる.卵は白に近い淡い空色で,5卵の平均値は73.2×54.2mmである.重量は平均126gであった.
    (12)ふ化直後のひなの体重は110-115gで,淡灰色の綿毛でおおわれ,非常にひ弱な感じで横たわっている.ピィヨ,ピィヨまたチュリ,チュリと時々鳴く.
    (13)巣の中には常に青葉の枝がある.ひなの行動から,身をかくす,直射日光の遮蔽,体温の調節,風を防ぐなどの働きがあることが判明した.ほかにひなのペリットおよび口中に青葉が若干見られることがあったが,食べたというよりも,短枝をかんだり,えさに付着したものが口中,ひいては胃の中に入ったものであろう.
    (14)ふ化後巣立ちまでの期間70-90日間で,個体によって大きな違いがある.最も早い巣立ちは6月21日,最も遅いのは8月7日であった.巣立ち後もひなは時々巣にもどり,親鳥からさを与えられていた.
    (15)1巣2ひなの場合,親鳥がえさを何かの原因で与えずにいると,強い方のひなが弱い方を殺して食べることがある.通常後からふ化したひなが先にふ化したひなの犠牲になる.
    (16)オジロワシのえさは,1969年から1978年までの観察の結果,合計47種553個体におよび,その内訳は鳥類22種224個体(42.02%),魚類15種228個体(54.03%),哺乳類7種18個体(3.4%),その他3種3個体(3.95%)であった.地形や環境条件が異なるため,餌の比率は地方によって大きな差違がみられた.
    (17)巣立ち後は12月の冬期まで親と行動を共にするが,その後は別行動をとる.個体によっては親が次の抱卵育すう中であっても,幼鳥がテリトリー内から追い出されるとは限らない.むしろとどまっている事の方が多い.また1例であるが尾羽が白くなっても一緒に行動していることがあった.
  • 山岸 哲, 井上 良和, 米田 重玄
    1980 年 29 巻 2-3 号 p. 69-85
    発行日: 1980/10/30
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    (1)1976年8月から1977年9月まで,奈良盆地において,コサギとアマサギの集団繁殖地と塒の位置および採餌範囲を調査した.
    (2)集団繁殖地は1か所であり,コサギ(約1,200羽),アマサギ(約670羽),ゴイサギ(未調査)が利用していた.
    (3)日中,集団繁殖地から最も遠い所で発見されたコサギとアマサギはそれぞれ25.6km,27.0kmの地点であった.
    (4)採食のために日中分散するコサギとアマサギの45.7%(285羽)は,集団繁殖地から半径5km以内に分布していた.
    (5)コサギは川沿いに単独で,アマサギは耕地に群れで採食している傾向があった.
    (6)冬季にはほとんどすべてのアマサギが渡去し,コサギが残った.塒は集団繁殖地を含む6か所に分散した.
    (7)これら6か所の塒に集結するコサギの個体数は合計約1,400羽であった.
    (8)冬季(1976年11月21日-1977年1月13日)に存在した4か所の塒から半径5km以内に65.3%(810羽)のコサギが日中分散していた.
    (9)奈良盆地のコサギ•アマサギの個体数推定のしかたおよびコサギとアマサギの採食分散のしかたの違い,さらにまた冬季に塒が分散する原因について若干論議した.
  • 松岡 茂
    1980 年 29 巻 2-3 号 p. 87-90
    発行日: 1980/10/30
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    北海道大学苫小牧地方演習林の庁舎付近では,1973年以来,鳥への給餌が行われている.1976年2月2日,餌台でアトリの群が採餌していたとき,近くにいた1羽のシジュウカラが警戒声を出した.アトリは餌台近くの樹上に飛び上ったが,シジュウカラは餌台に飛び移って採餌を行った.この警戒声は,ワシタカ類等が現れないのに発声されたもので,これを"偽の警戒声"と名付けた.これ以降冬期間には,カラ類が偽の警戒声を出すのが頻繁に観察された.現在までの観察をまとめると以下のようになる.
    (1)偽の警戒声を出したのは,シジュウカラ,コガラ,ハシブトガラであった.同じ Parus 属のヤマガラ,ヒガラでは偽の警戒声を確認していない.
    (2)アトリ,スズメ,ミヤマホオジロ,カシラダカ,ベニヒワに対して,カラ類は偽の警戒声を発した.これらの鳥は,群で餌台に飛来することで共通していた.
    (3)偽の警戒声を出したカラ類は,自分では何の警戒姿勢や行動をとることはなかった.
    (4)偽の警戒声が観察されてから4年経過したが,それに反応するアトリ等に偽と本物の警戒声を区別するような行動は現れていない.
  • 樋口 広芳, 百瀬 浩
    1980 年 29 巻 2-3 号 p. 91-94
    発行日: 1980/10/30
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    伊豆諸島の三宅島でオオコノハズクの鳴き声を調査した.この鳥が出す声のうち最も普通に聞かれるのは,"クゥー"とか"クウィー"という声である.この声は雄雌ともに出し,テリトリーの防衛やつがいの雌雄間のコミユニケーションに用いられているらしい.4,5月と11月に鳴きのピークがある.ほかの声としては,ワォン,ワォンと聞こえるイヌのような声や,ミュウ,ミャウと聞こえるネコのような声がある.前者は雄が巣に近づくときに発せられる.
  • Roger B. CLAPP
    1980 年 29 巻 2-3 号 p. 95-96
    発行日: 1980/10/30
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    中部太平洋で標識した海鳥類の遠隔地への異常な移動の2例について報告する.そのひとつは,フェニックス諸島のマッキーン島から朝鮮までの約4,000海里を移動したアオツラカツオドリである.この記録は,朝鮮におけるこの種の最初の記録であり,またこの種の分布の最北記録のひとつでもある.もうひとつは,ウェーキ島と南ベトナム間約3,300海里を移動したセグロアジサシである,中部太平洋のセグロアジサシの非繁殖期の分布範囲は,明らかにフィリピン海あたりまでである,南ベトナムでのこの記録は,ほぼ間違いなく迷行例とみなされる.
  • 西貝 正彦, 平田 俊明
    1980 年 29 巻 2-3 号 p. 97-98
    発行日: 1980/10/30
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    A male Pied Wheatear Oenanthe pleschanka and a White Wagtail Motacilla alba ocularis in summer plumage were observed on Hekura I., Ishikawa Pref., on 1 May 1978. There have been only three records of the Pied Wheatear in Japan: a single bird seen in Ishikawa Pref. on 18 April 1976 and on 3 May 1977, and a male observed in Miyagi Pref. on 16 April 1978. The previous records for the White Wagtail (subspecies ocularis) are two (Yamaguchi Pref., Honshu; Danjo Is., Kyushu), but this subspecies would be of more regular occurrence in our country than the past records indicate.
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