日本評価研究
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巻頭言
特集:国の府省の政策評価のパラダイム転換に向けて
  • -評価制度とEBPMの関係を巡って-
    小野 達也
    2023 年 23 巻 2 号 p. 3-4
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/01/18
    ジャーナル フリー
  • -何が変わろうとしているのか-
    南島 和久
    2023 年 23 巻 2 号 p. 5-16
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/01/18
    ジャーナル フリー

     国の府省の政策評価制度が大きく変わろうとしている。2023年3月28日、閣議決定文書である「政策評価に関する基本方針」が改定された。その内容には政策評価制度史に残る変化が刻まれている。その内容として本稿が指摘するのは、政策評価の結果の意思決定への活用が前面に掲げられたこと、有効性の観点からの評価が重視されていること、政策評価制度と行政事業レビュー制度との統合が示唆されていることの3点である。当該改革はアメリカの2010年の政策評価制度改革、すなわちGPRA Modernization Act(GPRAMA)が目指す方向と共通点が少なくない。本稿では、当該制度改革が日本の政策と評価の何を変えようとしているのかについて議論する。

  • EBPMと「アジャイル型政策形成・評価」
    杉谷 和哉
    2023 年 23 巻 2 号 p. 17-30
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/01/18
    ジャーナル フリー

     2022年12月21日の行政改革推進会議において岸田文雄首相は、行政事業レビューの抜本的な見直しを通じて、EBPMの手法を取り入れることを宣言した。見直しの方針は大きく分けて二つある。一つ目がロジックモデルの活用である。これは以前から取組まれていた内容であったが、今回の見直しにおいては、本格的に行政事業レビューに組み込まれることとなっている。二つ目が「アジャイル型政策形成・評価」にも取り掛かる方針である。「アジャイル型政策形成・評価」とは、政策目標や関連する指標を柔軟に見直し、機動的な政策を目指すものである。本論文ではこれらの動きを概観したうえで、行政事業レビューにおいてEBPMを進めることの意義と限界を論じ、あわせて「アジャイル型政策形成・評価」についても、その課題となりうる論点を示唆した。

  • -EBPM推進下におけるロジックモデルの構造分析-
    佐藤 徹
    2023 年 23 巻 2 号 p. 31-44
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/01/18
    ジャーナル フリー

     『経済財政運営と改革の基本方針2017』において「証拠に基づく政策立案(EBPM)と統計の改革を車の両輪として、一体的に推進する」と明記された。それ以降、政府ではEBPMが推進されている。EBPMの推進において評価学の観点から特筆すべきは、政策評価へのロジックモデルの実装である。そこで本稿では、まず内閣府における政策評価及びEBPMを概観する。つぎにロジックモデルの構造に関する既往文献を踏まえ、行政施策に即したロジックモデルの構造に関する分析フレームを構築する。さらに内閣府の政策評価で用いられているロジックモデルに分析フレームを適用し、ロジックモデルの構造上の課題とあるべき姿を明らかにした。

  • -「役に立つ」評価を目指して-
    辻 寛起
    2023 年 23 巻 2 号 p. 45-59
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/01/18
    ジャーナル フリー

     2001年に導入された政策評価制度は、導入から20年を経て、数値目標を設定し、業績をモニタリングしながら進捗を管理する政策の管理手法を我が国行政に浸透・定着させるなど、一定の成果を挙げてきたが、政策立案過程から遊離した「評価書を作成する作業」のようになり、実際の政策の立案や改善に活かされていないとの指摘もされている。

     社会経済が急速に変化し、行政が対応すべき課題も一層複雑・困難となる中で、これに対応できる行政を実現していくためには、政策立案過程において、政策の効果を適時に把握・分析し、その結果に基づき改善方策を検討し、政策に反映させるという政策評価の本来の機能を発揮させ、機動的で柔軟な行政に転換していくことが必要である。こうした問題意識の下で、政府においては、令和3年から「政策形成・評価」の改革が進められてきた。

     本稿は、こうした政府における一連の「政策形成・評価」の改革の取組の経緯や内容について、その背景や問題意識と併せて整理しようとするものである。

  • -令和3年度研究「農山漁村振興交付金」及び「在外教育施設に派遣された教師に係る派遣効果」について-
    菊池 明宏
    2023 年 23 巻 2 号 p. 61-73
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/01/18
    ジャーナル フリー

     総務省(行政評価局)では、「政策効果の把握・分析手法の実証的共同研究」に平成30年度から取り組んでおり、本稿では、行政評価局が行った令和3年度の実証的共同研究「農山漁村振興交付金」及び「在外教育施設に派遣された教師に係る派遣効果」を紹介する。

     「農山漁村振興交付金」は、農山漁村振興交付金が、農山漁村の活性化にどの程度寄与しているか、活性化に向けた効果の発現経路を整理した上で、交付地域と未交付地域の比較等により効果を定量的に検証するとともに、交付の効果をより高めるための方策等について検討したものである。検証の結果、「雇用のある農業経営体数」が向上すること等が確認された。

     「在外教育施設に派遣された教師に係る派遣効果」は、日本人学校等の在外教育施設に派遣された教師は、現地での多様な活動等を通じて能力等を向上させているとみられることから、派遣経験のない教師と比較して、どのような能力等を向上させているか、派遣先の環境や派遣先での取組による効果の違いはあるか等について、定量的に効果の違いを検証したものである。検証の結果、派遣教師は、非派遣教師と比較して、カリキュラム・マネジメント能力、多文化・多言語環境における指導能力について、能力を伸ばしていることが確認された。

     本研究により、政策効果の検証方法は可能な限り政策形成の段階で検討し、必要なデータ収集・整理を事業実施の中で行うことが重要、などの示唆を得た。

  • -ロジックモデル導入状況の検討-
    埴岡 健一
    2023 年 23 巻 2 号 p. 75-90
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/01/18
    ジャーナル フリー

     厚生労働省の医療計画、がん対策計画、循環器病対策計画の3計画の作成方針に関して2022年度末に「ロジックモデルの活用」が盛り込まれた。これに基づき2023年度に都道府県が3計画を策定する。

     厚生労働行政におけるロジックモデル導入過程を整理し、今後の普及方策を検討するため、3計画に関する国の計画文や通知文、都道府県の計画文などをレビューした。また、先行導入都道府県の担当者の事例報告の内容を分析した。①萌芽期から普及期に入った、②国(厚生労働省)の中で先行事例が生じている、③部局間差が生じている、④都道府県で先行事例が生じている、⑤その結果、都道府県間差が生じている、⑥先行事例からの教訓が得られる、⑦部局間、都道府県間、国・都道府県間、官民間の波及が生じている、といった可能性が明らかになった。

     2023年度の3計画策定時にロジックモデルを活用する都道府県が主流となれば、厚生労働行政の政策評価が進展する基盤になることが期待される。

活動報告
  • 佐々木 亮, 宮口 貴彰, 佐藤 由利子, 河野 摂
    2023 年 23 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2024/01/18
    ジャーナル フリー

     2023年5月31日、日本評価学会国際交流委員会は、米国の著名な評価学大学院の関係者3名を招き、オンラインによる国際セミナーを開催した。米国側はウェスタンミシガン大学のMichael Harnar博士、クレアモント大学院大学のStewart Donaldson博士、南フロリダ大学のLiliana Rodriguez-Campos博士が登壇し、日本側は、日本評価学会の石田洋子会長による開会挨拶の後、国際交流委員会の佐々木亮副委員長が米国の大学における評価教育の全体像を、宮口貴彰副委員長が日本の大学における評価教育の概要を紹介し、佐藤由利子国際交流委員長が、閉会の辞を述べた。

     日本評価学会、アジア太平洋評価協会(APEA)などに案内を流し、国内外から57名が参加した。

     本稿では、セミナーでの発表やその後入手した情報に基づき、米国の評価学大学院と日本の大学の評価教育の状況を紹介し、日本における大学レベルでの評価教育のあり方について考える情報を提供することを目指す。

     なお、セミナーの資料は、下記URLにて公開されているので、参照されたい。

     https://socialexperimentation.web.fc2.com/seminar/JES_IntExCom_seminar2023.html

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