ヒト正常粘膜上皮のうち舌背, 歯肉, 頬粘膜について9種類の抗ケラチンモノクローナル抗体 (AE3, AE5, 903, No5/6, No4, No13, 4.62, CK1, PKK1) を用いてケラチン分子種の発現状態を検討した。その結果, AE3, AE5, 903を用いた場合は舌背, 歯肉, 頬粘膜の全層が染色されたが, 他の抗体では部位によって染色像が異なった。ケラチン分子種の発現状態をまとめると舌背, 歯肉, 頬粘膜の3部位全てに発現していたのは角膜型ケラチンであった。これに加えて食道型ケラチンは舌背乳頭間上皮, 歯肉, 頬粘膜にみられ, 表皮型ケラチンは舌背と歯肉で発現していた。また単層上皮型ケラチンは頬粘膜に発現していた。このようにケラチンの発現状態の部位による違いが観察された。これらの結果から口腔粘膜の分化様式は極めて複雑に, また高度に組織化されていることが示唆された。
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