家族社会学研究
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巻頭エッセイ
会長講演
投稿論文
  • 岡田 玖美子
    2022 年 34 巻 1 号 p. 16-28
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/04/30
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,「フキハラ」などの今日の夫婦間葛藤の背後には夫婦の情緒性をめぐるジェンダー非対称な構造があるとの関心から,その構造を解明する手がかりとして家族の情緒性を脱構築した先駆である1990年前後の近代家族論に着目する.近代家族論を再評価する近年の研究では,日本の近代家族研究は親子関係に関心の比重があったと指摘されたが,近代家族論における夫婦の情緒性への視座の意義と限界は十分検討されていない.それらを検討することで,近代家族論の意義として夫婦の情緒性はイデオロギー性だけでなく,「感情ワーク」という実態レベルの負担を有することを体系的に論じた点を示す.その示唆のもと,「フキハラ」の問題化は,女性のみに感情ワークを課してきた公私二元的社会システムへの異議申し立てであると論じる.今後は近代家族論の視座に男性の感情ワークの観点を取り入れ,夫と妻双方のコンテクストで夫婦の情緒性をとらえる必要性を説く.

  • 三品 拓人
    2022 年 34 巻 1 号 p. 29-42
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/04/30
    ジャーナル 認証あり

    本論文は,中規模の児童養護施設において何が「家庭的」であるのかということ,そして「家庭」がどのように参照されるのかということを,参与観察データから明らかにするものである.施設の小規模化や個別化を実現することにより達成されるとされる「当たり前の生活」という観点に注目した.その結果,児童養護施設において「家庭」が参照される場面として,次の2つの場面が見られることを提示した.1つ目は,「施設内で使われる物の大きさと形」である.例えば,ドレッシング,炊飯器,お風呂などの大きさが「普通の家庭」の大きさや形と比較され,職員がその適切性を問題視する場面があった.2つ目は,「施設における指導の判断の基準」である.例えば,子どもの体調が悪い時の対応,ポケットに手を突っ込んでいる時に注意をするかなどであった.以上のように,児童養護施設の日常生活において「家庭」が参照される一側面が明らかになった.

特集「パブリック/プライベート」空間の重なりと家族・ワークライフバランス
  • 安藤 究, 巽 真理子
    2022 年 34 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/04/30
    ジャーナル 認証あり

    本シンポジウムは,情報通信技術(ICT)の進展やコロナ禍のもとで進行した「パブリック/プライベート」空間の重なりが,家族・ワークライフバランスなどに及ぼす影響を考える契機となることを目的とした.高見報告では,コロナ禍のもとでの在宅勤務の経験の拡がりや,在宅勤務による家事・育児時間の変化の分析結果が示された.宮下報告は,自営業の妻の労働と家族生活の特徴を,労働社会学の知見の丹念な検討から抽出する.品田報告は,家族が一緒に過ごす時間の分析を通して,日英2つの社会における公的/私的領域の意味に隔たりが大きいことを示唆する.3つの報告からは,在宅勤務などによる「パブリック/プライベート」空間の重なりの影響を検討する上では,「空間」の重なりだけでなく「時間」の重なりの影響も考える必要が浮かび上がった.

  • 高見 具広
    2022 年 34 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/04/30
    ジャーナル 認証あり

    在宅勤務(テレワーク)は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて急速に拡大したが,その実施有無には,学歴,業種,職種,企業規模,所得など,仕事特性や社会経済的地位による格差が見られた.コロナ禍で在宅勤務を行った者においては,生活時間の変化があり,男性も含め家事・育児時間が増加する傾向が確認された.在宅勤務は,その面でワークライフバランスに寄与した部分があるが,今後は,「働きすぎ」をいかに防ぐかが課題となる.場所を問わない柔軟な働き方は,コロナ禍以前から,情報通信技術(ICT)の利用可能性拡大に伴う論点であり,勤務先以外でも仕事を行えることでアウトプットを高められる反面,「いつでもどこでも仕事」という状況に陥り,生活領域(生活時間)が侵食されるリスクも存在する.今後の在宅勤務においては,ワークライフバランス上の課題に向き合うことが求められる.

  • 宮下 さおり
    2022 年 34 巻 1 号 p. 58-65
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/04/30
    ジャーナル 認証あり

    本論文は,小規模家族経営における事業主の妻がどのような働きかたをしてきたのか,行政調査や学術研究からなるその蓄積を確認し,その姿を歴史的に振り返る.これまで蓄積されてきた女性家族従業者に関する調査研究は,共通して,彼女たちの労働時間の長さや低報酬性を確認し,仕事と家事・育児との調整のしがたさを明らかにしてきた.生活領域と労働・経営の区切りはつきづらく,そこでは労働・経営が優先された.職住分離も影響を与えたと言いがたかった.また,彼女たちの労働をめぐる制度的側面を見れば,家族労働は労働者としての保護を受けず,税制上,無償が原則とされてきた.このような構造的特徴の解明と成り立ちの精査は,現代の社会理解における重要な課題である.

  • 品田 知美
    2022 年 34 巻 1 号 p. 66-75
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/04/30
    ジャーナル 認証あり

    本稿は現代家族における近代性をあらためて考えるにあたり,共に過ごすという行為に照準する.第1に生活時間の経年変化をみると,2000年から2016年にかけて小学生の子どもがいる夫婦の時間配分は,夫が仕事,妻が家事の大半と仕事の両方を行う状況で変化に乏しい.夫はこの間仕事を増やし,妻は仕事と育児を増やし家事をやや減らした.第2に,イギリスと日本で小学生の子どもがいる女性各10名を対象としたインタビュー調査によると,家族全員が共に過ごすことについての考え方の違いが浮き彫りとなった.日本では家族全員が日常で共に過ごす時間が短くても,もう十分過ごしていると語る.一方,イギリスでは家族と十分過ごしていると言わない人が多い.2つの社会における公的/私的領域の意味には隔たりが大きいと示唆される.

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