本研究の目的は, 教師と児童あるいは児童同士がどのように音楽を共有するのか, その過程で児童がどのように楽曲を解釈し, その表現意図を, 歌唱を通して表現するのかという点から歌唱の教授・学習の過程を解明することである。暁星小学校聖歌隊の活動を参与観察し, 半構造化インタビューを実施し, そこで得られたデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて分析した。その結果, 《問題の発見と共有》というカテゴリーを中心に, 〈周囲の音や自分の声の知覚〉, 〈楽曲の特徴の把握〉, 〈歌詞の理解のための学習〉, 〈周囲の音との調整〉, 〈統合的な解釈を伴う歌唱〉, 〈表情の乏しい歌唱〉, 〈表現のゆらぎがある歌唱〉という7つのサブカテゴリーを抽出し, それに基づいた考察において, 表現に関する問題の発見が必要であること, 合唱のような集団での表現行為には児童間で問題を共有する必要があることを明らかにした。
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