日本評価研究
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4 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 村松 安子
    2004 年 4 巻 1 号 p. 4-19
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    本論文の第1の目的は、世界でも新しく、日本社会にまだ定着していない「ジェンダー予算」概念を明確にすることである。その上で、ジェンダー予算分析の中でどのような具体的な政策評価の分析ツールが開発途上であるかを提示する。次いで、この分析手法が男女共同参画社会の形成という政策評価にどのように有効に適用しうるかを、理論的・実証的に検討する。この過程で重要になるのが、通常の予算編成の基礎となるマクロ経済分析モデルの枠組みを問い直す作業である。いわゆる「生産部門」の活動と「再生部門」の活動の接合問題である。ジェンダー予算分析と通常の他の予算分析の最大の相異は2つある。第1は査定の単位が世帯であると同時に個人であること、第2は社会の「総生産」を担う重要な生産活動である無償労働による「再生部門」の活動の意義を認め、真の生産の社会的効率性を問うことである。
  • 多元的視点による政策評価の一考察
    田中 由美子
    2004 年 4 巻 1 号 p. 20-30
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    本論文の主目的は、国際協力におけるジェンダー主流化の概念を明確にし、総合的なジェンダー政策分析および評価の手法を探ることである。この分析評価手法は、我が国の国際協力および他の国際援助機関においても十分に検証されておらず、先行事例研究に基づく試みが始まったばかりである。ジェンダー主流化とは、ジェンダーと開発 (GAD) を開発の重点課題とし、ジェンダー平等を進めるための包括的取組みであり、ジェンダー平等の視点を全ての政策・施策・事業の企画立案段階から組み込んでいくことをいう。ジェンダー平等視点に立って計画・実施・モニタリング・評価を行う過程であり、政策等のジェンダー分析や男女影響評価の実施が前提となる。
  • 雑賀 葉子
    2004 年 4 巻 1 号 p. 31-41
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    男女共同参画影響調査は、政府のすべての施策について男女共同参画の視点から調査及び分析・評価を行うもので、男女共同参画社会の実現を促進するために不可欠である。調査では性別データ等を活用して実態に即した情報を把握し、男女に対する施策の効果及び波及効果あるいは意図しない効果を検討する。また、分析・評価では施策によって男女が享受できる便益に格差がある場合、男女が等しく便益を享受できるように施策の改善されるべき点を明らかにする。今後においても実践的な手法の開発が行われ、各府省及び地方公共団体において積極的に実施されることを期待する。
  • Women's Budget Group
    2004 年 4 巻 1 号 p. 42-52
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    The Women's Budget Group (WBG) in the UK is an independent organization co-chaired by the author bringing together academics and people from NGOs and trades unions to promote gender equality through appropriate economic policy. This paper is a gender-based assessment of the 2002 Pre Budget Report of the Government, in which the WBG raises recommendations on long term public spending policy, policies for productivity, public sector procurement, initiatives to improve employment opportunities, the National Minimum Wage, and basic state pension. It is pointed out that economic forecasts should allow for an increasing proportion of GDP to be devoted to spending on caring and other face-to-face services to provide quality services and decent wages. The WBG recommends that the rate of the National Minimum Wage should be raised to ensure a living wage, and that the problem of women's poverty in later life should be addressed by linking the basic state pension to earnings growth.
  • 古川 俊一, 磯崎 肇
    2004 年 4 巻 1 号 p. 53-65
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    政策の評価を行うに当たっては、基本的な原単位の数値が確定されている必要がある。生命価値はその最たるものであり、規制評価が政策評価の中で、主要なものとされているにもかかわらず、十分な研究蓄積に乏しい。本論文では、リスク工学の考えも応用し、第1に、死亡事故のリスクに対する「統計的生命価値」の推定モデルを探求する。第2に、自動車購入時に、使用者が評価しているリスクから「統計的生命価値」を推定する。第3に、その結果を現在我が国で主として用いられている逸失利益をベースとした人命の価値と比較し、費用便益分析においての取り扱いを考察する。道路建設等の分野における約3, 000万円という従来の人命の価値は、今回分析の結果示された「統計的生命価値」8~10億円や、質問法をベースにした場合の我が国における「統計的生命価値」において妥当な数値との指摘のある数億円と大きな格差がある。もし生命価値が、一桁高い評価を受けることになれば、規制政策等の評価結果が大きく変更される可能性がある。
  • 上野 宏
    2004 年 4 巻 1 号 p. 66-86
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    現在日本では政策・施策評価への関心が高まっている。問題は日本において現在、政策評価・施策評価・業績評価・行政評価・事業評価・事前評価・事後評価などといった各種の評価用語が使用されながら、それら用語の概念定義がその使用者によってそれぞれ異なる事である。更に問題なのは、それら評価概念の相互関係が非常に不明確な状態で使われていることである。これらの問題を解決するために、この論考の第1の目的は、新しい政策評価の枠組み (framework) を提言し、その中で種々の評価概念の位置付けを行うことにある。これは本稿の「政策プロセスII」でなされる。その前に、現在一般に受け入れられている政策プロセスを「政策プロセスI」としてレヴューする。「政策プロセスII」の特徴は、評価と行動決定を分離しそれらを明示的に政策プロセスの中に導入し、更に評価と行動決定との分離を全ての政策段階においてパラレルに導入したことにある。
    この論考の第2の目的は、公的予算の編成と決定に係わる。政府の活動は政策によって導かれマネージされている筈であり、現実にそのようになっているかどうかは別として、そうであるべきという事には異論はないはずである。政策は典型的には予算の執行によって実施される。逆にいえば、政策は最も典型的には立法部門 (地方自治体ではなく国レベルの場合は国会) によって決定された予算書によって代表される。この予算の編成と決定方法をなるべく目的合理的にする為に、米国は1993年に政府業績結果法 (Government Performance and Results Act of 1993, 以下GPRAと呼ぶ) を成立させた。其の結果、殆どの連邦政府機関は1999年財政年度分から開始して毎年度の施策業績報告書 (Program Performance Report) の提出を義務付けられている。この報告書は事後的な実績評価報告書である。この論考の第2の目的はGPRAの方法をもう一歩進めて、事後的な実績評価報告書を予算の編成と決定に使うべきであるという主張を支持し、その実現への手段を検討する事である。これは「政策プロセスIII」でなされる。
  • 真のマネージメントツールを目指して
    森田 祐司, 中嶋 崇
    2004 年 4 巻 1 号 p. 87-96
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    近年、効率的かつ効果的な事務事業を実施するためのツールとしての行政評価への期待が高まりつつあるが、自治体において現在導入されている行政評価の多くは、(1) 事務事業の優先度を戦略的に判定するための情報提供機能は持ち合わせておらず、また、(2) 評価 (Check) の結果を業務の改善・改革 (Action) に結びつける段階でマネジメントサイクルが断絶しているのが現状である。
    そこで、本稿においては、バランス・スコアカード (BSC) 理論を活用した自治体経営統合フレームワークの全体像を紹介すると共に、本フレームワークを活用した課題 (1) 及び (2) の解決策として、それぞれ「事務事業優先順位付け情報作成の仕組み」及び「評価結果を改革・改善に結びつけるための仕組み」を提言し、バランス・スコアカードの行政評価への適用可能性について述べている。
  • 住民満足値の導入に向けて
    中島 とみ子
    2004 年 4 巻 1 号 p. 97-111
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    本論文で考察する「コミュニケーション性」とは、筆者が提案している「政策評価指標体系」における5つの特性のうちの1つである。政策評価指標体系の特徴は、住民個人によって作られる〈住民ニーズ指標〉と、行政によって作られる〈アカウンタビリティ指標〉とをコミュニケーションツールとし、住民と行政と公共サービス支援コミュニティの3者をコミュニケーションの行為者として位置づけるところにある。
    政策評価指標体系における「コミュニケーション性」を検証するために、高崎市給食サービス回数増アンケートを事例として取り上げる。検証する主な内容は、〈住民ニーズ指標〉と〈アカウンタビリティ指標〉から導き出される「住民満足値」・「不要値」・「平均住民満足値」の算出方法、および、これらを「コミュニケーション成果指標」として、行政活動へ導入することの可能性とである。「コミュニケーション成果指標」は住民と行政とが共有することのできる情報として位置づけることができる。
  • 鎌田 徳幸
    2004 年 4 巻 1 号 p. 112-120
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    2003年4月に行われた統一地方選挙 (都道県知事選挙) 以降、マニフェスト (政策綱領・政権公約) が急速に注目を集めることとなった。そして、2003年11月に実施された衆議院議員選挙では各政党がマニフェストを掲げ、選挙に臨んでいる。
    本稿の前半では、ローカルマニフェストの内容を概観しながら、ローカルマニフェストが地方自治体のマネジメントに与えた影響を把握した。
    後半では、評価制度を「ローカルマニフェストが実現するためのマネジメントツール」ととらえ、現行制度の課題を把握した。把握された課題は次のとおりであった。
    (1) 評価結果を予算に反映させること以上に、課題や問題の原因分析に重点を置いた評価制度とする必要があること。
    (2) 実績が随時に把握できる情報を評価に活用し、マネジメントを適切に行う必要があること。
  • 明石 秀親, 三好 知明, 平林 国彦, 金川 修造, 實吉 佐知子, 千葉 靖男
    2004 年 4 巻 1 号 p. 121-130
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/09/28
    ジャーナル フリー
    開発途上国の医療施設調査では、各施設のサービス内容についての実情に即した情報は得られない場合がある。本稿では質問票を基に、ボリヴィア国サンタクルス県 (2001年4月)、カンボディア (1997-2000年)、スリランカ (2000年10月、12月) での調査経験から、医療施設の系統的、実際的なアセスメント方法について考察した。
    この結果、リフェラル構造の中で各国は異なる医療施設のレベル分類を使っており、それぞれのレベルの有する病床数、検査の種類、分娩や手術の有無なども異なることから、国情に合わせて施設を評価する必要があることが判明した。
    今回我々は、リフェラル構造 (“縦の構造” と呼ぶ) の中で比較評価する方法と、同格の医療施設 (同 “横の構造”) と比較する方法の、2つの “構造” マトリックスから医療施設を評価すると有用と考え、さらに “横の構造” の中で複数の評価内容に関し、機能の比較をすることにより、各々の施設において強化すべき点が明確になることを示した。
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