日本菌学会会報
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53 巻, 2 号
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総説
  • 岡本 賢治
    2012 年 53 巻 2 号 論文ID: jjom.H23-07
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2018/01/27
    ジャーナル フリー

     本稿では,身近に生息する担子菌において,効率的なキシロース発酵能のみならず,C 5 ならびにC 6 糖の発酵が可能なこと,バイオマス原料に対して酵素生産⇒糖化⇒発酵が単一のプロセスで達成できることなど,新たに見いだした興味深い能力を紹介した.これらC 5・C 6 糖発酵担子菌は,遺伝子組換え菌と比べて遜色ない機能を有し,特にリグノセルロースや食品廃棄物など未利用バイオマスからの直接的エタノール生産能力は極めて優位である.今回,一連の研究を通して,担子菌が潜在能力の豊富な微生物であることに改めて気づかされた.森林の中で生き残っていくため,自然界のさまざまな環境や状況に適応できるフレキシブルな機能を備えているのかもしれない.今後,当該発酵担子菌のさらなる能力を発掘し,持続的循環型社会の実現に貢献する,自然のポテンシャルを活かした環境調和型のバイオマスリファイナリーへと展開していきたい.

論文
  • 海渕 覚, 野中 健一, 森 美穂子, 塩見 和朗, 大村 智, 増間 碌郎
    2012 年 53 巻 2 号 論文ID: jjom.H23-08
    発行日: 2012/11/01
    公開日: 2018/01/27
    ジャーナル フリー

     本研究では菌類の創薬資源としてのさらなる有効利用を目指し,共培養に着目した.著者らは単独培養では呈色しないが改めて対峙培養を行うと再現良く帯線が黄色に呈色する組合せを発見した.発見した組合せは,Trichoderma 属菌株同士であった.この知見により著者らは共培養の有効な組合せの傾向をつかむことを目的に異種 Hypocrea/Trichoderma 属かつ,単独培養で色素生産が見られない10菌株を用いた全45組の対峙培養を行った.その結果27組合せで色素を生産した.そこで,色素を生産した1組合せ T. harzianum FKI-5698 と T.atroviride FKI-5700 の混合培養液から,対峙培養および混合培養時に生産された新規黄色色素化合物 coculphiloneを取得した.さらに,coculphilone 生産がどのような条件下で誘導されるのか検討した.その結果 coculphilone は両菌の単独培養液を1:1で混合した場合生産された.一方,培養液を濾過滅菌した濾液,殺菌を施した菌体を添加した場合では生産されなかった.そこで,二槽式透析フラスコを用いた検討を行ったところ,coculphilone は生産された.したがって,透析膜を通過可能な物質を介して coculphilone は誘導されると示唆された.

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