本研究の目的は, 暁星小学校聖歌隊における男子児童の発声技能の習得過程と習得に必要な指導の条件を解明することである。発声の問題が浮上してからその問題に教師と児童が繰り返し取り組む場面を観察し, 教師にインタビューを実施した。そしてそこで得られたデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて分析した。その結果, 《指摘と練習方法の提示》というカテゴリーを中心に, 問題の発生, 発声の変化, 技能の停滞, 問題の絞り込み, 問題の黙認, 習得の確認, 技能の定着という7つのサブカテゴリーが抽出された。発声の技能を定着させるためには, ①単純で具体的な練習を行うこと, ②問題の絞り込みや習得の確認を行いながら, その時の児童に適した練習を見出し, 多様な指導の方策を取ること, ③児童の意欲を保ったり, 成長期にある児童の喉を守ったりするために, 時には問題の黙認を行う必要があることが示唆された。
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