長野県菅平のニホンアカマツ林においては,落葉時期によって,内部に侵入する菌が異なる.この相違を,培養温度と菌糸生長速度の関係に基づいて考察した.夏期の落葉で優占する Chaetopsina fulva および夏期と秋の落葉内で優占する Verticicladium trifidum は,比較的高い温度域で,一方,晩秋および春期の落葉に侵入する Selenosporella curvispora は前者2種より低い温度域で最も速い菌糸生長を示した.落葉期の違いによる内部生息菌の相違は,これらの菌の生育特性を反映していると考えられた.
沖縄県那覇市首里の末吉町と崎山町で採集したオオシロアリタケ (Termitomyces eurrhizus) を,記載を添えて報告する.これは,本種の沖縄本島からの初めての記録である.オオシロアリタケ属 (Termitomyces) の種としては,今までトガリアリヅカタケが西表島で,またオオシロアリタケが西表島に加えて石垣島で梅雨の時期に子実体を発生することが知られていた.筆者らが1994年から2004年の10年間調査したところ,沖縄本島におけるオオシロアリタケの発生は6月の下旬から7月の上旬で,西表島と石垣島より遅かった.