配偶者とのみ性的関係をもつ,いわゆる「不倫」の禁止は現代の結婚制度の根幹を支える要素のひとつといえる.しかしながら,では誰が「不倫」をするのかを明らかにした日本の研究はほぼ見当たらない.本稿では日本における「不倫」行動の規定要因を機会および夫婦間関係のフレームワークを用いて検討した.分析結果から,労働時間や夫婦間関係の親密さ(会話頻度,セックスの頻度),子どもの数は「不倫」行動の発生に効果を与えないことが示された.男女ともに効果のある変数は学歴であり,高学歴になればより「不倫」しなくなるといえる.男性のみに効果のある変数は収入および妻との収入差であった.男性は収入が上がれば,また妻の方が収入が高ければ「不倫」するようになるといえる.
本稿では,特集の目的と『家族社会学研究』の30年間の歴史を概観する.日本家族社会学会の歴史や研究動向の総括は,ほぼ10年ごとの節目に行われてきた.しかし,学会誌『家族社会学研究』については,これまでそうした総括が行われたことはない.その原因は,学会誌の基幹である投稿論文の査読審査が非公開であることだろう.しかし,日本の学会の動向はこの審査についても一定の情報は公開する方向にあり,それをめぐる議論が活発化している.本特集もこうした流れの中で,『家族社会学研究』刊行30年を記念して設定された.30年の歴史は,ほぼ10年ごとに初期・中期・それ以降に分けることができる.初期に編集と審査体制の基礎をつくり,中期には,年2号体制になって複雑化し増加した業務を効率良く体系化し,それ以降は情報公開や国際化の流れの中でそれらを継承してきた.この特集を契機に,学会誌の歴史を記録することへの関心が高まることを期待する.
『家族社会学研究』の初代の編集委員長として,1989年に創刊された当時を振り返り,創刊に至る経過と専門学術雑誌としての意義づけ,創刊号の編集および周辺的な業務への取り組みを紹介し,学会機関誌としての定着過程を振り返るとともに,今後の編集企画への期待を述べた.
本稿では,日本家族社会学会の機関誌『家族社会学研究』の2000年代における編集業務改革を,1)編集委員会の組織と運営,2)投稿原稿の形式問題への対応,3)査読制度と投稿原稿の質向上への対応,という3つの側面に分けて記述した.この時期には,1990年代以来の社会科学系大学院生および博士学位取得希望者の増加を背景として,論文投稿や査読をめぐる編集委員会の困難やトラブルが生じていた.これに対応するため,組織改革や編集および査読に関するガイドラインの作成と公表がおこなわれた.本編集委員会では,これらの取り組みを通じて,本誌の査読制度および編集業務における「教育的指導」の重要性について再確認することになった.
2010年以降から今日にいたる『家族社会学研究』の主な取り組みをまとめることを本稿の目的とする.この期の新しい課題としては,英語論文の投稿受付開始を,継続的課題としては,投稿の促進と掲載論文の増加のためのいくつかの改訂をあげることができる.ピアレビューにおいて,学会誌としての論文の質保証と教育的役割の双方をどのように両立するかという点は,中期以降の課題を引き継ぐもので,『家族社会学研究』の持続的発展にとって根源的なテーマである.さらに,今後は,家族現象および家族研究の多様性を,家族社会学の専門誌である『家族社会学研究』がどのように包摂して,若手研究者の多様な投稿論文を掲載につなげていくのかが課題となってくるだろう.
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