鳥取砂丘海岸の砂浜の海泡中の好砂海生菌の胞子と海浜の砂粒上に形成される子実体を約2年半定期観察し,13属22種〔子嚢菌21種(無性世代4種を含む),担子菌1種〕を同定した.出現菌種を既報と比較したところ,鳥取砂丘海岸の海生菌相は,太平洋沿岸のそれとはやや異なり,日本海沿岸域から報告されている種を多く含むことが確認された.出現菌のうち9属15種は胞子が海泡に含まれる季節的傾向により通年型,温暖型,寒冷型の3タイプに類別できた.さらに,これらは温度に対する菌糸生長や胞子形成の特性が異なっており,海泡中の胞子における出現種数の季節変動の要因になっていることが示唆された.さらに,各種基質(流木・海藻・羽毛・重油)を用いた菌種ごとの基質資化性を調査した結果,種ごとに異なる基質嗜好性が明らかとなり,その違いが海浜に生息する好砂海生菌の種多様性に寄与していると考えられた.
日本で採集したイグチ類子実体に寄生するHypomyces 属菌の分類学的検討を行った結果,H. boletiphagusならびにH. completusを日本新産種として記載した.それぞれの種についての詳細な記載文と図版を掲載した.
日本新産のオオフクロタケ属菌,Volvopluteus earlei (ヒメシロフクロタケ)について,新潟県と千葉県で採集された標本に基づき,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.Volvopluteus earleiはかさが径50 mm以下と小型である点,担子胞子長径の平均値が12 µm以上である点,側シスチジアを欠く点,そして縁シスチジアに嘴状突起を持つ点により特徴づけられる.分子系統解析の結果,日本産標本の核rDNAのITS領域は,インド,アフリカ大陸およびヨーロッパ産V. earleiのものと一致する塩基配列を有し,本菌が複数大陸に広域分布することが示された.
クラドスポリウム属菌とオーレオバシディウム属菌の防除を想定し,平板培地混釈法を用いて市販のラベンダー油と同油のモノテルペン類6成分の抗カビ活性を非接触実験系で評価した.その結果,Cladosporium cladosporioides NBRC 6348に対する温度25℃・10日間のラベンダー油のMIC(最小発育阻止濃度)は1.0%(v/v),Aureobasidium pullulans NBRC 6353では1.5%(v/v)を超えた.グリセリンを培地に添加して水分活性(Aw)をコントロールの0.99から0.89に低下させることで両菌株に対するMICは0.5%(v/v)に低下した.モノテルペン類では(-)-カルベオールの抗カビ活性が高く,両菌株に対してAw = 0.89でMIC = 0.1%(v/v)であった.
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