栃木県宇都宮市の鬼怒川の河原で,1978年10月から1981年3月まで,セグロセキレイの社会行動,テリトリー,つがいの相手について調査を行った.個体識別には,色脚環を用いた.得られた結果は次のとおりである.
(1)セグロセキレイのテリトリー行動は,追いはらい,儀式的争い,とっ組合いの3つに大別された.つがい内の行動としては,雌のなだめの行動,雄の嘴あけ行動がみられた.
(2)セグロセキレイの多くは,秋冬期にもつがいで明確なテリトリーを持っていた.10月から1月の間は,テリトリーの位置,つがいの相手に大きな変化はなかった.
(3)2月にテリトリーの位置,つがいの相手に変化がみられた.11例中9例でつがいの相手を交換した.一般に,どの年も繁殖期になるとつがい数が減少した.2月上旬から3月上旬は,セグロセキレイのつがい形成時期だった.
(4)冬期,一時的に流れが干上り,川底が現われた所には,10-20羽のセグロセキレイが採食のために集まった.このような所では,テリトリー行動はみられなかった.これらの中には,他の地域でテリトリーを持っている個体も加わっていた.また,テリトリーを持たず,このような環境を渡り歩いている個体もいることがわかった.
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