日本評価研究
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7 巻, 1 号
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  • 長尾 眞文
    2007 年 7 巻 1 号 p. 3-19
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    1998年 (平成10年) の中央教育審議会の「地方教育行政」に関する答申で、学校が地域に開かれ、信頼される組織となるように、自己評価の実施と結果の公表を提案して以来、全国的に公立学校による学校評価システムの導入が進められてきた。現在では公立小中学校による自己評価の普及率は95%を超えるまでになったが、各学校で実践に当たっている教職員の評価に関する知識はきわめて限られたものでしかない。また学校評価に関する文献は近年増加の一途を辿っているが、その多くは実践の後追い的な内容で、理論的な整理の試みは余り例がない。本稿では、学校評価の理論を学校評価の仕組み (学校評価システム) の理論と学校評価の実践 (評価手法) の理論の二層構造から成るものと捉え、日本における実践を念頭においてその枠組みを提示することを試みる。結びでは、この枠組みを実践に移していく上での課題の整理を行っている。
  • 石田 謙豪, 平 恵津子, 住元 しのぶ, 長尾 眞文
    2007 年 7 巻 1 号 p. 21-32
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    本稿は、広島県尾道市の中規模の公立小学校による学校評価の実践事例報告である。過去3年間にわたるこの事例の特徴は、校長が強いリーダーシップを発揮し、教職員を対象とする学校評価研修の充実を図りつつ、試行錯誤を重ねて、教育の質の改善と保護者・地域に対する説明責任の遂行の両面で一定の成果を挙げたことである。外部評価の充実も含めて評価結果の信頼性を担保する方法や学校の自律性を促進するためにも必要な経営面・組織面での評価の充実等の課題は残しているものの、自己評価の活用による学校改善の試みとして価値ある示唆を含む事例となっている。
  • 齋藤 貴浩, 林 隆之
    2007 年 7 巻 1 号 p. 33-46
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    大学評価・学位授与機構 (以下「機構」と記す。) は、大学評価を行う第三者評価機関であり、2000年度から2003年度まで国公立大学及び大学共同利用機関を対象に、延べ550組織に及ぶ試行的評価を実施した。評価とは、政策、施策、事業等を体系的かつ客観的に分析し、価値判断を行うことであるが、しかし、その評価自体も、各種資源を投入して評価対象並びに社会に対して何らかの変化を生じさせる事業である。つまり、評価自体も一つの事業として評価の対象となりうる。本研究では、機構が行った試行的大学評価について、ロジックダイアグラムを基に評価事業の設計と評価結果の妥当性並びにその成果について論じ、また費用効果の観点から評価事業の効率性を検討する。さらに、新たな大学評価システムの構築に活かすため、試行的評価経験と、評価の評価によって新たに得られた教訓から提言を行う。
  • 国際学力調査、学校調査、世帯調査の視点
    西村 幹子
    2007 年 7 巻 1 号 p. 47-59
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    本稿は、既存の教育評価手法が、開発途上国において有効な教育政策や教育計画の策定に繋がるためにいかなる課題を有しているかを、手法の理論的比較分析という視点から考察し、認識枠組みとしての総合的教育評価モデルを提案するものである。具体的には、教育評価についての既存の国際学力調査、学校調査、世帯調査を比較・対比させ、課題の抽出を行った。考察結果として、教育評価に使用されるデータの入手方法において、従来の国際学力調査がその対象や実施方法において低所得国への示唆を得ることが困難であること、学校調査や世帯調査も、それぞれ教育を供給する側と需要する側の片方に視点を当てることにより、教育開発に関する包括的な方策を提示するに至っていないことが確認できる。これらの課題は先進国にも共通するものであるが、開発途上国においては各種調査の結果が大きく乖離することがあり、総合の必要性は特に大きい。また、定量的なデータだけでは得られない推論 (inference) を定性的な調査から得ることも、非就学や退学などの問題に対するきめ細かい対応には不可欠となる。
  • 石田 洋子
    2007 年 7 巻 1 号 p. 61-71
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    途上国では、限られた資源で初等教育改善を進めるために、住民参加による学校建設や学校運営改善などの活動が展開されている。こうしたコミュニティの努力を、就学率向上につなげるには、住民の活動に対し、途上国政府が、教員配置や教科書配布、学校施設維持管理への技術指導などの行政サービスを提供して、教育の質を確保することが不可欠である。日本の政府開発援助 (ODA) による教育分野の技術協力では、住民参加による教育改善活動をパイロット・プロジェクトとして行い、地方分権政策下で必要な現地教育行政機関の組織強化や能力向上が図られている。これらのプロジェクトは、行政官の教育行政能力向上に重点を置き、教育開発の視点から評価されているが、住民の参加型開発を支援する行政官の能力向上にも効果があることから、参加型開発の視点からも評価され、フィードバックを参加型開発推進のための環境整備につなげることが重要と考えられる。
  • 「利害関係者が評価過程に評価主体として関わること」の意義
    源 由理子
    2007 年 7 巻 1 号 p. 73-86
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/09/28
    ジャーナル フリー
    近年、貧困削減にノンフォーマル教育の果たす役割が注目される中、ノンフォーマル教育援助ではその活動の多様性や柔軟性から評価が困難であることが課題となっている。本稿は、参加型評価がノンフォーマル教育援助を評価する際に有効に機能するという仮説のもと、その適応可能性を二つの事例を通して考察したものである。参加型評価は、「利害関係者が評価活動に関わる評価」であり評価過程に関わることにより及ぼす影響が多々ある。考察の結果、(1) 利害関係者間の「対話」を通して、態度・行動変容といった質的側面の指標化が可能になること、(2) 参加型評価の形成的な機能はより適切な提言策定とその活用に繋がる可能性が高いこと、(3) 関係者が評価の一連の過程に関わることにより評価能力向上を含めたマネジメント能力の向上、ひいては組織強化に繋がる可能性があること、が示唆された。他方、参加することへのインセンティブ、中立性の確保、実施体制、評価専門家の資質などに関連する課題もある。本研究の示唆を踏まえ、更なる実践の積み上げを通して手法の検証を行う必要がある。
  • ホンジュラス及びベトナムのEFA-FTIの事例から
    三輪 徳子
    2007 年 7 巻 1 号 p. 87-103
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    近年、初等教育分野ではプログラム・ベースド・アプローチ (PBA) による援助が活発化している。本研究では、ホンジュラスとベトナムの「万人のための教育-ファスト・トラック・イニシアチブ」(EFAFTI) を事例に、開発成果実現の観点からPBA援助の形成評価を行った。その結果、アプローチは同じでも開発成果実現に向けた進展には差異があり、計画の適切性、援助依存度、実施能力、実施環境等が影響することを明らかにした。PBAは一律に議論されがちであるが、各国固有の状況をふまえた進め方が必要である。そのためには、対象国の課題をシステミックに捉え、実施能力の強化を盛り込んで段階的に取り組んでいくことが重要であり、イニシアチブやアプローチがドナー主導とならないことが必要である。また、PBAにおける個別援助の貢献は、投入やアウトプットとの関連に焦点を当てて検討するだけでなく、全体の中での位置付け・役割に照らし、実施基盤や実施プロセスへの貢献を含めて評価することが必要である。
  • 大学における授業評価分析を事例として
    星野 敦子, 北原 俊一, 新行内 康慈, 安達 一寿, 綿井 雅康, 牟田 博光
    2007 年 7 巻 1 号 p. 105-116
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    評価結果を政策に生かす場合、評価項目の重要度の違いがその後の政策を左右する要因となる。すなわち、重要度の高い項目の評価の方が低い項目に比較して、改善された場合に総合評価にもたらす影響が大きくなる。本研究は、大学における授業評価を事例として、評価項目の段階評価に対し、項目の重みを導入した三次元的分析を行うことで、授業評価の結果を効果的に授業改善に結び付ける方法を検討した。項目の重み付け法としてはコンジョイント分析を用いた。各要因の部分効用値をX軸にとり、各要因と関連する授業評価項目の段階評価データをY軸にとって、要因の相対重要度をバブルの大きさとするバブルグラフを作成することにより、評価項目の重みと段階評価を可視的に表すことが可能となった。本研究によって提案された方法は、より広い評価分野への応用への適用が望まれる。
  • Takao Ozaki, Marius Enescu, Moazzam Ali, Chushi Kuroiwa
    2007 年 7 巻 1 号 p. 117-129
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    The objective of the research is to provide an analytical model of the economic Cost-Benefit Analysis (CBA) and resultant policy recommendations, with the proposed emergency medical service (EMS) project in Constanta County (714, 923 population, 2005), Romania, in view. The economic cost of investment is US 31.5 million as per 2006 price level. The economic benefits are due to (i) incremental benefits attributable to EMS at the Constanta Emergency Hospital (CEH) as measured by willingness to pay (WTP) for healthier life, and (ii) social cost-saved (recovery of Productivity foregone due to emergent injury and diseases) measured by disability-adjusted life years (DALY). WTP was estimated by Contingent Valuation Method (CVM)-Double-bounded Dichotomous Choice method (449 interviewees) resulting in US 1.6 million par annum (US 214.8 per household, 8.9 percent of average household disposable income in Constanta). DALY in Constanta in 2005 is estimated at 118, 885 person-years while applying the “ratio method” of total DALY to death DALY (7, 286 deceased) and the disability adjustment factors (weighed average 0.67). With his and the productive beneficiaries (age group 15-59) of EMS at CEH (5, 812 DALY) and the annual household disposable income in Constanta average (US2, 420.7), financial-benefits-converted to the social cost-saved is US 12.7 million (SCF=0.9), totaling to US 14.3 million of economic benefit per year. The economic internal rate of return (EIRR) is 32.2 percent, thereby quantitatively revealing high economic viability (efficiency in scarce resource allocation) of the concerned EMS project in Constanta.
  • 都市大気汚染対策を事例にして
    村上 一真, 松岡 俊二, 金原 達夫
    2007 年 7 巻 1 号 p. 131-146
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    本研究は、行政、企業、市民という社会的アクターの環境管理能力により表される社会的環境管理能力に関して、アクター間の役割および各アクターの環境管理能力に一定の代替性があるとの仮説に基づき、大気汚染対策に係る社会的環境管理能力の形成プロセス、および各アクターの環境管理能力の形成プロセスに係る因果関係を実証的に明らかにした。具体的には、横浜市、名古屋市、大阪市の1971~2000年における大気汚染対策を事例に、Stepwise Chow Testを用いて社会的環境管理能力の構造変化の時期を示し、アクター間の環境管理能力に一定の代替関係が生じていることを示した。これより、社会的環境管理能力は、能力水準に応じたアクター間の役割の変化・代替を経ながら形成されていくという能力形成プロセスを都市別に示した。そして、アクター間の代替が起こるまでの期間を対象に、行政の環境管理能力の向上が、市民および企業の環境管理能力を向上させるという社会的環境管理能力の形成プロセスに係る因果関係を、構造方程式モデルにより実証した。
  • 不良債権処理に伴う雇用対策評価をめぐって
    西本 哲也
    2007 年 7 巻 1 号 p. 147-159
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    不良債権処理に伴う失業者に対する雇用対策として、緊急雇用対策交付金の創設を中心としてセーフティネットの構築が図られ、2001年度補正により予算も付けられた。しかし、この雇用対策が本当に効果的であったかどうかは、実はよくわかっていない。雇用対策の実施を担った厚生労働省は「おおむね効果があった」と自己評価していたが、報道や国会質問により、自己評価に対する疑問や政策の効果に対する疑問が呈されていたためである。
    他方、わが国の政策評価制度は、「評価の評価」(メタ評価) を行なう機能があらかじめ設定されている。その役割を担うのは、総務省行政評価局による客観性担保評価と呼ばれる活動である。この緊急雇用対策交付金に対しては、客観性担保評価が一歩進んだ形で行なわれたが、同時に課題や限界も明らかになった。
  • Miyuki Nagashima
    2007 年 7 巻 1 号 p. 161-169
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    One of the major environmental problems facing India today is air pollution. The Indian government has already taken a number of measures to control air pollution. The purpose of this paper is to examine the impact of policy instruments on controlling air pollution in industrial areas in India from 1991 to 2002 with particular reference to trends in the concentration of SO2, NO2 and SPM. The results indicate that the concentration of SO2 at all monitoring stations in 2002 met India's National Ambient Air Quality Standards (NAAQS) as a result of measures such as the diesel-sulfur phase-out program. Also, with regard to the concentration of NO2, the fraction of stations reporting levels above the NAAQS has gradually declined since 1997, and the national annual average of NO2 has been within the NAAQS at the majority of monitoring stations. SPM concentrations, however, have shown no such decline. One reason for this may be that the coal produced in India has a high ash content. This paper implies that because the SPM emission levels depend on the ash content of coal, stricter measures for controlling SPM will be needed.
  • 串本 剛
    2007 年 7 巻 1 号 p. 171-182
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、評価方法に関する4つの類型を設定し、学士課程教育の自己評価におけるそれらの採否状況について、全国調査から得られたデータを用いて実証的に明らかにすることである。前半部分では、学士課程に関する教育観の違いを反映するものとして、自律型、応需型、標準化型、成果準拠型という4つの評価方法を導入する。後半では、全国1, 871の学部を対象として実施した質問紙調査の結果を使って、各評価方法の採用状況を実証する。評価方法の採用率は、評価領域や学部の属性により異なることが明らかになると共に、その違いが評価方法の背後にある教育観との関係から考察される。
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