産業精神保健
Online ISSN : 2758-1101
Print ISSN : 1340-2862
33 巻, 1 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
大会長招聘講演
  • 上田 陽一
    原稿種別: 大会長招聘講演
    2025 年33 巻1 号 p. 1-5
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    近年,医学教育改革が急速に進んでいる.臨床実習開始前に共用試験(CBTおよびOSCE)に合格することで医師の指導監督下で医業を行うことができる診療参加型臨床実習が導入され,臨床実習から卒後研修までのシームレス化の促進が図られた.産業医科大学は,開学以来,「産業医学の振興と優れた産業医・産業保健専門職の養成と質の向上」を目的・使命としてきた.医学部教育および卒後教育においては,シームレスなキャリア形成プログラムを策定し,さらに,特色ある学生支援プログラムを実施している.文部科学省「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」(課題名:大学と企業の連携で育成する統合学生支援~働く人々が求める全人格的な「将来の産業医」の養成を目指して~)採択後,現在まで学生支援プログラムを継続・実施してきた.最後に,本学の目指すべき姿・あるべき姿として土屋健三郎初代学長による「建学の使命」および「産業医大未来構想2040~長期ビジョン~」の概要を紹介した.

教育講演1
  • 児屋野 文男
    原稿種別: 教育講演1
    2025 年33 巻1 号 p. 6-9
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    近年,仕事によるストレス(業務による心理的負荷)が関係した精神障害についての労災保険給付の請求が増加している状況にあり,併せて,精神障害の労災認定を受けてから1年以上療養を継続している,いわゆる長期療養者の数も増加傾向にある.令和5年7月に取りまとめられた「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」では,精神障害の療養及び治ゆに関して,被災労働者の就労と併せた考え方が示され,その上で,被災労働者の社会復帰を支援するためには既存の制度を活用するだけでなく,関係機関が連携し,被災労働者の社会復帰支援に関する取組を検討していくことが必要であるとの提言がなされた.このような背景を踏まえ,厚生労働省では,今般,新たな精神障害の長期療養者の社会復帰支援のための取組を行うこととした.

教育講演2
  • 細田 悦子
    原稿種別: 教育講演2
    2025 年33 巻1 号 p. 10-12
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    医療機関では,職場との連携強化のために2018年4月に,がん患者を対象に「療養・就労両立支援指導料」が新設された.これは,医療機関の医師が病状・治療計画・就労上の必要な配慮等について事業者に意見書を提供する枠組みで,2024年度迄に対象疾患は7つと拡大された.産業医科大学病院では,いち早く両立支援体制の検討を開始した.2018年1月には専門診療科としての両立支援科と,多職種が連携する組織として就学・就労支援センターを開設し,一早く両立支援活動を展開した.当院の目指す両立支援は,「患者(労働者)本人が治療や症状ならびに職場の変化に対して自立的な行動がとれる」ことである.今回,2024年3月までに1,500例の支援を実施した中で,医療機関での「治療と仕事の両立支援」がどのように行われているのかを紹介する.又,治療をしながら継続して働くためには,患者(労働者)のメンタルヘルス支援を含めた医療機関と職場との連携が今後期待される.

教育講演3
  • 立石 結夏
    原稿種別: 教育講演3
    2025 年33 巻1 号 p. 13-16
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    トランスジェンダー女性の処遇を巡る法的紛争から,職場のジェンダーと社会全体のルッキズムが見えてくる.経済産業省職員事件では,トランスジェンダー女性の女性用トイレの使用に反対していたのは男性上司たちだけであり,女性職員たちは原告のトランスジェンダー女性を応援していたのだが,女性職員たちの意見をよそに女性用トイレが制限され続けた.差別の原因は複合的で単純ではないが,依然として残る職場の男女差別によって,トランスジェンダー女性は,女性の劣位性をより濃縮にした形で背負わされている.社会に蔓延るルッキズムにも同じ構造が見て取れる.トランスジェンダー女性たちは,容姿が原因となって就職ができない等,ルッキズムが命や生活に直結する深刻な問題となっている.この世からルッキズムを完全に無くすことは困難であるが,一人一人が自分のルックスとの向き合い方を覚えて和解し,若い世代に伝えていく必要がある.

教育講演5
  • 熊﨑 博一
    原稿種別: 教育講演5
    2025 年33 巻1 号 p. 17-20
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    デジタル精神医療は,精神医学の分野において,デジタル技術やツールを活用して診断,治療,患者ケアの質を向上させる取り組みを指す.ユーザーだけでなく医療従事者にもアクセシビリティの向上が期待でき,医療の効率化に直結する.また医療の客観化にも寄与する.Digital Phenotypingは,精神障害に特有の特定の特性をコンピュータ化された測定ツールによってリアルタイムに捕捉することである.従来まで難関であった,抑うつ状態を有する患者の双極性障害発症のリスクの予測も可能である.コミュニケーションロボットは,精神科分野では特に自閉スペクトラム症(ASD)との親和性が指摘されている.ASD者は自身のネガティブなことに関しては,ヒトよりロボットの方が自己開示しやすいことが明らかになっている.ロボットはうつ病のアセスメント,吃音,緘黙症状を有する患者への治療としても有用との報告もあり,今後の活用に期待が高まる.

教育講演6
  • 池ノ内 篤子
    原稿種別: 教育講演6
    2025 年33 巻1 号 p. 21-24
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    若年性認知症は,就労や子育て,親の介護を担う世代で発症するため,職場だけでなく家庭的にも経済的にも影響や負担が大きい.初期には,仕事や生活場面での変化や体調不良,うつ症状がみられるが認知症に特有の症状ではないため,受診や診断が遅れやすい.軽度認知障害から初期認知症では,自立した生活と就労継続が可能と考えられるが,実際には離職者が多い.就労継続できる環境を整えるには,職場での合理的配慮と支援が望まれる.支援時は,本人の思いの尊重が大切だが,経時的に認知機能が低下するため意思決定が困難になっていく.話し合いの場では,時間的な余裕を持ち心理的に安全な場となるよう努め具体的な支援策を検討したい.本人や家族をとり巻く支援者間の連携は,多様な視点での情報収集や様々な切り口からの支援につながる.ネットワークの構築は,本人の状態に応じた支援を提供し,仕事と治療の両立の可能性を広げる上で有用である.

シンポジウム1
  • 川上 憲人, 荒川 豊, 林 剛司, 関屋 裕希, 江口 尚
    原稿種別: シンポジウム1
    2025 年33 巻1 号 p. 25-27
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    近年の職場環境の変化,特にリモートワークやデジタル化の進展により,労働者の孤立・孤独が増加している.これらは労働者の健康や生産性に悪影響を与え,組織全体にもマイナスとなる.第31回日本産業精神保健学会では,「孤立・孤独を予防する包摂組織の社会実装」をテーマにした研究の成果が報告された.川上憲人氏は,職場の孤立・孤独に関する理論や対策の現状と課題を説明し,荒川豊氏はオンラインツールを用いた孤立リスクの可視化手法を紹介した.林剛司氏は産業医の立場から,孤立の影響と実践例を示し,関屋裕希氏は認知行動療法に基づく個人向けプログラムの開発とその効果検討について報告した.本シンポジウムでは,これらの研究・実践を通じて,職域における孤立・孤独への対策の重要性が議論された.

シンポジウム2
  • 黒木 宣夫, 五十嵐 良雄
    原稿種別: シンポジウム2
    2025 年33 巻1 号 p. 28-30
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    リワークとは,心の健康問題を抱える休職中の人が職場に復帰するための支援制度であり,医療機関の実施する医療リワーク,地域障害者職業センターに実施する職リハリワークがあり,職リハリワークは「職場への適応に向けた本人と雇用主への支援」を目的とし,病状を回復させるための治療ではない点が医療リワークとの最も大きな違いがある.最近,障害者が就職を目的として利用する就職移行支援事業所において休職中の一般労働者を利用させる事業所(福祉リワーク)もみられており,休業者の病態に合わせたリワークが望まれている.佐々木一医師に医療リワークと福祉リワークの相違点,岡田雅人課長に職業リハビリテーション機関が実施するリワーク支援,小島健一弁護士に復職を準備する企業側の立場から業務的健康管理に準拠した私傷病休職規程(高尾メソッド),最後に全体を通して井原裕医師に指定発言をお願いした.

シンポジウム3
  • ~ポストコロナに向けた着眼点~
    岩﨑 進一, 廣 尚典, 出口 裕彦, 池ノ内 篤子, 向井 馨一郎, 原田 朋子, 松下 幸生
    原稿種別: シンポジウム3
    2025 年33 巻1 号 p. 31-34
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    本シンポジウムでは職場における精神疾患の早期発見,早期対応について焦点を当て,5人の登壇者がそれぞれの疾患別の異なる視点から議論を展開した.出口はうつ病就労者に関して,企業の体制や自覚症状の性差について述べ,異なった対応の重要性について述べた.池ノ内は高齢労働者の抑うつや認知機能障害の増加に対し,職場での早期発見と適切な対応と,個別の支援が重要であることを述べた.向井は強迫症に関してCOVID-19後,不確実性に対する不安から強迫症状が増加しており,早期発見と受診行動の促進のため個別アプローチと情報共有が求められることを述べた.原田は摂食障害に関して職場での対応は難しく,早期発見には,専門家の助言と対話を深めることの重要性を述べた.松下は依存症は否認が強く早期発見が難しいが,職場における影響は大きく職場での支援の重要性を述べた.各登壇者の議論は新たな視点を提供し,非常に有意義なシンポジウムとなった.

シンポジウム4
シンポジウム5
  • 真船 浩介, 佐藤 恵美
    原稿種別: シンポジウム5
    2025 年33 巻1 号 p. 39-41
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    精神障害への偏見は,「スティグマ」として,精神的健康に悪影響を及ぼすことが知られているが,その対策は確立されていない.本シンポジウムでは,職場においてスティグマの軽減を図るために,真に有効なメンタルヘルスリテラシーの向上を検討した.まず,発達障害に対するスティグマを通じて,メンタルヘルス不調の多様な個別性への不寛容について議論した.次いで,企業において,当事者や支援者といった見えない垣根を越えた対話による相互理解と組織改善の実践例をもとに,段階的にスティグマを軽減する方策を議論した.また,このような個人のヘルスリテラシーを発揮する機会を促す「対話」の仕組み等,組織においてもヘルスリテラシーが求められ,疾病等に関する専門的知識を獲得するだけでなく,多様な個々の事例に向き合うためには,批判的リテラシーの醸成も有用であると考えられた.

シンポジウム6
  • 谷 直道, 加藤 憲忠, 小山 智也, 小島原 典子, 江口 尚
    原稿種別: シンポジウム6
    2025 年33 巻1 号 p. 42-45
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    今回のシンポジウムでは,デジタルヘルステクノロジ(DHT)の現状と課題,活用可能性について議論が行われた.特に,DHTを活用したメンタルヘルス支援の重要性と,ガイドライン策定に向けた科学的エビデンスの蓄積や現場ニーズへの対応が中心テーマとなった.産業保健分野におけるDHTの導入においては,エビデンスに基づく有効性やユーザビリティの確保が重視される一方で,費用対効果や効果測定方法といった課題が指摘された.また,脱落率や情報セキュリティの課題も議論された.今回の意見交換を通じて得られたステークホルダーの多様な視点を,DeLiGHT(Developing Minds-compliant guidelines for general preventive intervention using digital health technologies for mental health)プロジェクトのガイドラインに反映させる方針が示された.今後,迅速かつ柔軟な対応が可能な指針を策定することで,DHTを活用したメンタルヘルス支援の普及と質の向上が期待されている.

シンポジウム7
  • 田中 克俊
    原稿種別: シンポジウム7
    2025 年33 巻1 号 p. 46-48
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    神戸市職員X氏は,情緒不安定性パーソナリティ障害および双極性気分障害の診断を受け,職場で自傷行為や同僚への脅迫行為などの問題行動を繰り返した結果,分限免職処分を受けた.この処分を巡り,地裁と高裁で判断が分かれた.地裁は,治療可能性や配置転換による改善の余地を重視し,処分を取り消した.一方,高裁は疾患の持続性と再発リスクを優先し,職場安全の観点から処分を有効とした.この判決について,精神科医からは,適切な治療と環境調整により社会的適応が可能であるが,職場ストレスが症状悪化を招いた可能性も指摘された.本事例は,精神疾患を抱える職員への対応における職場安全と個人の権利のバランスの重要性を示しており,治療可能性の評価や柔軟な職場環境の調整が重要であることを示唆している.

シンポジウム8
  • ―産業保健職の新たなサポーターとして―
    佐倉 健史
    原稿種別: シンポジウム8
    2025 年33 巻1 号 p. 49-52
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    生成AIの活用に関する期待とリスクを踏まえ,心理職部会によるシンポジウムを開催した.福祉分野で生成AIを活用する田中康雅先生は,業務効率化や合理的配慮を実現する事例を紹介し,倫理的課題やプライバシー保護の重要性に触れた.大庭さよ先生は,心理職の立場から職場復帰支援や合理的配慮における生成AIの有用性を強調し,具体的な課題と解決策を提示した.近藤雅子先生はEAP事業における生成AIの活用可能性を示し,24時間対応や人材確保への寄与に加え,不適切対応のリスクを指摘した.ディスカッションでは,生成AI活用におけるセキュリティ対策や倫理的問題が議論され,合理的配慮の実現に向けた可能性が共有された.生成AIは効率化や支援者負担の軽減に貢献すると期待されるが,ITリテラシー向上や課題解決が必要である.

シンポジウム9
  • ―公平性を問い直す―
    佐藤 恵美, 山本 和儀, 佐倉 健史, 大谷 英子, 渡辺 洋一郎
    原稿種別: シンポジウム9
    2025 年33 巻1 号 p. 53-56
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    個々のさまざまな属性や価値観,考え方などの違いを尊重し,これらの多様性を組織内で受け入れ活用する「D&I」の概念は,日本の企業においてさまざまな取り組みが推進されつつある.女性活躍推進を皮切りに多様な働き方が求められるようになり,さらに労働人口の減少等から高齢雇用者の活用,ユニバーサルデザイン理念の社会的浸透などによる障害者の雇用促進など,さまざまな形で取り組みが推進されてきている.さらに最近では,日本でも従来の「D&I」に「Equity」を加えて,「DEI」という概念が広がりをみせている.「Equity」とは,日本語で「公平性/公正性」と訳され,個々の違いに合わせてそれぞれ必要な調整や支援を行うことで公平を実現するという考え方である.当シンポジウムでは,「Equity」の概念を整理しつつ,「Equity」を阻む障壁を検討し,さらに,一企業における取り組み事例を紹介しながら,「Equityの視点からD&Iとは何か」を多角的に検討した.

シンポジウム10
  • 鎌田 直樹, 吉村 靖司
    原稿種別: シンポジウム10
    2025 年33 巻1 号 p. 57-59
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    本シンポジウムでは,若手他職種が登壇し,職場復帰支援をとりまく現状と課題を議論した.参加した若手産業医,精神科医,産業看護職,EAP心理士,精神保健福祉士は,それぞれの視点から職場復帰支援の課題と解決策を議論した.課題に関しては,産業医の勤務頻度,主治医との連携,ラインによるケアのあり方,安定就労維持の難しさなどについて触れられた.これに対して,職種間連携のあり方の工夫,ラインによるケアの工夫の余地,復職準備性評価のあり方,EAP機能の活用の可能性について述べられた.加えて,復職に際して必ず議論され重要な問題である自動車運転に関する評価基準のあり方など今後の課題も最新の研究を交え触れられた.

シンポジウム11
  • ~職場メンタルヘルスにおけるパラダイムシフト~
    渡辺 洋一郎, 丸岡 秀一郎, 南雲 智子, 後藤 剛
    原稿種別: シンポジウム11
    2025 年33 巻1 号 p. 60-63
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    「一様性」が基本原理の我が国において「多様性の受容」は容易ではない.「仕事に人を合わせる」企業風土から「人に仕事を合わせる」風土へと大きなパラダイムシフトが求められる.そのための問題点と課題を検討した.

    1)就労者の「多様性」を強みとして「受容」し,よりよい生き方につなぐ「ウェルビーイング経営」がワーク・エンゲイジメントを高める.自己成長型の職場を目指すべく職員教育や職場環境調整を行うことが重要.

    2)DE&Iは,「やらされ感」はないものの「安心感」はない.年功序列,終身雇用からの脱却には心理的抵抗やアンコンシャスバイアスが根強く,解決すべく課題が少なくない.

    3)経営層の意識改革,人事労務担当者・管理監督者の能力や労力,労働者自身の自己分析と実行力が求められる.ウェルビーイング経営の理解,人事担当者の評価と決定権,管理監督者の専門性と適正報酬,労働者への情報と自己研鑽機会が重要.

シンポジウム12
  • 日野 亜弥子, 小田上 公法, 上田 梢江, 日笠 ちはる, 木島 玲緒人, 原田 有理沙
    原稿種別: シンポジウム12
    2025 年33 巻1 号 p. 64-67
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    本シンポジウムでは,産業保健現場における診断書をめぐる問題について,産業医,保健師,精神科主治医,両立支援科医師がそれぞれの立場から課題と解決策を議論した.診断書をめぐる主な課題として,診断書の内容の曖昧さや職場制度との不一致,情報共有の不足が挙げられた.診断書が適切に活用されることで労働者の復職支援が円滑に進むことが期待される一方,連携が不十分な場合には職場に混乱を招くリスクがあることも指摘された.これらの課題の解決には,診断書の記載や解釈の工夫に加え,関係者間の連携強化が求められる.本シンポジウムで示された知見が,診断書をめぐる問題の解決の一助となることを期待する.

ワールドカフェ開催報告
  • 田原 裕之, 後藤 剛, 近藤 智, 吉田 麻美, 井上 彰臣, 杉村 直哉, 武井 勇樹, 田村 三太, 太田 由紀, 林 幹浩, 松田 ...
    原稿種別: ワールドカフェ開催報告
    2025 年33 巻1 号 p. 68-72
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    日本産業精神保健学会には様々な職種の会員および大会参加者がいる.職種をまたいだ交流の促進について第28回大会からシンポジウム等で検討が行われた結果,第30回大会の大会企画として実地開催されたワールドカフェを第31回大会でも開催することとなった.第30回大会では部会等により異なる検討テーマ(個人対応または組織取組の事例)のテーブルが設けられたが,より小規模となる第31回大会では全テーブル共通の個人対応事例とした.開催当日は参加者22名と企画運営メンバーが会場に集い4ラウンドの討議を行った.開催後アンケート(回答数13件,回答率59.1%)では「次回以降の大会で開催するなら他の人に参加を勧めたいか」旨の設問に対して「とてもそう思う」が12件(回答数の92.3%)となるなど好意的な回答が多くを占めた.本企画が今後の多職種交流および学会のさらなる発展に貢献することが期待される.

第31回産業精神保健学会 理事長賞受賞講演
  • ~産業保健師としての実践・研究・教育を振り返って~
    錦戸 典子
    原稿種別: 第31回産業精神保健学会 理事長賞受賞講演
    2025 年33 巻1 号 p. 73-78
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    理事長賞受賞を機にこれまでの歩みを振り返った.産業保健師としての実践の支えになったのは,学会での情報収集を始め職場内外からの助言を得たことと,研究的な視点から現状分析や活動評価を行うことができたことだった.職場のメンタルヘルス対策,治療と仕事の両立支援,中小企業における産業保健活動の推進方策などにおける産業看護職の役割に焦点をあてた研究活動から,産業看護職の支援特性として,労働者・職場関係者等との信頼関係に基づき,広域の健康課題に対応すること,対象者の主体的・自律的な行動を引き出すこと,多職種・多機関との連携・協働の促進,多層的な支援の連動,等が導き出された.これらの支援特性から,産業看護職を職場の最前線に配置し,必要に応じて産業医,心理職,医療機関等につなぐ支援モデルが最も効率的・効果的で,中小企業で働く人々を含むすべての働く人へ支援を届けるための解決策と考えられる.

島悟賞受賞記念講演
  • 真船 浩介
    原稿種別: 島悟賞受賞記念講演
    2025 年33 巻1 号 p. 79-81
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    本稿では,この度の栄誉への御礼に代えて,本学会での活動を概観した.本学会では,2007年の第14回大会から2020年の第27回大会まで毎年,学会発表等を通じてご指導頂く機会を頂いた.この間の発表の多くは,参加型職場環境改善に関するテーマで発表させて頂いたが,他にも幅広くご指導頂いた.働きやすい職場づくりは,労働者の精神的健康と生産性向上に欠かせない要素であり,継続的な研究と実践が必要である.今後も研究と実践の洗練を通じて,産業精神保健学の発展に貢献し,さらなる社会還元を目指したい.

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