日本口腔粘膜学会雑誌
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15 巻, 2 号
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原著
  • 久山 佳代, 遠藤 弘康, 中臺 麻美, Sisilia F. FIFITA, 孫 燕, 加藤 仁夫, 山本 浩嗣
    2009 年 15 巻 2 号 p. 53-58
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル フリー
    剥離細胞診は口腔粘膜病変の表層から細胞を採取し,光顕下で観察する比較的簡便な検査方法である。剥離細胞診が診断の推定に有用であった歯肉に発生した水疱性疾患3例を報告する。すべての症例で歯肉の有痛性および紅斑性変化が認められた。細胞はサイトブラシを用いて付着歯肉を擦過して採取された。その結果,2例は辺縁がライトブルーで核周囲がエオジン好性のツートンカラーの細胞質を有するTzanck細胞が観察され,尋常性天疱瘡の可能性が推察された。また同2症例中の1例のコルチコステロイド外用薬による治療経過中に,さらに別の1例でも,核がスリガラス状を示し,向き合う核相互が押し合うように接触した細胞相互圧排を伴う多核化を呈したウイルス感染を疑わせる細胞が観察された。口腔剥離細胞診は,今回提示した3例の,ヘルペスウイルス感染あるいは尋常性天疱瘡の歯肉病変におけるスクリーニングに対して有用であった。
  • 山谷 元気, 畠山 節子
    2009 年 15 巻 2 号 p. 59-69
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル フリー
    口腔粘膜の角化に関与する因子の研究はほとんどなされていない。本研究において,口腔粘膜上皮の角化亢進のメカニズムを解明するため,歯肉上皮由来不死化細胞(GE1)をair-liquid interfaceで培養し角化性重層扁平上皮のin vitro実験系を作製した。このair-liquid interface培養系で,炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-6),表皮細胞増殖因子(FGF10),アポトーシス阻害因子(caspase family inhibitor)の口腔粘膜上皮へ及ぼす作用を検討した。その結果,TNF-αが角質層を肥厚させた。同時にTNF-α添加によりBrdU取り込み細胞数とTUNEL陽性細胞数(P < 0.05)が増加した。さらに培地にcaspase family inhibitorを添加すると重層したGE1細胞から角質層が消失した。これらの結果から,TNF-αがアポトーシスを促進させ口腔粘膜上皮の角化亢進を誘導することが推察された。
  • 岩渕 博史, 岩渕 絵美, 内山 公男, 藤林 孝司
    2009 年 15 巻 2 号 p. 70-76
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル フリー
    イトラコナゾール内用液(ITCZ-OS)は優れた有効性を示すが胃腸障害の副作用が比較的多い。そこで本剤を含嗽して使用するITCZ-OS含嗽療法を考案し,その有効性と粘膜組織および血漿中薬剤濃度を測定し作用機序についても検討した。対象は口腔カンジダ症症例25例で投与方法はITCZ-OS 1回10mlを1日2回,朝,夕食後に2分間含嗽させ15日間投与した。臨床的有効率は72.0%,カンジダ菌の消失は68.0%,臨床および真菌学的効果を合わせた含嗽療法有効率は88.0%であった。副作用は3例にみられた。以上より本治療法は口腔カンジダ症治療に有効であると思われた。また,組織中からITCZを検出,血漿中から微量のITCZ,OH-ITCZを検出した。血漿中より少量の薬剤成分を検出したことより全身性副作用も考慮する必要があると思われた。
症例報告
  • 山下 雅子, 神部 芳則, 草間 幹夫, 槻木 恵一
    2009 年 15 巻 2 号 p. 77-80
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル フリー
    粘液嚢胞は口腔軟組織の嚢胞として,臨床で遭遇することの多い疾患である。口唇,特に下唇が好発部位であり歯肉に生じることはまれである。われわれは歯肉・歯槽粘膜境界部に生じた停滞型粘液嚢胞の1例を経験したので報告する。患者は65歳,女性。主訴は右側下顎歯肉の腫瘤で1か月前に気づいた。右側下顎歯肉歯槽粘膜境界部に腫瘤状の病変を認め切除術を施行し,病理組織学的には粘液嚢胞と診断された。
  • 河 瑠珠, 神部 芳則, 池田 薫, 篠崎 泰久, 草間 幹夫, 西原 理恵子
    2009 年 15 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル フリー
    口腔に生じたOrofacial granulomatosisの2例を報告する。症例1:患者は59歳,女性で歯肉の腫脹と発赤を主訴に受診した。病理組織学的には壊死を伴わない肉芽腫であり,血液検査と胸部X線写真でクローン病,サルコイドーシスは否定された。プレドニゾロンの内服で歯肉の症状は著明に改善した。症例2:患者は41歳,男性でサルコイドーシスの疑いで経過観察中であった。頬粘膜に腫瘤状の病変を認め,切除した。病理組織学的には壊死を伴わない類上皮肉芽腫であった。全身検査,生化学的検査でクローン病,サルコイドーシスは否定された。2例ともOrofacial granulomatosisと診断した。
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