日本菌学会会報
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50 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
総説
  • 楠田 瑞穂
    2009 年 50 巻 2 号 論文ID: jjom.H20-07
    発行日: 2009/11/01
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

      1994年,太田はマツタケと同じ菌根菌であるホンシメジが大麦粒を基質にした培地で宿主なしに成熟子実体を形成したことを報告した.そこで,生育基質としての大麦デンプン資化性の観点からホンシメジのアミラーゼ生産系について検討した.その結果,主要なアミラーゼは高い分解能力を持つグルコアミラーゼであることを精製酵素の性質から初めて明らかにした.この観点から,著者はマツタケの糖質分解酵素についても検討した.その結果,本菌はその静置培養液中にα−アミラーゼと弱いα−グルコシダーゼを生産することが明らかになった.一方,グルコアミラーゼは確認できなかった.さらに,静置培養液からβ−グルコシダーゼの強い活性を発見した.これらの酵素は既に精製し,その諸性質を明らかにした.β−グルコシダーゼの発見は本菌の腐生的な能力を示唆するものである.
     著者の実験結果から,著者はマツタケの糖質分解酵素系について一つの図を描き,人工栽培における本菌の弱点を指摘した.最後に,研究結果に基づき,グルコース供給に機能する強力なβ−グルコシダーゼを利用した人工栽培の可能性について考察した.

  • 中森 泰三
    2009 年 50 巻 2 号 論文ID: jjom.H20-08
    発行日: 2009/11/01
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

    Fungal defence against mushroom-feeding Collembola was studied. Field observations and experiments showed that the mushroom-feeding collembolan Ceratophysella denisana chooses food fungus species based on its preference for fruiting bodies, suggesting that fruiting body characteristics affect food choice by C. denisana and may play roles in fungal defence. Further observations suggest that C. denisana potentially reduces fungal fitness by damaging spores, rather than increasing fitness by dispersing spores via gut passage. In the ascomycetes Ciborinia camelliae and Spathularia flavida, repulsion of C. denisana by fruiting bodies in response to injury has been discovered. The bioactivity is suspected to be involved in food avoidance of C. denisana and defence by the ascomycetes. In the basidiomycetes Russula bella and Strobilurus ohshimae, we found that their cystidia are capable of killing C. denisana on contact and can act as a defence by reducing attacks of C. denisana on spore-bearing gills.

  • 廣岡 裕吏
    2009 年 50 巻 2 号 論文ID: jjom.H20-09
    発行日: 2009/11/01
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

     本研究では,まずネクトリオイド菌類の分類学的変遷や,生態,形態的特徴を紹介した.また,日本産ネクトリオイド菌類,2科16属57種555菌株を採集し,最新の分類体系を基に同定,分類を行った.その結果,1新属,11新種,日本新産22種を発見し,いくつかの種については記載を行った.既存の日本産ネクトリオイド菌類については,標本観察,文献調査により42種を同種異名として報告した.また,子嚢内子嚢胞子保有数の違いによるネクトリオイド菌類の類別法の可能性を見出した.採集した植物生育性菌,菌生育性,昆虫生育性など多様な生態を持つネクトリオイド菌類のうち,植物病原菌,または植物病原菌や害虫に対し病原性を持つ寄生菌なども発見した.これらの結果を基に,日本産ネクトリオイド菌類の属における検索表を作成した.

論文
  • 常盤 俊之, 奥田 徹
    2009 年 50 巻 2 号 論文ID: jjom.H20-10
    発行日: 2009/11/01
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

     イグチ類に寄生する日本産Hypomyces属菌5種とそのアナモルフのSepedoniumを記載し検討した.これらはH. melanocarpus, H. transformans, H. chlorinigenus, H. chrysospermus及びH. microspermusであり,前2種は日本新産種であった.また,日本特産種のホオベニシロアシイグチ(Tylopilus valens)をHypomyces melanocarpusの新寄主として報告した.さらに類似する2種H. chrysospermusH. microspermusの形態と寄主範囲の相違点について論じた.

  • 上田 成一, 川良 希, 矢口 貴志, 宇田川 俊一
    2009 年 50 巻 2 号 論文ID: jjom.H20-11
    発行日: 2009/11/01
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

     2007年に発生した果実加工品の変敗事故から原因菌として分離した耐熱性カビの生育性状と子嚢胞子の微細構造をSEMにより観察した結果,子嚢菌類ユウロチウム目の日本未記録種Neosartorya paulistensis Horie et al. (アナモルフ:Aspergillus paulistensis)と同定した.また,rDNAのβ−tubulin,calmodulin,actin遺伝子の塩基配列を解析し,得られた遺伝子型から同定結果を確認した.N. paulistensisの子嚢胞子はN. glabraの特徴に極めて類似するが,系統樹上の位置はN. glabraと離れ,N. spinosaに近接した系統群に含まれた.  本種の子嚢胞子の耐熱性は,ブドウ果汁を加熱媒体としたとき,D83℃=48.6 min,D85℃=16.2 min,D87℃=6.9 minを示し,比較に用いたN. glabraN. spinosaの食品由来株の中間であった.また,z値は4.4℃であった.これらの耐熱性数値は本種について最初の知見であり,2007年に発生した変敗事故が加熱殺菌不足によることを推定した.

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