産業精神保健
Online ISSN : 2758-1101
Print ISSN : 1340-2862
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大会長講演
  • 大庭 さよ
    原稿種別: 大会長講演
    2026 年34 巻1 号 p. 1-4
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    本講演は,大会テーマ「変化の時代におけるキャリアの多様性」を踏まえ,多様な人々が「共に働く」ことをいかに支援し得るかを,キャリアの視点から検討した.ワーキング心理学によれば,働くことは生計獲得に加え,他者とのつながりと自己決定を支える営みである.近年の変化として①テレワーク定着による影響 ②雇用形態多様化に伴う心理的契約の差異,③個別事情への配慮と公平性について論じた.キャリア構築理論を枠組みに「何を・どのように・なぜ」に加え「誰と(関係性)」を重視し,若手適応やパワーハラスメント対応等の実践から,変化の時代の中で 多様な人々が「共に働く」ことを支援していくことは,違いを持つ人々の新たな関係性を作っていくプロセスを支援していくことではないか,と論じた.

教育講演1
  • 三柴 丈典
    原稿種別: 教育講演1
    2026 年34 巻1 号 p. 5-9
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    挙示した具体的事例からも窺われるように,安全・健康配慮義務は,結果責任ではなく,職域におけるリスク管理のための手続的義務である.法令遵守の有無にかかわらず,予見可能性・回避可能性に応じて,講じ得る手段(物的措置と人的措置)を尽くすことが要請される.また,義務の主体は,労働契約当事者に限られず,業務上の指揮命令を行う者など,対象者の安全や健康に影響する立場にある者にも及び得る.メンタルヘルス不調などの作業関連疾患への対応では,健康情報の取扱いが不可欠となるので,①本人同意(取得の努力),②産業保健職などの責任者による生情報管理,③情報の加工提供,④取扱い規程の整備,という4つの原則を基本として,それをどの程度厳格に運用するかを,①偏見を生じ易い情報か,②職域での対応が可能か,③職場秩序に影響するか,という3つの基準で判断すべきである.

教育講演2
  • 岡久 潤
    原稿種別: 教育講演2
    2026 年34 巻1 号 p. 10-13
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    近年,仕事によるストレス(業務による心理的負荷)が関係した精神障害についての労災保険給付の請求が増加している状況にあり,併せて,精神障害の労災認定を受けてから1年以上療養を継続している,いわゆる長期療養者の数も増加傾向にある.

    厚生労働省では,被災労働者の社会復帰を支援するためには既存の制度を活用するだけでなく,関係機関が連携し,被災労働者の社会復帰支援に関する取組を進めていくことが必要であるという認識の下,新たに精神障害の長期療養者の社会復帰支援のための取組を始めたところであり,その現状と課題についての説明を行うもの.

  • 田川 精二
    原稿種別: 教育講演2
    2026 年34 巻1 号 p. 14-17
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    2024年12月,労災受給中の精神障害長期療養者が社会復帰していくために就労移行支援事業所を利用するという内容の通知が国から出された.これまで労災受給中の精神障害長期療養者を支援したことのある就労移行支援事業所はほとんどなく,産業医が就労移行支援事業所を利用した経験もほとんどないと思う.支援は手探りで,試行錯誤しながら進めることになるだろう.しかし就労移行支援事業所の能力は様々,まずは力のある事業所を選ばなければならない.①精神障害者を主な対象とする事業所,②就労移行「単独型」,③実績(就職者数),④定着支援を受けている,⑤リワークの経験がある等を基準に就労移行事業所を選ぶのが良い.

教育講演3
  • 津久井 要
    原稿種別: 教育講演3
    2026 年34 巻1 号 p. 18-21
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    パワーハラスメントによる精神障害は,職域での「いじめ・嫌がらせ」という加害行為の結果生じるトラウマ反応性の病態であり,深い傷痕を個人に刻印してしまう.

    発症当初は不安・不眠・抑うつ気分に加え,悪夢・ブラッシュバック,過覚醒,回避反応などを認め「適応障害圏の病態」が該当するが,自宅療養・職場環境調整などの介入によりストレス因を減じても症状が6か月以上続く場合は「PTSD様症状を伴う持続トラウマ反応」もしくは「うつ病」へと移行することが多い.こうなると治療反応性に乏しく,PTSDの「認知と気分の陰性変化」,もしくは複雑性PTSDの「自己組織化の障害」に近接した病態が前景に立ち,広範な社会機能低下へと至る.

    パワーハラスメントは人為的行為であり,対策可能なはずである.どの部署でも・誰にでも生じ得るという前提のもと,機動性のある対応システムを構築することが必要不可欠である.

教育講演4
  • 上谷 実礼
    原稿種別: 教育講演4
    2026 年34 巻1 号 p. 22-25
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    ポリヴェーガル理論は,米国の精神生理学者Stephen Porgesが提唱した神経生理学的モデルで,自律神経系を三層構造で捉える.背側迷走神経系(シャットダウン反応),交感神経系(闘争・逃走反応),腹側迷走神経系(社会的関与と安全感)という三つの階層が,安全・危険・脅威の感覚に応じて生理的反応や対人行動に影響を与える.

    本稿では,産業保健における実践的応用として三点を紹介する.第一に,メンタルヘルス不調や職場不適応の背景にある神経系の状態を見立て,「安全感」をもたらす支援方法を検討する.第二に,面談場面での支援者の身体言語や声のトーンなど非言語的要素が,安全感や信頼関係の形成に寄与する点を事例とともに解説する.第三に,支援者自身のストレスマネジメントとセルフケアへの活用法を紹介する

    神経系の視点から支援の質を再考し,持続可能な産業保健実践を目指す.

教育講演5
  • 阿部 裕
    原稿種別: 教育講演5
    2026 年34 巻1 号 p. 26-29
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    東京都心に位置する多文化クリニックの2024年,1年間の外国人の新患患者332人について分析した.内訳は,アメリカ,韓国,ブラジル,ペルーの順に多く,ヨーロッパ,中南米やアフリカからも来院している.来談経路別では,インターネット,口コミ,医療機関,相談機関,家族,学校の順である.発病の誘因については,家族と職場の両者で1/3強を占めており,出来事,多文化,学校,対人関係,自分の病気が続いている.20歳以上,295人の診断はうつ病が約1/3を占め,続いて,不安障害,ADHD,適応障害,双極性障害,PTSD,パニック障害,ASDの順である.特記すべきは,アメリカを中心とした,欧米圏にADHDの診断が多く,すでに母国で診断がついて治療継続を希望する患者の増加と難民を含めたPTSDの診断が多いことである.多文化クリニックのグローバル化には,診療所の多言語化や医療通訳者の必要性,および医療機関と外国人支援機関等とのネットワークの構築が課題である.

シンポジウム1
  • 廣川 進, 松井 知子
    原稿種別: シンポジウム1
    2026 年34 巻1 号 p. 30-33
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    近年,産業保健においてキャリアの視点が重視されるようになってきた.産業保健の文脈においてキャリアをどのように捉え,どのような支援を行うか,多くの産業保健職が創意工夫を重ねているのが実情と思われる.人生100年時代を迎え,シニア世代はもとよりミドルシニア,若年世代にとっても「今後,どのように生きるのか」がますます重要になっている.本シンポジウムでは,世代をこえて,自分らしく充実したライフキャリアを実現するために必要な「マインドセット」と「スキル」,そして,人生の転機をどのように活かすのかについて,多角的に探求することを目的とした.シンポジストの実践事例の経験を通じて,各世代が直面する課題や不安を実際にどのように乗り越えていくのか,新たなチャレンジにどのように向き合っていくのかなどの協議,検討を行った.

シンポジウム2
  • 大庭 さよ, 島津 美由紀
    原稿種別: シンポジウム2
    2026 年34 巻1 号 p. 34-37
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    現代社会は急速な変化の中で,企業における従業員のWell-being(ウェルビーイング)の重要性が高まっている.健康経営は,従業員の健康を経営戦略として捉え,企業の持続的成長や社会的価値の創出に直結するといえる.本シンポジウムでは,花王,JAL,出光興産,パナソニック,中小企業の実践例が紹介され,各社が健康経営の推進や企業間連携,生活習慣病予防,メンタルヘルス対策,組織横断的な人材育成など多様な取り組みを展開していることが紹介された.特に企業間連携による取組みが,知見の共有や社会全体の健康増進に寄与している点が示された.今後は,企業規模や業種を問わず「共に創る」視点でWell-beingを追求することが,企業の持続的成長と社会全体の幸福につながると考えられた.

シンポジウム3
  • 小島 健一, 佐藤 恵美
    原稿種別: シンポジウム3
    2026 年34 巻1 号 p. 38-40
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    本シンポジウムは,「発達特性を踏まえた合理的配慮とキャリア開発」を主題として,発達障害およびその特性傾向を有する人々が,職場において自分らしく働き続けるための支援のあり方を多面的に検討することを目的としたものである.診断の有無を問わず,特性に起因する困難が理解されず,表層的な対応に留まる職場は依然として多い.合理的配慮とは,特性に基づく認知機能の特質や行動傾向を理解し,業務内容や環境を柔軟に調整するプロセス全体を指すものであり,単なる「優遇」や「免除」ではない.本討議では,特性理解に基づく具体的な実践知を共有し,強みを生かすキャリア支援の方途を,研究と実務の双方の視座から考察した.

シンポジウム4
  • 田原 裕之, 鎌田 直樹, 宋 裕姫, 辻󠄀 洋志, 澁谷 亮, 加藤 憲忠
    原稿種別: シンポジウム4
    2026 年34 巻1 号 p. 41-44
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    産業医のバックグラウンドにはさまざまな専門性がある.本シンポジウムでは,産業医以外にも様々な専門性を持つ医師が登壇し自身の専門性と産業医活動について議論した.5名の演者は精神科医が2名,呼吸器専門医・MPH,病理医,睡眠医学・東洋医学・心療内科専門医が各1名であり,それぞれの視点から自身のキャリア,専門性が役立った部分,業務に支障があった部分,これから産業医を目指す方へのメッセージに加え,専門領域から習得した経験,概念などの産業保健への活用や応用についても見解を述べた.また,産業医が医師である理由・必要性について,欧米の産業医学の概念に基づく学問・実践の中に本質が見出せること(他職種との棲み分け)や医師としてその専門性に基づいたエビデンスの活用の中に産業医が医師である理由・必要性があるという見解が挙げられた.さらには,これから大きく変わる社会の中で産業保健のあり方を多職種で議論することの重要性にも触れた.

シンポジウム5
  • 石塚 真美, 田島 麻琴, 笹原 信一朗, 沢口 昌裕, 加藤 久美子
    原稿種別: シンポジウム5
    2026 年34 巻1 号 p. 45-48
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    働き方改革やAI技術の発展により急速に変化する職場環境において,豊富な経験を持つベテラン社員が新たな適応を求められる場面が増加している.一方で,ベテラン社員自身が変化に対する戸惑いや不安を感じるケースも少なくない.本シンポジウムでは,アーロン・アントノフスキー博士が提唱した健康生成論における首尾一貫感覚(Sense of Coherence: SOC)の「把握可能感」「処理可能感」「有意味感」の三要素を理論的基盤とし,産業看護職をはじめとする多職種が連携してベテラン社員の強みを引き出す具体的な支援のあり方について検討した.変化する環境においてもベテラン社員が自身の価値を再発見し,組織への貢献感を維持しながら継続的に成長・活躍できる実践的な支援策について事例を交えて議論し,産業精神保健における新たな支援の実際を探った.

シンポジウム6
  • 佐々木 孝治
    原稿種別: シンポジウム6
    2026 年34 巻1 号 p. 49-50
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    精神障害による労災認定件数は増加しており,職場におけるメンタルヘルスの問題は大きな課題となっている.今般,労働安全衛生法の改正により,ストレスチェックについて,これまで努力義務とされてきた常用労働者数50人未満の小規模事業場も含め,全ての事業場に義務付けることとなった.

    治療と仕事の両立支援も重要である.メンタルの課題を抱えている人も存在する.しかしながら,事業場の取組は進んでいない.このため,今般,労働施策総合推進法の改正により,事業主に対し,両立支援について必要な措置を講じる努力義務を課すこととした.

    加えて,精神障害を有する労働者の雇用促進も重要である.

    それぞれの制度において,考え方や対象者が異なる側面があるが,精神疾患という観点で共通する点も多い.これらを適切に組み合わせて現場で対応していくためにも,様々な立場の関係者が共通の認識を持って協力しながら対応していくことが重要である.

  • 奥山 真司
    原稿種別: シンポジウム6
    2026 年34 巻1 号 p. 51-52
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    精神障碍者の安定就労実現のキーポイントとして①精神障害などに精通した精神科医や心理士によるトリアージと職場を介してのコーピング支援②社内に常勤している精神科医と心理士による人事と連携してのケースワーク③繰り返し行われる心理教育とアクセスフリーな対応窓口と教育システム④健康経営の一環としての人への投資⑤経営層と上司に対する丁寧な(ポジティブサイコロジー的)心理教育⑥経営層への継続的な(ウェルビーイング経営的)心理教育などを挙げ,それらを加味して弊社において行い,全ての従業員の「Well-being:幸福感向上における取組み」として国内外に公開している取り組み(2025 TOYOTA Sustainability data book P 106–108)を実践例として紹介した.

  • 田中 和秀
    原稿種別: シンポジウム6
    2026 年34 巻1 号 p. 53-54
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    精神障碍者雇用の問題点として,精神障害者は1年定着率が低いことが指摘されています.また雇用定着を妨げる要因としては身体障害に比べて精神障害では,体力の問題・再発の問題そしてマッチングの問題が関与すること.また仕事を続ける上では休みや休憩を活用すること,コミュニケーションを容易にすること,そして定期的な相談があることなどが挙げられ,主治医の関わりが重要と思われます.

    精神障碍者雇用の安定就労のためには,「自分の取扱説明書(トリセツ)」のような書類が有効です.またこの情報にWAIS-IV,ASRS,AQの結果を踏まえ,主治医による情報提供を有益なものにする方法が望ましいと思われます.これらにより,業務指示をスムーズに受け取る工夫や,障害特性に応じた業務の切り出し・新たな役割の創出などが可能になり,障碍者雇用の合理的配慮を得て,安定した就労へとつながる可能性が高まります.

  • 竹内 正司
    原稿種別: シンポジウム6
    2026 年34 巻1 号 p. 55-56
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    精神障害者の安定就労事例を人事労務担当者の立場で検証し,実現のポイントを3点に整理した.①障害者本人と社内外関係者(上司・同僚・人事・支援機関・産業医・カウンセラー等)との継続的かつ丁寧なコミュニケーション②本人の障害特性や状態に合わせた仕事内容と職場環境の調整③障害者本人の病状の安定の3点である.これらは精神障害者以外の社員の職場適応にも共通する基本原則であるが,精神障害者に対して現場の上司・同僚・人事が実践するにはハードルがある.本シンポジウムでの多職種討論を通じ,関係者・専門家と連携しつつ,創意工夫を重ねる重要性を再確認した.

  • 髙橋 瞳
    原稿種別: シンポジウム6
    2026 年34 巻1 号 p. 57-58
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    障がい者雇用の法定雇用率が引き上げられ,精神障がい者の職場定着支援の重要性が一層高まっている.企業においても採用時から配慮事項の確認や関係者間での情報共有が行われている.しかし,実際に職場での適応のプロセスは一様ではなく,現場では多くの試行錯誤が繰り返されている.

    本発表では,産業看護職の視点から,精神障がい者の職場適応支援における取り組みと課題について報告した.安定した就業継続の実現には①本人の病状理解や得意・不得意の見極め,職場環境や業務設計,労務管理上の課題を整理し,②関係者間で支援の方向性を共有し,③本人の意思と企業側の配慮事項をすり合わせながら合意形成を図ることが求められる.

    産業看護職に求められる役割は,単なる個人の健康支援にとどまらず,状況を多面的に把握し,職場と関係者を繋ぎ,現実的かつ持続可能な支援を調整する“コーディネーター”としての機能が極めて重要である.

  • 井上 洋一
    原稿種別: シンポジウム6
    2026 年34 巻1 号 p. 59-61
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    本稿は,障害者の安定的就労を確保するために不可欠な合理的配慮義務の適正運用について検討するものである.合理的配慮義務は,障害者の職務遂行を支援する義務である一方,安全配慮義務は労働者一般の生命・健康を守る義務であり,場合によっては就労制限を含む.両者はいずれも労働条件の調整義務であるものの異なる機能を持ち,安全配慮義務が合理的配慮義務の限界を画する.筆者は促進法36条の構造を「二段階審査モデル」として,①本来業務付随性と非本質的変更性を審査する一次審査(内的合理性),②過重な負担や安全配慮義務との相克を評価する二次審査(外的合理性)という二段階で整理する.日本電気事件に本モデルを適用すると,抽象的な裁判所の判断過程を可視化でき,公正なバランスを示すことが可能となる.結論として,合理的配慮義務は安全配慮義務との関係で枠付けられ,支援者が無理なく役割を果たせる法的運用フレームワークの構築が可能となる.

シンポジウム7
  • 森口 次郎, 小林 由佳
    原稿種別: シンポジウム7
    2026 年34 巻1 号 p. 62-64
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    2025年の法改正により,従業員50人未満の事業場にもストレスチェック(SC)が義務化されることとなった.しかし小規模事業場では,実施者の確保,費用負担,個人情報保護,少人数での集団分析など特有の課題が多い.本シンポジウムでは,シンポジストがそれぞれの立場から,小規模事業場におけるSC導入の現状と問題点,支援策を報告した.地域産業保健センターの支援強化,外部委託の質の確保,専門職間の連携促進,事業者への制度理解の向上,個人情報管理の整備などが重要とされた.討論では,多職種連携のあり方,少人数集団での分析方法,IT環境が乏しい従業員への対応,SCを産業保健活動の入口として活用する意義などが議論され,小規模事業場での円滑な義務化に向けた課題が共有された.

シンポジウム8
  • 後藤 剛, 丸岡 秀一郎, 高野 知樹, 石澤 哲郎, 渡辺 洋一郎
    原稿種別: シンポジウム8
    2026 年34 巻1 号 p. 65-68
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    2015年に開始されたストレスチェック制度は,現在多くの事業場で実施されているが,集団分析結果を職場環境改善につなげる取り組みは十分とはいえない.本シンポジウムでは,制度の目的は,メンタル不調者の発見等の二次予防のみならず,労働者自身の気づきや職場環境改善といった一次予防が重要であることを確認した.分析結果から問題点を指摘するだけでなく事業所内での好事例を共有することが,組織全体の前向きな変化につながる.小規模事業場においても,経営層の理解・協力や産業保健スタッフの活用によって実効性ある改善ができうることが示された.その一方,中小企業では制度の理解不足や人員・時間・コストの制約が課題である.今後実施される50人未満の事業場でのストレスチェック義務化においても議論となるところであろう.集団分析結果をもとに毎年改善を積み重ね,数値だけでなく背景や対話を重視することが,職場環境改善につなげる鍵といえる.

シンポジウム9
  • 田中 克俊, 小島 健一
    原稿種別: シンポジウム9
    2026 年34 巻1 号 p. 69-70
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    職場のメンタルヘルスにおいて,法律家との連携を早期から行う重要性が議論された.これまで法的支援はトラブル発生後に行われることが多かったが,近年は精神的不調やハラスメント,復職判定など制度だけでは処理しきれない複雑な事例が増えている.早期に法律家が関与することで,就業規則の整備や対応方針の妥当性確認,リスクの予防的評価が可能となり,人事・産業医・法律家が相互に役割を理解し支え合う体制の必要性が示された.また,対話を通じて当事者の納得を得る支援のあり方や,法的判断と医学的判断の溝を埋める実践も紹介された.総合討論では,制度整備よりも信頼関係の構築が重要であり,紛争化を防ぐには法律家を「最後の砦」ではなく「最初の相談相手」と位置づける発想の転換が求められると確認された.今後は,産業保健に精通した法律家の育成と,地域を超えた連携ネットワークの形成が課題として挙げられた.

シンポジウム10
  • 川上 憲人, 加藤 憲忠, 佐藤 大輔, 榎原 毅, 古川 壽亮
    原稿種別: シンポジウム10
    2026 年34 巻1 号 p. 71-74
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    本シンポジウムでは,産業精神保健におけるデジタルメンタルヘルスの最新動向と実装に向けた課題について議論した.経済産業省からは,健康経営の観点からデジタルメンタルヘルス施策の推進状況が報告され,エビデンスに基づくサービス選択を支援する「ウェルココTM」の運用開始が紹介された.学術領域からは,日本産業衛生学会を中心に作成された「メンタルヘルスに対するデジタルヘルス・テクノロジ予防介入ガイドライン」が提示され,DHTの有効性に関する科学的知見の整理と活用が進んでいることが示された.さらに,大規模研究RESiLIENTによるスマートフォンCBTアプリ「レジトレ!®」の効果検証と,AIによる個別最適化療法の可能性が報告された.今後は,職場における導入手順や対象者選定,利用促進策,現場での効果検証の方法を明確化し,総合的なメンタルヘルス対策の中での位置づけを検討することが重要である.

シンポジウム11
  • 山本 和儀, 渡辺 洋一郎
    原稿種別: シンポジウム11
    2026 年34 巻1 号 p. 75-79
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症当事者が自分自身の生きづらさの構造について考え・気づいていく中で,社会が神経の多様性に対するより深い洞察を得ることで,自分たちの生きづらさが和らぐことへの期待を込めて,ニューロダイバーシティという言葉を作ったと言われている.1998年に権利擁護運動から始まった,この概念がADHD,その他の発達障等も含み,2020年頃からはあらゆる人を対象と考える概念に拡大しようとしている.

    本シンポジウムでは当事者支援団体の代表高山恵子氏に,ニューロダイバーシティの概念をどのように理解して活動し,産業保健専門職に何を期待するのか,生嶋章宏氏には元総務人事部長のとして多様な人材の「個別性」に着目した活用や復職支援の工夫についての紹介,柿本啓介氏には産業医として多様な労働者の包摂と活躍推進のための産業保健活動を報告していただき,産業保健領域での今後の課題と目指すべき方向について総合討論を行った.

  • 高山 恵子
    原稿種別: シンポジウム11
    2026 年34 巻1 号 p. 80-81
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    本稿では,演者自身がADHD当事者として経験してきた治療効果,自己理解の重要性,そして社会・職場での支援のあり方について論じた.発達障害者支援法成立以前から活動してきた立場から,診断名にとらわれず特性理解を中心とした支援を行ってきた経緯を述べ,当事者が合理的配慮を求めるには,まず自己理解が不可欠であることを強調した.また,ニューロダイバーシティの観点を紹介し,発達特性を「欠点の補修」ではなく「強みの活用」として捉える転換の必要性に関して話題提供をした.特に2E(ギフテッドと発達障害を併せ持つ状態)の存在を挙げ,才能が開花する前に離職してしまう現状への危機感を述べた.さらに,疲れやすさや覚醒レベルの変動など当事者が言語化しにくい特性への理解が,能力発揮に直結すること,そして,心理的安全性と適材適所の環境こそが発達障害支援の中核であり,合理的配慮の重要性を当事者の視点から話題提供した.

  • 生嶋 章宏
    原稿種別: シンポジウム11
    2026 年34 巻1 号 p. 82-83
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    発表の冒頭に,発達系の特性が関係したメンタルヘルス不調により休職に至り,会社が嘱託精神科産業医の先生と連携を図りながら,個別に対応し,復職を果たした3事例を報告した.

    組織におけるマネージャーの役目は「人材を活かすこと」にある.そのためには,社員一人ひとりの特性を個別に見極め,良い部分ができるだけ発揮されるような場面を用意することである.また,良い部分ではない面が出ないように,様々な個別の配慮をする事も重要である.これらの基本的な考え方は,障がい者雇用においてもそのまま当てはまる.

    さらに,いわゆる発達系と呼ばれる社員への対応についても同じであり,全く特別なものではない.また,仕事や指導方法を公式に当てはめるが如く決めるのではなく,一般的特性はあくまで傾向値として頭に入れた上で,個人毎に本人とよく話し合いながら決めることが重要であり,その根拠を一律的に発達障害に求めてしまう事は危険な判断である.

  • 垣本 啓介
    原稿種別: シンポジウム11
    2026 年34 巻1 号 p. 84-86
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    日本では人口減少に伴う人材不足が深刻化しており,多様な人材の活躍推進が急務となっている.特に精神障がい者の就業率や待遇には依然として大きな格差が存在する.ニューロダイバーシティの視点は,発達特性を個性として捉え,職場での包摂性を高める可能性を持つ.企業の実践例を通じて,産業保健専門職が果たす役割と,従来のカテゴリの意義と「ニューロダイバーシティ」という概念の包摂性の両立による公正な社会の実現について考察する.

シンポジウム12
  • 小山 文彦
    原稿種別: シンポジウム12
    2026 年34 巻1 号 p. 87-91
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    このシンポジウムでは,働く人が罹患した疾病の治療のみならず,それぞれのライフイベントや闘病とともに多様に変化し得るキャリアに着眼した両立支援をテーマとした.そのため,キャリアコンサルタント,がん体験者,精神科医,保健師の多様な視点から,治療と仕事の両立支援についてお話しいただいた.構成は,日本キャリア・カウンセリング学会会長の馬場洋介先生(帝京平成大学大学院臨床心理学研究科)にご協力を賜り,本学会「治療と仕事の両立支援に関する委員会」の小山との共同座長をお願いし,合同シンポジウムとした.闘病とキャリアコンサルティングの現場体験から見えてきた支援の本質や,「伴走支援」となり得る傾聴や配慮の勘所,キャリアチェンジを経た複数の事例検討や,職場と当事者間の共通理解と乖離を見極めながらの介入タイミングなど,各シンポジストが携わる支援のナラティブが語られた.

シンポジウム13
  • 佐藤 恵美, 春日 未歩子
    原稿種別: シンポジウム13
    2026 年34 巻1 号 p. 92-94
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    本シンポジウムは,企業における若年層の早期離職・休職の増加という実務上の課題に対し,教育・企業人事・医療リワークの三領域から現状と打開策を提示する場である.若年層の不適応は,企業にとっては育成投資の毀損であり,本人にとってはキャリア形成の停滞と自己評価の低下を招く重大事である.タイトルの「職場適応とキャリア支援」は,単なる定着のテクニックではなく,①自己理解とSOS発信力,②職場側の理解と環境調整,③医療・産業保健・教育のシームレスな連携,という三位一体の基盤を指す.本討議は,配慮申請に至らない学生,企業内キャリア支援の実装,若年層リワークの最前線という三視点から,予防から復帰・定着までの連続線上で課題と実践を明らかにしたものである.

大会長招聘シンポジウム
交流シンポジウム
  • 渋谷 純輝, 辻󠄀 洋志, 吉田 瑞香
    原稿種別: 交流シンポジウム
    2026 年34 巻1 号 p. 100-104
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    AIとSNSの急速な普及により,専門職の情報発信は「内容の正確性」だけでは価値を示せず,「誰がその情報を支持しているか」というエンドースメントが決定的な意味をもつ時代に移行している.本シンポジウムでは,産業医,企業内保健師,看護師,精神科医がそれぞれの立場から,AI時代に求められる信頼・つながり・専門性を基盤とした発信のあり方を多角的に検討した.辻󠄀氏はSNS・リアル・学術を往還させるハイブリッド発信が信頼形成を促すとし,吉田氏は発信を支える倫理・コンプライアンスの重要性と,発信が専門職の成長とネットワーク形成を促す点を示した.坪田氏はSNSを起点とした社会課題の可視化と政策形成への影響を実例で示し,芳賀氏は継続的な発信は専門家の影響力を自ら創り出す営みであると論じた.総じて,AI時代を生き抜くためには,専門職が“選ばれ,推される”存在となるための戦略的かつ誠実な情報発信が不可欠である.

ワークショップ1
  • 米沢 宏, 春日 未歩子
    原稿種別: ワークショップ1
    2026 年34 巻1 号 p. 105-110
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    オープンダイアローグ(OD)の考え方を産業保健に応用する試みとして,OD面接の最小単位である2対1(2on1)を取り上げた.前半に概要説明と2on1の実演を行い,後半は3名1組で15分×3セッションのロールプレイを実施した.参加者の声として,リフレクティングにより自分の語りが“もう一度語られる”体験の新鮮さが挙げられた.自分の語った内容を他者が語り直すのを聞くことで,語りが大切に扱われている感覚や意外な側面から再提示される感覚が得られた.また,支援者2名が異なる視点を示すことで多様性を実感し,第三者の肯定的な語りが「いい噂話」として届く経験も報告された.職場での活用については肯定的意見が多い一方,導入には現場の理解促進や研修機会が必要との声もあった.OD的2on1は語りを再構成する場を生み,産業保健における新たな支援方法としての可能性を有すると考えられる.

ワークショップ2
  • 吉田 麻美, 三木 明子
    原稿種別: ワークショップ2
    2026 年34 巻1 号 p. 111-114
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    本ワークショップでは,がんを経験したAYA世代社員の架空事例をもとに,治療と仕事の両立支援について多職種で検討した.AYA世代は,進学・就職・出産などライフイベントが重なる時期であり,個別性に応じた柔軟な支援が求められる.ディスカッションでは,多職種が連携し,見えにくい不調への理解,制度運用の工夫,キャリア再設計,家族を含む支援の重要性が共有された.

    両立支援は単に治療継続を支えるだけでなく,ライフキャリアの観点からも,「働きながらその人らしく生きる」ことを支援する視点が求められる.産業保健職は,勤務状況や職場環境といったシチュエーションを総合的に見極め,適応を支援する役割を担う.そのためには,上司や人事との密接な連携に加え,職場の勤務環境や文化を深く理解しておくことが重要である.多職種連携と職場理解を基盤に,従業員のキャリアを見据えた継続的支援へとつなげていくことが期待される.

ワークショップ3
  • 吉田 瑞香, 垣本 啓介, 中澤 祥子, 佐藤 乃理子
    原稿種別: ワークショップ3
    2026 年34 巻1 号 p. 115-118
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    第32回日本産業精神保健学会大会(2025年8月,法政大学)で,ワークショップ「痛みの内観と共感からはじめるLGBTQ+労働者の支援」を実施した.目標は,LGBTQ+当事者から信頼される=他者の痛みに敏感な支援職となることであり,その背景には,社会的分断を越えて「痛みの共有」から連帯を志向するローティの思想がある.さらに,異文化への謙虚さ(Cultural Humility)の視点を導入し,多様な対象者と向き合う態度の獲得を目指した.ワークでは,カミングアウトの意味や特権性の自覚,当事者の痛みの疑似体験を通じて自己省察を促し,支援実践への応用が期待される成果を得た.

ワークショップ4
  • 田村 隆, 酒井 佳永, 田村 三太, 荒木 美里, 香山 聖子, 鈴田 純子, 宗田 美名子, 土屋 朋子, 平村 真紀子, 秋山 剛
    原稿種別: ワークショップ4
    2026 年34 巻1 号 p. 119-124
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    第32回産業精神保健学会において,ワークショップ「職場における一次予防としての集団認知行動療法(CBGT)の活用可能性―従業員セルフケア研修の理論と実践―」を実施した.本稿では,その内容と当日に行われた質疑応答を紹介する.

    近年,メンタルヘルス不調を未然に防ぐ一次予防への関心が高まっている.本ワークショップは,集団認知行動療法(Cognitive Behavioral Group Therapy: CBGT)を活用した,一次予防のためのセルフケア研修プログラムの理論と実践を学ぶことを目的とした.ワークショップ前半では認知行動モデルに基づく理論的背景を解説し,後半では,4~6名の小集団によるグループワークを通じて,研修の実施方法を体験的に学ぶ構成とした.参加者との質疑応答では,企業への導入方法,職場文化への配慮,オンライン研修の工夫,短時間での研修設計など,実践的で具体的な質問が多く寄せられ,職場の一次予防におけるCBGT活用への関心の高さが示された.

ワークショップ5
  • 吉川 徹, 中嶋 義文, 井原 祐子, 太田 由紀
    原稿種別: ワークショップ5
    2026 年34 巻1 号 p. 125-130
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    令和6(2024)年4月より,すべての医療機関において長時間労働を行う医師に対する面接指導の実施が法的に義務化された.本制度では,従来の産業医面談とは異なり,「面接指導実施医師」が面接を担う点に特徴があるが,医師が医師に面接を行う際の実務的困難さや,面接結果を産業保健体制につなぐ方法については課題が残されている.令和5(2023)より厚労省によりオンライン研修として医師面接指導ロールプレイ研修が開催されてきたが,今回,産業医認定研修の実地研修として対面形式によるロールプレイ研修を実施した.参加者は医師15名で,講義,ロールプレイ,意見書作成演習,総合討議から成るプログラムで構成した.厚生労働省作成の公式教材を用い,複数の架空事例に基づく模擬面接を行った結果,面接指導における評価視点や助言の工夫,産業医等との連携の重要性について具体的な理解が共有された.本ワークショップは,制度理解と実践を結びつける有効な研修手法であることが示唆された.今後の普及が期待される.

ワールドカフェ
  • 田島 佐登史, 田村 三太, 後藤 剛, 吉田 麻美
    原稿種別: ワールドカフェ
    2026 年34 巻1 号 p. 131-134
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    参加者同士による交流を促進し,産業精神保健の事例に関して多様な視点から捉える機会を提供するため,第30回大会から始まったワールドカフェも今大会にて3回目の開催を迎えた.今大会では学会運営に携わる機会を提供する目的から,企画者・運営者の4名に加えて,ファシリテーター兼運営協力者として参加する者を募集し,多職種から成る8名が集まった.企画者・運営者・ファシリテーターの計12名で議論を重ね,ワールドカフェの開催概要等を策定した上で,今大会テーマである「キャリア」に沿って検討事例を作成した.開催当日は,テーブル間で席替えしながらのグループディスカッションを90分間行い,多職種の参加者(38名)による活発な討議がなされた.終了後アンケートでは,次大会もワールドカフェの開催を希望する回答が複数見受けられるなど,高い評価を得た.本報告では,事前準備の過程,当日運営の状況,ならびに,開催結果を記載する.

第32回日本産業精神保健学会 理事長賞受賞記念講演
  • ―ストレス研究の歴史的課題へ,実証研究・自験例からの回答―
    丸山 総一郎
    原稿種別: 第32回日本産業精神保健学会 理事長賞受賞講演
    2026 年34 巻1 号 p. 135-143
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    バブル経済とその崩壊,失われた30年,そして現在政治の混沌まで.大きな2つの震災危機やコロナ危機もあった.このおよそ40年間に,日本のストレス研究,メンタルヘルス対策は急速に進展.それは,著者が研究,臨床,教育に関わった時期と重なり,産業分野のストレス研究やメンタルヘルス対策の発展と歩みを共にできた.その間,さまざまなストレス危機について,エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング(EBPM)となる実証研究を行い,産業精神保健学的視点からストレス問題の解明と対策を推進してきた.同時に,セリエのいうストレス研究の原点「誰もが知っていて誰も知らない….ストレスって何だろう?」を念頭に,ストレスのネガティブとポジティブの両面からストレス研究の歴史的理解を深めてきた.本稿では,過重労働対策,働く女性のストレスとメンタルヘルスケア,高齢者のQOL,精神障害の労災認定,震災ストレス危機の5テーマ別に実証研究,自験例からその回答の一端を示した.

島悟賞受賞記念講演
  • 佐々木 美奈子
    原稿種別: 島悟賞受賞記念講演
    2026 年34 巻1 号 p. 144-147
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    本稿では,2024年度島悟賞受賞にあたり,これまでの経歴と産業精神保健学に係わる学びを振り返らせていただいた.企業での産業保健師および総務課での経験,医療機関における産業保健を含めた米国大学院での学び,大学教員(基礎看護学教室)になっての研究の取り組みを振り返り,東京医療保健大学大学院看護マネジメント学領域で大学院生と共に行っている産業精神保健学にかかわる研究について,ワーク・エンゲイジメント,プロアクティブ行動,ジョブ・クラフティング,リカバリー経験,アドバンス・ケア・プランニングに分けて紹介した.

    学会活動を通して産業精神保健学を学び,看護管理者の気づきを研究計画につなげる支援を行いながら,学部教育や地域住民の健康づくりにも活かしていきたい.

協賛セミナー1
  • 北田 雅子
    原稿種別: 協賛セミナー1
    2026 年34 巻1 号 p. 148-151
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    動機づけ面接(MI)は,協働的な対話を通して来談者の行動変容を支援するエビデンスに基づく面談スタイルである.関係性構築と面談技術の両面により効果的に行動変容を支援し,変化の準備性が低い人々にも有効である.行動変容に消極的な背景には未解決の両価性があり,MIはその解消を支援する.産業保健の現場では,「変わりたいが変われない」という両価性を抱える人々との面談が多く,面談者は来談者を是正したくなる“直したい反射”を抑え,協働・受容・思いやり・エンパワーメントからなるMIスピリット(PACE)を大切にすることが求められる.生活習慣病の増加に伴い,対象者と協働して意思決定を行うSDMの重要性が高まっている.MIは自律性を尊重し内発的動機を引き出す協働的アプローチであり,産業保健領域でも職員の価値観を理解しながら行動変容を支援する有効な方法である.

協賛セミナー3
  • 春日 未歩子
    原稿種別: 協賛セミナー3
    2026 年34 巻1 号 p. 152-155
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    労働者のメンタルヘルス支援において,自然環境を活用した森林セラピーの効果が注目されている.本セミナーでは,都市部における森林セラピーの実践と効果について,多様な立場から報告がなされた.プログラム実践者は,働く人を対象に構築したセルフケア・チームケアの実施内容とその設計背景を共有し,研究者は,都市公園での体験によって抑うつ傾向や自己肯定感,心理的安全性が改善された中間調査結果を示した.企業担当者は,社員の関係性改善や健康意識の向上を目的に体験した事例を紹介し,産業保健の専門家は,健康経営施策としての有効性と職場導入の意義を解説した.都市部での自然体験の有用性と普及への可能性が確認された.

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