この論文の主たる目的は市民生活相談所に来所した登校拒否児と非行児を抱える家族の臨床的側面を明らかにし、これらの問題の発生機構と変容をこれまでの主要な社会学理論がどのように説明しようとしているかに触れ、その有用性の乏しさを指摘することにある。今ひとつの目的は、その有用性の向上を志向して、規範中心的な「ノーマルファミリー」 (normal family) に代わる新しい家族パラダイムとして、healthy family (健康家族) のモデル構築に向け努力することにある。分析のためのデータは、治療的介入のために作られた「治療システム」の構成メンバーとの治療面接、面接場面での彼らの行動観察、そして質問紙法に基づく150人の中学生から得られた「健康な家族像」についての調査データである。結果としては、臨床データの考察を踏まえて構成された仮説としての「健康家族」のシステム特性と、調査データの因子分析の結果明らかになった「健康な家族像」との間に親和関係が見られた。また力「健康家族」の概念は「相互的コミュニケイション」「経済的安定性」「民主的意志決定による共行動」「自己表現」「規則的な生活習慣」「明確な自己境界」「受容性」「明朗性」などの次元を持つ感情融合的な多次元概念であることが明らかになった。
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