日本菌学会会報
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51 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論文
  • 上田 成一, 川良 希
    2010 年 51 巻 2 号 論文ID: jjom.H21-05
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

     発芽率測定による耐熱性カビの新規D値試験法の開発を行った.供試した耐熱性子嚢菌は,食品事故由来のNeosartorya hiratsukae N2001株, N. pseudofischeri UDA-01株,Talaromyces macrosporus MIT-01株,また沖縄県のマンゴー栽培ハウス土壌由来のT. macrosporus SUN2061である.
     TDT試験管法により耐熱性試験を行った結果,加熱処理後の生残菌数測定に関して発芽率法と平板培養法で得られたD値は,供試菌株全てにおいて有意差が見られなかった.よって発芽率法が平板培養法に代わる新規のD値試験法として適用可能であることが示唆された.
     本報告に記載した発芽率法は平板培養法と比較して時間短縮,簡素化,省資源化などのメリットが挙げられる.

  • 山岡 裕一, 新山 雪絵, 小幡 和男
    2010 年 51 巻 2 号 論文ID: jjom.H21-06
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

     異種完生型さび菌の1種 Melampsora chelidonii-pierotii は,夏胞子・冬胞子世代をマルバヤナギ(Salix chaenomeroides),ジャヤナギ(S. eriocarpa)上で,精子・さび胞子世代をキケマン属のムラサキケマン(Corydalis incisa)上で過ごす.茨城県西部の小貝川,鬼怒川,桜川,菅生沼の水辺林とその周辺の植物群落において,ムラサキケマンの分布と本菌に対する感染株率を調査した.ムラサキケマンはヤナギ林内にはほとんど分布せず,ヤナギ林に隣接したクヌギ・エノキ林に広くかつ高密度で分布し,本菌が高頻度で感染していた.クヌギ・エノキ林内にも単木や少数のヤナギ類が混在する場合があり,周辺のムラサキケマンに高頻度で感染が起きていた.以上の結果より,調査地域一帯は本菌が生活環を全うするのに適した生息場所であると推測できる.また,ヤナギ林に隣接するクヌギ・エノキ林内には,キケマン属のジロボウエンゴサク(C. decumbens)が分布し,本菌が感染していた.ジロボウエンゴサクもムラサキケマン同様に精子・さび胞子世代宿主として機能していると考えられる.

  • 上田 成一, 川良 希, 矢口 貴志, 宇田川 俊一
    2010 年 51 巻 2 号 論文ID: jjom.H21-07
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

     2008年に発生した果実加工品の変敗事故に関して,原料に用いたかんきつ果汁から原因菌として分離した耐熱性カビの生育性状と子嚢果,子嚢胞子,アナモルフの形質を光学顕微鏡およびSEMにより観察した結果,子嚢菌類ユウロチウム目の日本未記録種Byssochlamys lagunculariae (C. Ram) Samson et al. (アナモルフ:Paecilomyces sp.)と同定した.また,rDNAのITS/LSU(28S)領域遺伝子およびβ-tubulin遺伝子の塩基配列を解析し,得られた遺伝子型から同定結果を確認した.B. lagunculariaeのコロニーは初めB. niveaのように白色であるが,次第に分生子の形成とともにPaecilomyces variotiiに似たオリーブ褐色になる.本種のPaecilomycesアナモルフはP. variotii種複合体の一つであるPaecilomyces dactylethromorphusの形態と全く差異がなく,しかもB. lagunculariaeP. dactylethromorphusはβ-tubulin遺伝子の塩基配列に基づく分子系統樹において近縁の系統群を構成した.本種の子嚢胞子の耐熱性は,かんきつ果汁を加熱媒体としたとき,D75℃=14.4-38.4 min,D78℃=3.4-13.5 min,D80℃=5.4 minを示し,比較に用いたB. fulva, T. byssochlamydoidesのD値からは低かった.また,z値は5.5-5.7℃であった.これらの耐熱性数値は本種について最初の知見であり,2008年に発生した変敗事故について原料のかんきつ果汁に汚染原因があったことを推定した.

  • 楠田 瑞穂, 淀野 亮祐, 上田 光宏, 白坂 憲章, 宮武 和孝, 寺下 隆夫
    2010 年 51 巻 2 号 論文ID: jjom.H21-08
    発行日: 2010/11/01
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

     マツタケの菌糸体生育に及ぼすトレハロースの影響と菌体外Thaseの生産性を検討した.本菌の栄養菌糸をトレハロースを添加したマツタケ改変液体(PMML)培地や浜田マツタケ液体(HML)培地で培養した時,その菌糸体の乾燥重量はグルコースを添加した場合の乾燥重量より増加した.炭水化物基質濃度1.0-8.0%の範囲で,グルコースとトレハロース濃度がマツタケ栄養菌糸体生育に及ぼす影響を調べた結果,最適濃度はグルコース培地では2.0%であったのに対し,トレハロース培地では8.0%であった.マツタケの栄養菌糸の生育に伴って菌体外Thase活性は上昇し,菌株接種後70日目に最大となった.このマツタケ菌糸体の生産する菌体外Thaseの精製を試み,その特徴についても検討した.

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