本研究では, 創作行為におけるイメージと音楽, 自己と他者の関係性をラカンの鏡像段階論の視点から捉えなおすことで, 創作教育の教育的意義を新たに見出すことが目的である。ラカンは, 主体が常に自己を喪失しており, 他者に投影されることで自我 (自己認識の像) を得ていると主張している。この理論から導かれるのは, イメージも音楽も, 他者として自己を投影している意識対象の「もの」ということであり, そこから, 創作は, 「音」を音楽へと構成することそのものによって成り立つのであって, イメージを発展させれば音楽をつくることになる, というのではないということである。それは, 創作教育で最も重要なことが, 「音」を音楽へと構成する〈技術〉を教えることであることを意味する。これらの見解から, 創作には自己を認識する行為としての意義と, 社会における他者とのコミュニケーションを生成するきっかけとしての意義があることが明らかになった。
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