本稿は、世界90カ国に関する1985年から2004年までの独自のパネルデータを用いて、電力セクター改革における各政策手段が上記地域の諸国における送配電ロス率、1人あたり設備容量、稼働率にどのような影響を与えたのか、計量経済学の手法を用いて分析を行った。研究の結果、以下2点が明らかになった。
i) 外国IPPの導入、民営化、発送電分離 (アンバンドリング) は、より効率的な発電資産形成に資している。それは多くの地域で設備能力、設備利用率を向上させるが、先進国では古い設備の廃棄に伴う新しい発電設備の増強と稼働率向上の組み合わせとなるため、1人あたり設備能力は下がる。発展途上国においては、需要増が急速なため、1人あたり設備能力の向上という形をとる。
ii) 小売り部門への競争導入は、先進国や旧ソ連・東欧において送配電ロスを低下させることに効果がある。
電力セクター改革の成功に至る道筋は寡占独占企業である公益電力事業体がいくつかの民間企業に分離され、これらが互いに競争を行う中で、淘汰されていき、その過程でより効率のよい案件への投資、送配電ロスの低下、稼働率の向上を含む効率的な電力セクターの運営がすすむことにある。先進国においてはその動きが顕著にみられるが、発展途上国、経済体制移行国では現時点は過渡期であり、この期間において、発生した問題にどのように柔軟に、機動的に対処していくかということであろう。
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