家族社会学研究
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26 巻, 2 号
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巻頭エッセイ
投稿論文
  • 鹿又 伸夫
    原稿種別: 投稿論文
    2014 年 26 巻 2 号 p. 89-101
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー
    1995年と2005年の全国調査(SSM調査)データを使用し,社会階層要因(回答者本人とその配偶者の学歴,就労と職業)の影響を統制したうえで,「婚姻状況と家族形態」と貧困リスクとの関連について検討した.分析結果は次の諸点をしめした.第1に,家計水準そして貧困にたいして婚姻状況と家族形態がもつ影響は,社会階層要因による影響ほど強くないが無視できないものだった.第2に,婚姻状況と家族形態からみた貧困リスクの格差は10年間で変化していなかった.第3に,家族形態による貧困リスク格差には男女とも年齢段階間での相違がみられ,これらの相違は他の家族員扶養によるリスク負荷と家族内の相互扶助関係によるリスク低減の双方が反映されていた.また婚姻状況による貧困リスク格差は男性だけに年齢段階間の相違がみられた.最後に,女性の貧困リスクは男性よりも家族形態の影響を受けやすく,家族内扶助関係が欠如する場合に貧困にたいして脆弱だった.
  • —記述の実践に着目して—
    知念 渉
    原稿種別: 投稿論文
    2014 年 26 巻 2 号 p. 102-113
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー
    2000年代以降,「子ども・若者の貧困」に関する研究が数多く蓄積され,貧困家族を生きる子ども・若者たちの生活上の困難を明らかにしてきた.しかし,山田 (2005)が指摘するように,現代社会を生きる人々にとって,家族とは,生活に役に立つ/立たないという観点から理解できる「機能的欲求」には還元できない,自分の存在意義を確認する「アイデンティティ欲求」を満たす関係にもなっている.このような観点に立てば,従来の「子ども・若者の貧困」研究は,アイデンティティ欲求の次元における「家族であること」のリアリティを相対的に看過してきたと言えよう.そこで本稿では,「記述の実践としての家族」という視点から,文脈や状況に応じて流動する若者と筆者の間に交わされた会話を分析し,アイデンティティ欲求の次元における「貧困家族であること」のリアリティを明らかにした.そして,そのリアリティが,流動的で,相対的で,多元的であることを指摘し,その知見がもつ政策的示唆について考察した.
  • —「家族崩壊」に対応する母親役割に着目して—
    元山 琴菜
    原稿種別: 投稿論文
    2014 年 26 巻 2 号 p. 114-126
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー
    本稿は,カミングアウトされた家族がいかなる葛藤を抱え,それと向き合い対応していくかの過程を,母親の役割に着目して提示することを目的とする.
    カミングアウトされた家族への聞き取り調査から家族が抱える葛藤を考察した.すると,特に娘にカミングアウトされた母親から「家族崩壊」を危惧する語りが見られたため,彼女たちの語りに着目し,母親にとっての「家族崩壊」の意味と,それを回避するために担う母親役割を明らかにした.それは,母親がカミングアウトによってこれまでの母親役割や母親としてのアイデンティティが脅かされると感じたためであった.しかし母親は,「調整役割」を積極的に担い,「家族崩壊」を回避していく.母親の役割遂行だけを見れば,母親役割の保守的な側面が浮かび上がる.しかし母親役割を通して⟨非異性愛者をもつ家族⟩になることは,「近代家族」における異性愛規範と同性愛嫌悪に疑問を投げかける.
  • —ある児童自立支援施設の実践から—
    藤間 公太
    原稿種別: 投稿論文
    2014 年 26 巻 2 号 p. 127-138
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー
    近年,社会的養護をめぐる議論において,家族再統合への関心が高まりつつある.しかしながら,このトピックに関する議論は,これまでの家族社会学であまりなされてこなかった.本稿では,ある児童自立支援施設での質的調査の結果をもとに,家族再統合の諸相について議論する.まず,先行研究のレビューから,家庭復帰を目指す「家庭復帰前提型支援」,同居はせずとも「家族維持」を目指す「分離型支援」とに,家族再統合支援を整理する(II).つづいて,調査結果の分析を行う.そこでは,どちらの位相にも現実的な困難が存在すること,こうしたなか,家族再統合支援の第3の位相として,「距離化」と呼べる支援が行われていることが明らかになる(III, IV).最後に,家族再統合の内実の複雑性を議論することの重要性と,このトピックを家族社会学的に論究していくことの意義について論じる(V).
  • 余田 翔平
    原稿種別: 投稿論文
    2014 年 26 巻 2 号 p. 139-150
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー
    本稿では,再婚率の(1)趨勢,(2)階層差,(3)趨勢変化の階層差に着目して記述的分析を行った.『日本版総合的社会調査(JGSS)』にイベントヒストリーモデルを適用した結果,以下の知見が得られた.第1に,近年の離死別コーホートほど,再婚ハザードは低下している.第2に,男性よりも女性のほうが,低学歴層よりも高学歴層のほうがそれぞれ再婚経験率が高い.第3に,学歴と再婚経験との正の関連は近年の離死別コーホートほど明確に現れており,一方で再婚経験率の性差は縮小傾向にある.
    以上を踏まえると,日本社会では「離死別者の非再婚化」が進展しており,未婚化・晩婚化のトレンドとあわせて考えれば,無配偶の状態に滞留するリスクがライフコースを通じて高まっていると推測される.さらに,こうしたライフコースの変化は社会全体で一様に広がっているわけではなく,階層差を伴っている.
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