家族社会学研究
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23 巻, 2 号
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巻頭エッセイ
特集
日本家族社会学会20周年記念テーマセッション2010
日本の家族社会学は今―過去20年の回顧
  • 藤崎 宏子
    2011 年 23 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    本テーマセッションは2009年に引き続き,日本家族社会学会創立20周年を記念して開催された.2009年には,過去20年の日本の家族社会学研究を理論動向に焦点化してレビューしたが,今回は研究方法の展開に注目して総括し,今後の課題を展望した.質的研究(木戸功氏),量的研究(保田時男氏),歴史的研究(米村千代氏)の三つの立場から報告がなされ,これを受けて牟田和恵氏,渡辺秀樹氏からコメントをいただいた.本テーマセッションは前年と同様に編集委員会,研究活動委員会の共同企画により準備が進められ,当日の司会は藤崎宏子と山田昌弘が務めた.今回の報告およびその後の討論から提起された課題は,以下の3点にまとめられる.(1)異なる方法の間や隣接学問領域との間の「対話」を活性化する.(2)方法論の技術的側面を理論的想定と関連づけて評価する.(3)研究対象たる「家族」の多様性や可変性にセンシティブである.これらの課題に継続的に取り組んでいくうえで,学会の果たす役割が重要であることが再確認された.
  • —質的研究の再興は家族社会学に何をもたらしたのか?—
    木戸 功
    2011 年 23 巻 2 号 p. 150-160
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    この論文では過去20年にわたる家族社会学における質的研究の動向をふりかえり,その現状と課題を考察する.『家族社会学研究』(1989-2010)における質的研究を,論文数,データとその収集方法,方法論,主題といった観点から検討する.論文数が増加してくるのは2000年以降のことであり,そこでは個人の経験に焦点をあて,面接調査によってえられた「語り」をデータとして使用する研究が多いが,方法論や理論的な想定については十分には議論されてこなかった.こうした検討をふまえて,方法の妥当性と知見の一般化可能性という課題について議論する.調査研究過程の手続きの有意関連性を示し,理論的想定を明らかにすることの重要性を指摘するが,このことは家族社会学における知見の意義を明確にするという意味でも重要である.さらに,この知見の一般化可能性という水準において,量的研究との関係を考えることを提案する.
  • —計量研究者の立場から—
    保田 時男
    2011 年 23 巻 2 号 p. 161-169
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,過去20年の日本の家族社会学研究を回顧することで,その方法論的な発展指針を探ることである.1989~2010年を三つの時期に区分して,『家族社会学研究』の234件の論文にみられるトレンドを分析した.分析の結果,以下の点が明らかになった.(1) 実証的研究の割合は着実に増加している.(2) 問題家族の研究を中心に質的研究が増加しており,量的研究は一般家族の研究への集中傾向を強めている.(3) 量的研究の中では,全国無作為サンプルがII期以降3分の1以上を占め,多変量解析がIII期に8割に達するなどの発展を示している.(4) 一方で,面接調査が減少し,高度な分析技法の普及は停滞している.量的研究と質的研究の関係,家族研究に携わるた他の学問分野との関係について議論を行い,NFRJを軸とする共同研究の発展を提案した.
  • 米村 千代
    2011 年 23 巻 2 号 p. 170-181
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    過去20年間の日本の家族社会学界における家族史研究,社会史研究の動向をレビューする.その内的展開を追うと同時に,社会学外の家族史研究・社会史研究との対比を通して家族社会学における特徴と課題を指摘する.本稿では,特に歴史的方法と認識論という二つの点に焦点をあてて成果を評価している.方法面においては精緻化,専門化が進んだ20年であり,認識論という点では,既存研究のアンチテーゼとして登場した近代家族論が家族社会学におけるドミナントな枠組みとして定着し,内在的・外在的批判や議論を通して展開した時期ということができる.最後に,これからの家族史研究にとっては,専門性や方法の厳密さを尊重しつつも,他の方法やアプローチとの間で開かれた議論が必要であるという課題を指摘してまとめに代える.
特集
欧米の家族の変化
  • 高橋 美恵子
    2011 年 23 巻 2 号 p. 182-185
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    本セッションでは,家族の変動がダイナミックで,家族形態の多様化が進んでいる先進欧米諸国の実態を捉える目的で,アメリカ,スウェーデン,フランスにおける家族の変化と動向について考察した.これら3カ国はEsping-Andersen (1990)が提示した福祉国家の三類型を代表している.「自由主義」レジームの代表格であるアメリカについては,石井クンツ昌子氏が「アメリカの家族と社会学研究——変容と現状——」と題して,「社会民主主義」レジームであるスウェーデンの事情は,善積京子氏が「スウェーデンの家族——多様なパートナー関係と子育て——」と題して,「保守主義」レジームに位置づけられるフランスについては,舩橋惠子氏が「フランスの家族——新しい絆を模索する社会——」と題して報告を行った.これら3カ国には,家族をめぐる社会的枠組みに違いはあれども,いわゆる「標準型家族」の拘束から解放され,さまざまなライフスタイルが許容されているという共通点が導出された.
  • —変容,現状,多様性—
    石井クンツ 昌子
    2011 年 23 巻 2 号 p. 186-195
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    本論文では米国の家族に注目して,その変容と現状および多様性について述べる.米国の家族の多様性を生み出してきたのは,人種間の文化や慣習の違い,社会階層および地域格差である.よって,これらの社会的な背景を最初に述べ,次に主な家族の変化(離婚率の増加,晩婚化,法律婚世帯の減少,シングルペアレントの増加)と現状を U.S. Census などのデータを基に明らかにする.また,これらの多様性と変化に対応した家族の定義を提唱する.米国の家族社会学研究からは特に父親と家族,ゲイ・レズビアンの家族に焦点をあてて,主な結果をレビューする.最後に,家族社会学研究と密接に関係しているジェンダー視点について述べる.
  • —家族政策と生活実態—
    善積 京子
    2011 年 23 巻 2 号 p. 196-208
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    本稿では,スウェーデンにおける家族の変容を(1)統計データ,(2)異性カップルおよび同性カップルの共同生活の実態,(3)離別後の養育の側面から,既存の実証研究をもとに探究する.スウェーデンでは,1960年代後半から家族政策が,女性と男性の二重の解放を意味するジェンダー平等を土台にして,政府主導で推進される.その政策では,父性が強調され,父親の育児休業取得が奨励される.また,共同生活やジェンダーに対する中立性の原則に基づき家族法が改正され,同性カップルの親になる権利や同性婚も法的に認められる.その後,「子どもの最善の利益」が家族政策においても最優先すべきとされる.共働き家族は一般的になるが,しかし現在でも,家族政策の民主的家族の目標は,不平等な家事・育児の分担,「父親の権利」と「母親の義務」となっている不平等な親性,子どもの保護よりも父子関係の優先など,現実の家族生活において部分的にしか実現されていない.
  • —新しい絆(きずな)を模索する社会—
    舩橋 惠子
    2011 年 23 巻 2 号 p. 209-218
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,フランスの家族政策が家族変動にどのように対応しているかを示すことである.はじめに,増加する同棲,別居パートナー,婚姻に代わろうとしているパックス,離婚とひとり親,ステップファミリーといった,今日的パートナーシップ現象を概観する.これらは,家庭や職場における女性の権利と,生殖に関する権利を尊重することと並行していた.次に,働く親を支えるために1980年代から革新してきたフランスの家族政策の概要(子どもの教育・保育システム,労働時間の短縮,十分な余暇,膨大な家族手当など)について描き出す.フランスの経験は,家族変動の時代にあっては家族の絆(きずな)を社会的に支えることが,われわれの社会を持続可能な状態に保つということを教えている.
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