成人期への移行期であり家族形成期にある若年層に焦点を当てて, 雇用流動化が, 家族にいかなる影響を及ぼしつつあるのかを検討する。雇用流動化は, 非正規・非典型雇用の増加に著しい。とくに, 低学歴・低所得出身者に顕著である。また, 女性の非正規・非典型雇用が増加している。不安定雇用にともなう低所得は, とくに男性の有配偶率を低下させている。初職時に非正規・非典型雇用に就いた場合, その期間は長期化し, 結婚の時期の遅れの原因となっている。女性の場合には, 男性ほど明確な関連性はみられないものの, 晩婚化に結びついていることは確認できる。雇用流動化の影響は, 若年層全般に及んだというよりは, 非正規・非典型雇用に入らざるをえなかった層に大きな影響を及ぼしている。欧米諸国と比較してみると, 雇用流動化に対処するために共働きカップルを形成するよりも, 結婚を回避して親元にとどまろうとする傾向がみられる。雇用流動化とそれに関連する諸制度, および家族意識が, 家族形成を阻害する方向に作用しているものと思われる。
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