口腔粘膜疾患を有しない頬粘膜62組織の元素分析をPIXE法にて行った。被験者は, 62例で男性31例, 女性31例であり, 年齢は11歳から77歳で平均33.3歳であった。分析の結果, 35種類の元素が検出された。準主要元素はほぼ全試料から検出された。微量元素のSi, Mn, Fe, Cu, Zn, Seと超微量元素のBrとRbは, 90%以上の試料から検出された。また, 汚染元素として11元素が検出され, なかでもAlとPbは全試料にみられ, さらにAlは高濃度に検出された。検出された元素を性別, 年代別 (group I: 19歳以下, group II: 20~39歳, group III: 40~59歳, group IV: 60歳以上), 金属補綴修復物装着の有無について検討を行った。その結果, 性別ではSeとPbで女性に対して男性が, Auで男性に対して女性が有意に高値を示した。年代別でみると, Mg, P, Sの3元素で, group IV に対して group I が有意に高値を示した。金属補綴修復物装着の有無による有意差はみられなかった。
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