産業精神保健
Online ISSN : 2758-1101
Print ISSN : 1340-2862
32 巻, 3 号
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特集 パワーハラスメント防止と産業精神保健
  • 大庭 さよ
    原稿種別: 特集
    2024 年32 巻3 号 p. 245-247
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー
  • 岡田 康子
    原稿種別: 特集
    2024 年32 巻3 号 p. 248-251
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    私達が「職場のいじめ嫌がらせ」という現象に注目し,その実態を調査し始めたのは2001年であった.その現象を「パワーハラスメント」と命名し,研究,報告を繰り返しながら企業の担当者と共にその対策を考え続けてきた.その後,パワハラへの関心が高まり社会的問題として取り上げられてきたが,2019年の労組施策総合推進法の改正でパワハラ防止が義務付けられた.その間デジタル化によって職場は大きく変化し,仕事の進め方や意識も大きく変化してきた.また,新型コロナウィルスの蔓延はそれに拍車をかけた.これらの環境変化は,ハラスメントの様相や発生する要因の変化にも影響していると思われる.この間に変化したパワハラのさまざまな実態に触れ,対策を提案してきたクオレ・シー・キューブの活動とあわせて法制化への動きを語り,現状を踏まえながら今後の課題を取り上げる.

  • 津野 香奈美
    原稿種別: 特集
    2024 年32 巻3 号 p. 252-257
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    2023年度厚生労働省職場のハラスメントに関する実態調査によると,日本では労働者の2割が過去3年の間にパワーハラスメント(以下パワハラ)を受けていたことがわかっている.パワハラには,性格特性等の個人的要因によって引き起こされるパワハラ(個人的パワハラ)と,組織の構造的要因によって引き起こされるパワハラ(構造的パワハラ)の2種類がある.そこで本稿では,どのような背景要因があると人はパワハラをしやすいのか,またどのような要因があると職場でパワハラが起こりやすいのかについて,これまでの研究で明らかになっていることを紹介し,その対応策について述べる.

  • 木内 敬太, 吉川 徹
    原稿種別: 特集
    2024 年32 巻3 号 p. 258-265
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    パワーハラスメント(パワハラ)は,2020年に精神障害の労災認定基準の心理的負荷評価表に独立した項目として明示された.以後,支給決定件数が最も多い出来事となっている.精神障害全体での労災の請求・支給決定件数は,特に生存事案において,2010年度から2023年度にかけて男女とも大きく増加している.男性生存事案において近年の支給決定件数の増加量に占めるパワハラの割合は31.9%と多かった.自殺事案については,請求・支給決定件数ともに男性の方が圧倒的に多いが,2023年度の自殺事案の支給決定件数におけるパワハラの割合は,女性で28.6%であり,件数は2件と少ないものの,一定の割合を占めていた.労災としての精神障害は今後一層顕在化することが予想されるが,特にパワハラを含む職域でのハラスメント対策については,労災補償状況の推移等を確認しながら,実効性のある対策の選定と官民あげての取り組みが必要である.

  • 原 昌登
    原稿種別: 特集
    2024 年32 巻3 号 p. 266-270
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    職場のパワーハラスメント(パワハラ)については,2019年の法改正によって,法律上の定義が定められるとともに,企業等の事業主に防止措置が義務付けられた.企業は法律上の定義をベースに社内規程等でパワハラを定義し,防止に取り組んでいるが,定義に当てはまらない言動については,パワハラではないことを理由に何も対応を取らないといった例も見られる.しかし,パワハラの定義に合致しないグレーゾーンの言動であっても,放置すれば企業に安全配慮義務違反等の責任が生じることがある点に注意が必要である.本稿では,パワハラの定義(いわゆるパワハラ3要素)の内容について整理するとともに,その定義に当たらない言動であっても対応が必要となりうる点について,関連判例も参考に検討を加えている.より多くの企業が,パワハラへの対応にあたり,法的な視点も意識することが重要であるといえる.

  • ―産業医の立場から―
    鎌田 直樹
    原稿種別: 特集
    2024 年32 巻3 号 p. 271-275
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    パワーハラスメントに関しては,令和2年6月1日に,事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針が適用となった.対策を考える上で,産業保健スタッフは公的機関の調査結果や代表的な判例から最近の動向を学ぶことは重要である.加えて,我々が日常的にセルフケアやラインによるケアに関する教育の際に使用している精神医学的アプローチなどもその対策として活用することも可能である.また,対策は産業保健スタッフ単独で行うものというより,これらの知見を企業内の各部門と共有しながら推進することが望ましい.本稿ではパワーハラスメントの定義,最近の国内での調査結果,事例学習のヒント,企業内で実施可能な介入手段や手法,いざ事態が生じたときの注意点について産業医の立場から整理する.なお,特定の団体や企業に関するパワーハラスメントに関する議論ではない.

  • ―臨床の現場から―
    津久井 要
    原稿種別: 特集
    2024 年32 巻3 号 p. 276-281
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    パワーハラスメントによる精神障害は,職域における「いじめ・嫌がらせ」という加害行為の結果生じるトラウマ反応性の病態であり,当座は適応障害の診断となることが多い.症状として不安感,抑うつ気分に加え,睡眠障害・悪夢・フラッシュバック・過覚醒・回避反応などを伴う傾向がある.職場環境調整をはじめとする治療的介入によってもこうした症状が6か月以上続く場合,「PTSD様症状を伴う持続トラウマ反応」もしくは「うつ病」へと進行する可能性が高い.こうなると治療反応性は乏しく予後不良であり,PTSDの「認知と気分の陰性変化」,複雑性PTSDの「自己組織化の障害」と類似した病態を呈し,深刻な社会機能低下へ至りやすい.こうした精神障害をきたした事例では,様々な介入によっても従前レベルに全般的機能が回復できることは少ないため事態は深刻である.パワーハラスメント被害は誰にでも起こりうるという大前提のもと,実効的な対応策を企業内で予め策定しておくことが必要不可欠であると考えられる.

  • 小林 由佳
    原稿種別: 特集
    2024 年32 巻3 号 p. 282-286
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    事業所におけるハラスメント事案では,容認されない行為を明確にして,処分によって行為者の反省を促すことになる.しかし,行為者の思考や行動様式が是正されないままでは同様の行為が繰り返されることがある.そのため,処分など「罰」を中心とした対処だけではなく,行為者の心理や環境的背景を紐解き,行為者の行動変容を促すことが重要である.本稿では,行為者の心理的側面を理解するための概念として,価値観,役割期待,反応的/能動的攻撃行動について解説し,認知行動モデルを用いてその行動様式を考察した.加害行為自体は否定されるべきであるが,周囲の者が行為者にレッテルを貼って否定したり排除したりすることのないよう適切な環境調整を行うことが必要である.産業保健職などの支援者には,ハラスメント行為の背景を理解し,行動の改善を信じる姿勢が求められる.

  • 和田 隆
    原稿種別: 特集
    2024 年32 巻3 号 p. 287-291
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    令和の時代,健康経営に取り組む企業は増えている.しかし,外見だけ“ホワイト”を取り繕っても,旧態依然とした企業体質や職場課題を放置したままであれば,パワハラの“芽”は残り続ける.外からの視点と内からの視点にギャップが生じれば,ワークエンゲージメントは低下していく.筆者はパワーハラスメントを「明確なパワハラ」と「感じるパワハラ」の2つに分けて考えているが,それぞれ特徴が異なり,対処法も異なる.パワハラ未満の「感じるパワハラ」は,部下からのSOSであり,「パワハラのヒヤリハット」だ.ヒヤリハットの段階で問題を解決していけば,「明確なパワハラ」は生まれない.パワハラは個人と組織が抱えている未解決問題の象徴である.「パワハラ」という組織において重要なサインを確認したら,放置することなく,職場改善につなげていく.それが結果として強い組織づくりにつながるはずだ.

総説
  • 山田 成志
    原稿種別: 総説
    2024 年32 巻3 号 p. 292-297
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    オープンダイアローグ(Open Dialogue: OD)はフィンランドで開発された精神医療システムであり,対話主義に基づいてセラピスト,患者,家族が対等な関係の中で対話を行う治療ミーティングが特徴である.本稿ではODにおける対話性を実現する因子に関する文献的考察を行った.その結果,ODの効果を最大化するためにはセラピストのオープンネスとオーセンティシティのバランスが重要であること,リフレクティングにおいて報告的および推測的マイサイドテリングが有用であること,セラピスト同士の信頼関係が治療効果に寄与することが示唆された.また,セラピストがよく用いる言い回しが対話の深まりに寄与することが示唆された.これらの因子を理解することで,より良い対話実践につながることが期待される.

資料
  • 永峰 大輝, 野原 理子, 石松 宏章, 吉川 徹
    原稿種別: 資料
    2024 年32 巻3 号 p. 298-303
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    日本産業精神保健学会のような様々な職種の会員が参加する学術大会では,参加者の興味関心のある話題は多岐にわたる.本調査では,第30回日本産業精神保健学会において,各会場の参加者人数を自動でモニタリングおよび記録が可能な機器(ビーコン)を用い,プログラム別と資格職別の参加者の動向把握を実施した.得られた結果から,今後の学術大会における参加者の動向把握システムの活用について考察した.調査の結果,全体の傾向として労働災害に関連するプログラムに参加者が集まっていた.職種別では,人数の多かった医師は全体と同じ参加傾向であったが,保健師・看護師,心理職,精神保健福祉士では,異なる参加傾向が示された.参加者の動向を明らかにすることができれば,大会の企画・運営や終了後のフィードバック資料として活用できる.今後は満足度調査なども併せて行うことで,より良い学術大会のシステムづくりにつなげることができる.

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